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絶対にバレてはいけない「裏モノデータ取り」で予想外の出来事が…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第69話:レッツスパンキー】

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絶対にバレてはいけない「裏モノデータ取り」で予想外の出来事が…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第69話:レッツスパンキー】の画像1

第69話 レッツスパンキー

 今さら言うまでもないことですが、ホール側が裏モノを設置することも、客側が裏モノを遊技することも違法です。

 それって変じゃないか? パチンコ&パチスロ店が利益を上げる目的でイリーガル機を導入するのは確実に違法だろうけど、それによって大切なお金を失った客側が違法性を問われるのはおかしいだろ! そんな意見もあるかと思いますが、残念ながら裏モノと知った上で遊技した場合は犯罪となります。要は、地下ポーカーなどの賭博店が捜査員に踏み込まれて摘発された際に、同店で遊んでいた客も一緒に逮捕されるのと同じ理屈です。過去にホールで裏モノを遊技していた客が逮捕された例がほとんどないのは、「裏モノと知った上で遊技していたか」の証明が非常に困難であり、立件できる可能性が低い事案を幾つも抱え込むのが合理的でない…と言う理由により、当局からいわゆる「お目こぼし」された結果と考えるのが妥当ではないでしょうか。

 まぁ、パチスロ歴の長い読者さんならご承知の通り、3号機時代は「ノーマル機を探す方が難しい」と言われた狂乱の時代でした。そんな時代に片っ端から遊技客を逮捕したりすると大変なことになりますからね。もちろん、自分たちパチスロ雑誌のスタッフも「裏モノと知った上でデータ取りをしていた」わけですから、厳密に言えば「何も知らない可能性もある一般客より悪質」と当局に判断されても仕方がないところですが、当時は現在のようにコンプライアンスの意識が浸透しておらず、裏モノを遊技するという行為に対して後ろめたさを感じることはありませんでした。何しろ業界全体が裏モノだらけでしたし、罪の意識が麻痺していたんでしょうね。今から考えると恥ずべき状況ですが、すでに時効ということでご容赦ください。

 ところで、自分たち実戦人が裏モノのデータ取りを行う際に、最も頭を抱えたことって何だかわかりますか? 店側は裏モノを違法改造機だと認識して設置していますから、当然のことながら遊技客に目を光らせています。裏モノがまだ残存していた4号機時代の前半頃までは、手帳を取り出してメモでもしようものなら速攻で店員さんに囲まれて、そのまま店を追い出されたりすることも日常茶飯事でした。だからこそ、裏モノのデータ取りではトイレに行ってメモしたり、ケータイの発信履歴でメモを取ったりしてました(たとえば「6/150/7」と打ち込めば「投資6K、150Gでビッグ」という意味になります)。千円あたりの消化ゲーム数をチェックする際にも、通常のデータ取りのようにコインを積んで小役を数えると目立ってしまうため、千円分のコインを打ち切るごとに「何ゲーム消化、余り何枚」と数えてトイレでメモしてました。おそらく、店員さんからは「コイツは頻繁にトイレに行くけど腹の調子でも悪いのかな?」と思われていたことでしょうね。

 かように涙ぐましい努力をしていても、データ取りがバレる時はバレます。だって、自分たちはパチスロ必勝ガイドに顔出ししているし、ホール店員さんはやっぱりパチンコ&パチスロ好きが多いから、「雑誌の人ですよね」と話しかけられたら、とぼけることもできません。なのでデータ取りを注意された時には素直に追い出されてました。だって、下手に逆らったら非常に面倒なことになりかねないんだもの。私が一般人だった頃にサファリの攻略法で事務所に連行された時のような手荒な真似はされなくても(当コラム第13話を参照)、ガイド編集部に迷惑をかけてしまうであろうことは容易に想像できますからね。

 しかし、中央林間で行った『レッツスパンキー』のデータ取りは、違った意味で私が想像した斜め上を行くものとなりました。

 以下、本編。

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 時は平成8年の5月。今はなきエーアイから登場した最新機種『レッツスパンキー』に裏モノ疑惑が持ち上がりました。

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エーアイの4号機『レッツスパンキー』。同社のスパンキーシリーズ第3作で、JACの払い出しを14枚に抑えることでビッグ確率を極限まで引き上げたことに、スペック面における最大の特徴がある。設定3~6のビッグ確率は一律240.9分の1だ。(写真は「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)

 本機のカタログスペックは非常に優秀なのですが、それはあくまでノーマル台の話。ホールデビューと同時に裏モノ化したレッツスパンキーにはノーマルなどほぼ存在せず、ホールに設置された実機の大半が激しい連チャン性を持つ爆裂バージョンに姿を変えていたんですよ。

 これは是非とも実戦して誌面で紹介しなきゃ! …というわけで、即座にデータ取りの予定が組まれました。実戦店は神奈川県大和市の中央林間にあった某店。この頃はまだ都内に設置がなかったから、実戦データ採取のために遠出するのも致し方ありません。データ取りに参加したのは担当編集の内池さん(現・沖ヒカルさん)、当時はまだ大学生だったカッパ君(現・山本コーラさん)、それからガイドスタッフになって1年チョイの私・広石と、当時は新人編集のホール&大津君の計4名でした。こういうメンツである以上、序列的にデータ取りの指揮はガイド在籍が最も長い内池さんが執ることになります。

 通常、データ取りはスタッフが並んで座ることが多いんですが(バラバラに座るよりも誰かが高設定に座る確率が高くなるため)、対・裏モノのデータ取りでは目立たぬように意図的にバラけて座ったりもします。当然それは内池さんも想定してましたが、開店と同時にレッツスパンキーのシマに駆け込むと、先客は誰もいません。というか、このシマだけでなく店内全てがガラガラなんですけど…。

 さすがにこれは想定外でした。開店前から誰も自分たちの後ろに並ばないので、なんだか嫌な予感がするなぁ…と感じてたんですが、こんなにも客付きが悪いと、よそ者の自分たちが物凄く悪目立ちするのよね。

 しかし、そう感じてはいるけれど、なぜだか店員さんは自分たちに無関心。シマの巡回に来ることもほとんどなく、完全に知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいます。てゆーか、それでいいのか、店員さんたちよ! お陰様をもって、いちいちトイレに立つことなく堂々とメモを取れたけど、正直言って肩透かしを喰らった印象は拭えませんでした。

 こんな店側の対応を見てしまうと、ちょっとだけ不安になりますよね。いや、この機種って本当に裏モノなのかな…って。もしかして、中身がノーマルだから見馴れない怪しい4人組が打ちに来てるのに完全無視してるんじゃね?

 だけど、その心配も余計でした。この日に採取した私の実戦データは、ご覧のように見事にバキバキの挙動を見せてくれたんです。

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当日の実戦データ。(写真は「パチスロ必勝ガイド2018年2月号」の回胴絶景より)

 裏モノのデータ取りを行う際には常に「最悪の事態」を想定するのですが、まさかこんなに客チェックの甘い店があるとは想定外でした。まぁ、お陰様で良い記事になったし、個人的にも大勝ちして、驚き桃の木、大ラッキーだったんですけどね。

 もちろん、こんな対応は氷山の一角です。他の裏モノ設置店は例外なく警戒が厳重で、実戦データを採取する際には、冒頭で紹介したような細心の注意を払いました。以前、茅ヶ崎の某ホールで行った「マフィアX マシンガンVer.」のデータ取りでは、バッグから電卓を取り出しただけで店員さんから厳重注意を受けたのに(当コラム第30話を参照)、同じ「裏モノの聖地」であっても対応は店それぞれなんだなぁ…。

 どうでもいいけど、もしも翌日にパチスロ攻略マガジンのスタッフさんがデータ取りにきていたら、このお店はどんな対応をしたでしょうか? それだけが今でも少しだけ気になるのです。

ドラゴン広石

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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