
【後編】海外初のG1制覇を決めたシーキングザパールと武豊、藤沢和雄が続いたタイキシャトル…日本馬の海外遠征と中継事情【競馬クロニクル 第23回】

モンジューを管理するジョン・ハモンドは「もっと馬場状態が良ければ負けていたと思う。モンジューに有利なタフな馬場コンディションになったのに、きょうは『2頭の勝ち馬』がいたのだから」と、現地メディアが気の利いたコメントでエルコンドルパサーを称賛した。
もはや言うまでもないが、テレビでこの激闘を目にした日本のファンは最上のレースに手に汗握り、そして悔しさに歯噛みした。これ以降、凱旋門賞はもちろん、年末の香港国際競走など、日本馬が出走するレースはほとんどライブ中継が行われるようになり、日本のファンはそれを通して海外競馬がより身近なものになっていく。
2006年にも、1999年(エルコンドルパサーが出走)に続き、NHKが2度目となる凱旋門賞の地上波でのライブ中継を行った。
日本競馬史上最強と謳われ、従来の競馬ファン以外からも大きな注目を集めて、一種の社会現象化したディープインパクトが参戦するということでNHKが中継権を獲得。結果はディープインパクトの3位入線(のちに失格)に終わったが、午前0時を過ぎた深夜帯にもかかわらず、視聴率は関東で平均16.4%、関西で平均19.7%(ビデオリサーチ調べ)という高い数値を叩き出している。
少々大袈裟な言い方になるが、中継の驚異的な視聴率を見るにつけ、ディープインパクトの出現によって、競馬は長い呪縛から解き放たれて、ギャンブルからスポーツへと、世間の認識が変わったと筆者は考えている。
また、長年にわたって中央競馬の中継番組を放送してきたフジテレビ(関西テレビ)も凱旋門賞のライブ中継には積極的で、ナカヤマフェスタが2着に健闘した2010年に初中継。その後も、オルフェーヴルが僅差の2着となった2012年には情報番組内でレースの模様を放送している。
上記の例以外にも、ドバイ・ミーティングで日本馬が目覚ましい活躍を見せるようになり、ファンはますます海外競馬への関心を高めていった。そうしたファンの念願であった、日本馬が参戦する海外主要レースの馬券発売が行われるようになったのは、2016年の凱旋門賞からのこと。JRAは競馬法の改正という難事を克服し、ネット投票用のソフト開発に数十億円を投じてのスタートだった。
それもいまや1レースあたり数十億円の売上を記録するのが常であり、ファンの海外競馬観戦には欠かせないツールのひとつとなっている。
日本馬の海外参戦と中継事情にかんして駆け足で見てきたが、馬券は枠連、海外競馬の中継はラジオからというプロセスを体験してきた筆者にとっては、繰り返しになるが、隔世の感を覚えずにはいられない。凄い時代になったものだと、この稿を書きながらあらためて感じ入った。(文中敬称略)
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