多井隆晴が『多井熱』で語る麻雀界の真実。最強プロが見た「地獄」本当に怖いのは……プロ2000人全員「勘違い」と襲来するブーム終焉の時
多井:麻雀を打ってNo.1であり続けることも僕の仕事ですけど、解説の仕事を通じてプレイヤー全員を引き立ててあげることも、常に心掛けていますね。
正直言うと、たくさん言いたいこともあって「ダメだな」「下手だな」と思うこともありますけど、そこで何を考えていたのかを弁護してあげたい。本当はもっとキャラを輝かせるために「恋人がいるのか」とか「何が好きなのか」とか、プライベート的なことも知りたいんですよ。
上から目線で申し訳ないですけど、僕はもう「No.1になった」と思っているので「皆を僕のところまで引き上げてあげよう」と思っています。
僕一人じゃつまんないじゃないですか、僕一人だけがトップを突っ走ってもコンテンツとしての人気は出ない。僕に近い存在がもっと増えないと。村上淳(最高位戦日本プロ麻雀協会)が『村上熱』を出せばいいんですよ(笑)。
――麻雀業界を代表する「No.1プレイヤー」として自覚をひしひしと感じるが、『多井熱』では「40歳を越えてから打ち手として、さまざまな能力がほんの少しずつ下がってきていることを実感します」と告白している。
多井:相当落ちてますね。全盛期の25から30歳までが100だとしたら、記憶力とか判断力、瞬発力とかは、たぶん70くらいまで落ちてますね。基本的に対局の捨て牌とか全部覚えてるんですけど、最近はたまに抜けたりもしますね。終わった後に「多井さん、あの時、何でこれを切ったんですか?」「え、どの時?」みたいな。瞬間的に浮かばないことがあります。
――今年で46歳。プレイヤーとしての「引き際」も考える始める時期なのか。
多井:「引退」に対する意識は、ここ3年くらいはしてますね。「あと5年かな」「あと10年かな」という意識はありますよ。ヨボヨボのまま出続けているベテランをカッコいいと思えないので。
――もしかしたら、割と早い時期に引退するかもしれない。
多井:かもしれないですね。自分で言うことではないですが、たぶん僕の場合、衰えて弱くなっても人気で試合とか番組に出られちゃうと思うんですよ。主催側も僕を外し辛いと思うんですよね。だけど外れないといけない時期が来たら、ちゃんと退きたいなとは思ってますね。その時にもし誰かが言ってくれれば、喜んで引かせてもらいますね。
――しかし、多井隆晴に向かって「お疲れ様でした」と引退勧告できる麻雀プロはおそらくいない。引き際は自分で判断するしかない。
多井:だからダメなんですよ、この業界は。プレイヤーがそのまま組織運営をやっちゃってるから、僕のような現役で組織のトップに立つ人間が出ちゃう。本当はちゃんと第三者委員会的なものを作って、客観的に判断できる組織が必要なんです。僕が50いくつになってヨボヨボで、それでも第一線で打ってるようじゃ麻雀界はダメだ、と。そう思ってますね。
――第一線を退かれた後は。
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