JRA「珍名馬」ウナギノボリの評価が超ウナギノボリ!? サウジアラビアRC(G3)で地味に4着も、記者たちが絶賛する理由
まさか、ここまで走るとは……。
9日、東京競馬場で行われたサウジアラビアロイヤルC(G3)は、1番人気のコマンドラインが勝利。2着に2番人気のステルナティーア、3着にも3番人気のスタニングローズが入線し、サンデーレーシングが誇るエリート候補たちが揃って結果を出した。
ただ、筆者が個人的に驚いたのは、その3頭に食い下がったウナギノボリ(牡2歳、栗東・音無秀孝厩舎)の力走である。
前走のデビュー戦で騎乗した和田竜二騎手が「調教から集中力がないと聞いていて、ゲートから出て行かずに前半からついて行くので精一杯。3コーナーから急に動き出して……」と、とても勝ち馬とは思えないコメントを残していたが、この日もスタートはほぼやる気なし……あっさりと出遅れて後方からの競馬を強いられてしまった。
舞台は開幕週の東京であり、ましてや600m通過が37.7秒という超スローペース。この時点で相当苦しい展開のはずだったが、やはり3コーナー辺りから急に勢いづいて進出を開始。勢いに乗ったまま最後の直線に入ると、上位3強にしぶとく食い下がって4着を確保した。3着だったスタニングローズには1馬身差に迫った一方、5着馬には3馬身差をつけている。
今回の鞍上・菅原明良騎手は、若手騎手らしく「クセのない良い馬です」と当たり障りのないコメントだったが、少なくとも粗削りながら、その名に負けない“個性”は持っていそうだ。
「今回はかなり厳しいメンバーだったので、あそこまで走れるとは驚きました。人気こそ3強に次ぐ4番人気でしたが、単勝オッズは3番人気のスタニングローズの5.4倍から大きく離れた17.6倍。3強+その他といった感じで、4番人気になったのはネーミングの面白さもあると思います。
デビュー前の牧場の評価も決して高くなかったですし、レースぶりも然ることながら、調教からどこか上の空といった感じで……正直、これで何故あんなに走るのかがわからないくらいです。
デビュー戦での和田竜騎手が『(気分が)乗っていると動くタイプ』と話していましたが、まさにその通りなのかも。音無調教師も東京スポーツの取材に『デビュー前は心配事の方が多かったけど、レースでは予想以上に走ってくれた』と話していましたね。
現段階で高い完成度を誇るコマンドラインから0.3秒差、ステルナティーアらからは0.2秒差の走りができるなら、競馬を覚えて真面目に走れるようになれば相当有力ですよ。サウジアラビアRCの上位3頭は世代でもトップクラスだと思いますが、伸びしろという点ではウナギノボリの方に大きな魅力を感じますね」(競馬記者)
そう話す記者からは、すこぶる高い評価を受けるウナギノボリだが「珍名」と言われるその名のせいか、どこか大物感が感じられないのは筆者だけではないだろう。
数々の珍名馬は走っているだけでファンを楽しませるが、その多くはどこか大きなレースではカッコイイ名前の馬たちに勝てない“脇役”というか、盛り上げ役といったイメージがついてしまっている。
「僕も個人的にウナギノボリには注目しています。前走のデビュー戦は1400mだったんですが、実はレース後に和田竜騎手が『距離が短い』と話していたんですよ。それで今回マイル戦を使ったんですが、あのスタートでは……まだ距離が足りない気がしますね。
もちろん、父の新種牡馬ドレフォンがダートのスプリントで活躍した馬ですから、短い距離から卸すのがセオリーだと思います。ただ、すでに産駒のジオグリフが1800mの札幌2歳S(G3)を勝っているように意外に距離をこなすのかも。ウナギノボリが2000m以上をこなすようなら、コマンドラインらとの逆転があるかもしれませんよ」(別の記者)
「珍名」の線引きが難しいところだが、おそらくはウナギノボリの馬主でもある小田切有一オーナーのオレハマッテルゼが2006年の高松宮記念(G1)を制して以来、頂点には手が届いていない珍名馬たち。しかし、昨今の珍名馬ブームを鑑みれば、そろそろ大物が出現してもいいはずだ。
和田竜騎手が「能力は高い」と言えば、菅原明騎手も「これから良くなっていくと思います」と話すウナギノボリ。今後も評価が“ウナギノボリ”とくれば、久々の珍名馬G1制覇も見えてくるはずだ。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。
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