
ベテランアナの「痛恨」見落としでファンは地獄から天国?一度も名前を呼ばれずに馬券圏内に突入…… 諦めていたファンが「棚からぼたもち」的中の真相
10日、新潟競馬場で行われた8R・3歳上1勝クラスは、津村明秀騎手の3番人気インナリオ(牝3歳、美浦・岩戸孝樹厩舎)が直線で内めを捌いて勝利。初勝利以来となる約11ヶ月ぶりの白星を手にした。
2着には中団で脚をためた富田暁騎手の2番人気メモリーエフェクト(牡3歳、栗東・大久保龍志厩舎)が入った。
富田騎手は「勝ち馬の決め手に屈した感じですね」と、悔しさを見せながらも、「直線でスムーズに前が開きましたし、理想的な競馬ができました」と、前向きにレースを振り返った。
一方、富田騎手とは反対に理想とは程遠い実況をしてしまったのが、このレースを担当した『ラジオNIKKEI』の小林雅巳アナウンサーかもしれない。JRAのレース映像実況とラジオ実況は同じラジオNIKKEIのアナウンスを使用しているため、ラジオ実況はレース実況の映像が無いバージョンである。
「10番のジューンロールオンが出遅れて後ろからです。好ダッシュ、ブルアモーレ・メモリーエフェクト。更にはカイトレッドがいって……」
そう切り出して小林アナは、フルゲート18頭立ての外回り芝1600m戦の実況を始めた。最初のコーナーまでが長く隊列が激しく変わることも珍しくないコースだが、アナウンサー歴36年目のベテランは正確に各馬の位置をファンへ伝える。
3・4コーナーを各馬が回って最後の直線へ。新潟競馬場名物の日本一長い直線659mの攻防戦に入る。競馬は最後の直線で速く走り、ゴール板をより早く駆けた馬が勝負を制することになる競走だ。すなわち、最後の直線は勝負の“最終局面”だけあって、馬券を購入しているファンは固唾を飲んで見守るシーンだ。
それだけに実況アナウンサーは直線で各馬の攻防を正確に、アナウンスすることが求められる。特に競馬実況をラジオで聞いているファンにとっては、映像を見られないためアナウンサーの声が全てである。
実況が頼りのリスナーは、直線のシーンで購入した馬が呼ばれることが多ければ上位を走っていると考え、馬券が的中するのではと胸が躍る。反対に、購入した馬が全く呼ばれなければ、下位を走っていると考え、馬券がハズレたのではないかと落ち込む。
「内を突いては15番セイイーグル追い込んでくる!更には、外から18番グランデフィオーレ!グランデフィオーレが先頭に替わったか!内を入ってきた12番のインナリオ!差を詰めてくる」
直線半ばの各馬の様子を、そうアナウンスした小林アナ。ここのセリフをラジオで聞けばセイイーグルら3頭が馬券圏内にくるのでは、とファンは思うはずだ。そして、新潟の長い直線もとうとうクライマックス。小林アナの声のトーンが一気に高くなる。
「追い込んできた10番のジューンロールオンが今度は先頭に替わるか!18番グランデフィオーレ頑張っている!大外からドラミモンが追い込んできた!内から12番のインナリオ!インナリオが抜けてゴールイン!」
これを聞いたラジオ視聴者は「インナリオが1着で、ジューンロールオンやドラミモン、グランデフィオーレ・セイイーグルの4頭が続く決着かな」と、想像するのが自然だ。だが冒頭で触れた通り、このレースの2着はメモリーエフェクトだ。
「最後の直線のシーンでメモリーエフェクトは一度もアナウンスされませんでした。私もその時ラジオで実況を聞いていたのですが、ゴール後に『2番手は4番メモリーエフェクト』と、コールされて思わず『えっ!?』って叫んでしまいました。
一気に後方から伸びてきたなら、仕方ないと思いますが、インナリオと併走して2着にきています。それなら、メモリーエフェクトの位置はアナウンスしなければならないでしょう」(競馬誌ライター)
突然の「2番手メモリーエフェクト」コールに驚いたのは、ラジオで聞いていたメモリーエフェクトから馬券を購入したファンに他ならない。当事者であるファンはネットやSNSを通じて「ラジオだから完全に諦めていたよ」・「呼ばれないからてっきり沈んだかと」と、心中を吐露していた。
目まぐるしく位置が変わるレース実況は、冷静に各馬の位置や展開を先読みしながら伝えることが求められるため、大変なことは明白だ。それだけに、どれだけキャリアが豊富なプロでも、見落としや言い間違いはある。不本意ながら“河童の川流れ”となってしまった小林アナだが、メモリーエフェクト絡みの馬券を購入していたファンは“棚からぼたもち”のような気分で的中となったかもしれない。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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