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JRA武豊「本気」でケンタッキーダービー直訴!? 20年ぶりの衝撃「半端ない」超大物2歳と描く世界制覇

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クロフネの主戦だった武豊騎手

「来年を楽しみにしていただけに、本当に残念です」

 20年前の11月24日。日本競馬を牽引し続ける武豊騎手は、間違いなく「世界の頂点」に手を掛けようとしていた。前年の覇者で2着のウイングアローに7馬身差、レコードタイムを1.3秒も更新した衝撃の余韻が、ジャパンCダート(G1、現チャンピオンズC)を終えた東京競馬場を包んでいた。

 主役の名はクロフネ。今年の桜花賞馬ソダシの父として知られる、芦毛の名馬だ。芝でもNHKマイルC(G1)を勝つなど一流の資質を見せていたが、この馬が「真の怪物」だった事実は、ダートに矛先を転じてからわずか2戦で証明された。

 伝説誕生のきっかけは、予期せぬアクシデントだった。天皇賞・秋(G1)に出走を予定していたクロフネだったが、直前になってアグネスデジタルが出走を表明。当時あった外国産馬の出走枠の都合で、クロフネが弾かれることとなったのだ。

 後にアグネスデジタルが天皇賞・秋を勝ったことで陣営の留飲も下がっただろうが、そんなことさえ些細と感じさせたのが、代わりに出走した武蔵野S(G3)におけるクロフネの圧巻のパフォーマンスだった。

 クロフネにとって初ダートとなったが、レース後には百戦錬磨の武豊騎手でさえ「他の馬とは次元が違うというか、レベルが違いすぎた」と衝撃を受けたという。前年のNHKマイルCの覇者であり、後のジャパンCダートの勝ち馬でもあるイーグルカフェに9馬身差、9年間破られることがなかったJRAレコードを1.2秒も更新する走りは、まさに日本の枠を突き抜けた「異次元」を感じさせた。

 日本のダート界をたった2戦で制圧したクロフネが、次のターゲットに選んだのが、翌年のドバイワールドC(G1)。世界最高峰の賞金が懸かったダートの世界頂上決戦である。このプランに最も胸を躍らせた1人が、長年「世界」と戦ってきた武豊騎手だったに違いない。

 しかし、その後、クロフネが右前脚に屈腱炎を発症。そのまま引退となり、手が掛かったと思われた武豊騎手の世界制覇の夢は儚くも消え去った。

 あれからちょうど20年。日本競馬のレジェンドと称されるようになった武豊騎手に、再び世界制覇を意識させる超大物が現れた。わずか1戦で、数多の名馬の背中を知る名手の心を鷲摑みにしたのが、2歳馬のジュタロウ(牡2歳、栗東・河内洋厩舎)である。

 ジュタロウのデビュー戦は、まさに「衝撃」の一言に尽きた。

 13日、阪神のダート1800mで船出となったジュタロウは、2着馬に2.4秒差をつける圧勝劇。同日の2歳未勝利戦を大差勝ちしたタマモエースよりも、さらに1秒も速いタイムは阪神ダート1800mの新馬戦で歴代2位の好時計。ちぎられたライバルたちが5着までタイムオーバーで出走停止となる異例の事態となった。

「強いね。スタミナが半端じゃないですよ。将来が楽しみです」

 そう手放しで絶賛した武豊騎手に20年前のクロフネの無念……いや、ワクワクした高揚感がよみがえったのだろうか。『デイリースポーツ』の取材によると、陣営に「本気でケンタッキーダービー(米G1)へ行きたい」と訴えかけたという。

 ケンタッキーダービーといえば、米国三冠で最も格式の高いレースだ。武豊騎手は2016年にラニとのコンビで、日本競馬史上初となる米国三冠の完走を果たしているが、今回は経験が目的ではない。今秋、日本競馬がついに米ブリーダーズCの牙城を崩した今、かつてクロフネと描いた野望と同じく、現実的に「勝ち」に行くつもりだろう。

 果たして、レジェンドの希望は実現するのか。我々競馬ファンにとって、来年の春は例年にない「もう1つの三冠レース」を楽しめるかもしれない。

(文=浅井宗次郎)

<著者プロフィール>
 オペックホースが日本ダービーを勝った1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)

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