JRAマイルCS(G1)苦しい「本音と建前」が見え隠れ!? 秋G1「裏切り続き」の厩舎がシュネルマイスターと汚名返上へ
14日に阪神競馬場で行われたエリザベス女王杯(G1)は、10番人気で激走を見せたアカイイトが勝利した。同馬が初の重賞勝ちがG1という大金星を挙げた一方で、1番人気レイパパレは6着、2番人気アカイトリノムスメは7着と精彩を欠いた。
前記2頭は激しい先行争いとなった激流に巻き込まれた結果、直線で末を無くして本来の走りを見せられなかったともいえるが、それ以前の16着という大敗を喫したのが、3番人気のウインマリリン(牝4、美浦・手塚貴久厩舎)だ。
前走のオールカマー(G2)ではインから鋭い末脚を披露し、レイパパレを差し切っての快勝。1番人気に支持されたライバルとの直接対決を制していたことも評価され、三強対決の一角を担った。
本来の走りならここまでの大敗は考えにくい実績の持ち主ともいえるが、やはり大きかったのは状態面の不安だったということだろう。1週前の追い切りでは併せ馬で遅れ、陣営からは右肘の腫れや熱発まであったと発表されてもいた。
一時はエリザベス女王杯を回避して、有馬記念(G1)に向かうプランも出たようだが、主戦の横山武史騎手にエフフォーリアが控えていることなども考慮しての出走となったようだ。
事実、最終追い切りでウインマリリンは及第点といえる動きを披露していた。管理する手塚師も「問題ない」とジャッジ。G1という大舞台に出走してくるからには、力を出せるデキにあるのが大前提。師のコメントをファンは信じ、メディアでも好意的な見方をする評論家もいた。
ところが、レース後に横山武騎手から出されたのは、「状態面が良くなかったかもしれません。今日は本来のウインマリリンではありませんでした。別の馬のよう」といった厳しい内容。これには“騙された”と感じたファンも大勢いたに違いない。
ただ、同じような状況が秋華賞(G1)でも起こっていたことを忘れてはいけない。
このときはオークス馬ユーバーレーベンが5番人気で出走。左前脚の屈腱周囲炎明けだったにもかかわらず、こちらも最終追い切りで「間に合った」と順調さをアピールしながらも、レースでは13着に大敗した。
手綱を取ったM.デムーロ騎手がレース後に「スタートして少し行きっぷりが悪く、3、4コーナーも反応がなかった。直線を向いては馬がバラバラでした」と振り返ったことからも、本調子ではなかったと推測できそうだ。
「体に悪いところがなく、馬の精神面などの意味で泣きが入っている場合は、スペシャルウィークが4番人気まで評価の急落した1999年の天皇賞・秋(G1)などもありましたが、今回のケースはどちらも状態面での不安でした。
レース直前では前向きなコメントを出した手塚師でしたが、それはオーナーや関係者への建前のような意味合いも含まれていた気がします。中間の状態に対する質問に関しては、本音で話してくれたことも伝わりますから……。個人的には正直な先生だなという感想です」(競馬記者)
奇しくも秋G1で二度もファンの期待を裏切ることとなった手塚厩舎だが、今週末のマイルCS(G1)では、3歳トップクラスのシュネルマイスターがスタンバイ。春の安田記念(G1)ではダノンキングリーの3着に敗れたものの、ひと夏を越した前走の毎日王冠(G2)では、とても届かないような後方から驚愕の切れ味で差し切った。
春は4キロもらって先着を許した相手に、秋は2キロの差で勝利したように地力強化は顕著。大本命が確実視されるグランアレグリアとも安田記念で接戦していたなら、逆転の余地は十分にあるだろう。
中間のコメントも横山武騎手は「これだけの時計が出るのは具合がいい証拠」、手塚師も「前走からさらに上向いている」と“正直”なコメントばかり。汚名返上の期待が懸かっている。
エリザベス女王杯のウインマリリンで痛い目に遭ったファンも、これに懲りずにもう一度手塚厩舎を信じてみるのもありではないか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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