「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
競馬の主役であるサラブレッド。では「サラブレッド」と「それ以外の馬」では何が違うのか――。サラブレッドは競走馬として0.1秒でも速く走るために長年進化し続けている生き物である他に、明確な「遺伝子的特徴」を持っている。
それは日本だけでなく、世界に現存するすべてのサラブレッドが1頭の例外もなく、ダーレーアラビアン、バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンのいずれかの血を受け継いでいるという事実だ。この3頭は、サラブレッドの起源として「3大始祖」と呼ばれている。
だが実は現在、この3大始祖が「極めて深刻な消滅の危機」に瀕していることをご存じだろうか。
小説家・宮本輝の手で1986年に誕生し、今なお多くの競馬ファンの愛読書となっている長編『優駿』。その中で主人公の渡海正博が、ヒロインの和具久美子に競馬の「ロマン」や「魅力」を伝えるため3大始祖について熱く語るシーンはあまりに印象的で有名だ。すべてのサラブレッドの血がこの3頭に行きつくことを知っていた人でも、『優駿』で初めて3大始祖に関しての詳しい話を知った人も多いはずだ。
だが、このままではこの話が”嘘”になってしまう。何故なら現在のサラブレッドは3大始祖の中でも、ダーレーアラビアンが圧倒的なシェアを誇り、バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンが消滅の危機に瀕しているからだ。
日本競馬で具体的な話をすると、今年2歳のデビューを迎える2016年産のサラブレッドで血統登録されているのは6902頭。その内、ダーレーアラビアンが約99.9%にあたる6599頭を占めている。
これはもう「すべて」と述べても過言ではなく、世界では日本のサラブレッドの100%をダーレーアラビアンと認識している国も多いという。率直に述べて、数年後にその認識はまったく間違いのない”事実”になってしまうことだろう。
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