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「欧州三冠」が有名なのは意外にも日本だけ!? 同年に無敗達成はわずか1頭のみ、サンデーサイレンス最大のライバルといわれた馬のあまりにも淋しい悲劇

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撮影:Ruriko.I

 10月3日にフランスのパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(G1)。世界最高峰のレースの1つとして知られるこの舞台に向け、各地で前哨戦が行われている。

 中でも大きな注目を集めたのが、24日にイギリスのアスコット競馬場で行われたキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1)だ。英ダービー(G1)、凱旋門賞と並んでヨーロッパを代表する芝2390mのレースに今年は5頭が参戦した。

 G1・4連勝中のアイルランド馬ラブは、1番人気に支持されるも3着に敗れた。ミシュリフを1馬身3/4差の2着に退け、見事勝利したのは今年の英国ダービー馬アダイヤー。2001年のガリレオ以来となる英ダービー馬の同年キングジョージ制覇を成し遂げ、陣営は凱旋門賞出走を視野に入れていると表明した。

 3歳で英ダービー、KGⅥ&QESを制したアダイヤーは、凱旋門賞も制して「欧州三冠」の達成も視野に入ってきそうだ。

 しかし、比較的知られているはずの「欧州三冠」という呼称も、実は日本だけということは意外と知られていないかもしれない。欧州の3大レースを制覇したことを便宜上そう呼んでいるが、そもそもイギリスとフランスのレースが混在していることから分かるように、欧州でこのような表現は一般的ではない。

 そんな欧州三冠だが、世界最高峰クラスのレースを同年度に3つ勝たなければならない最高難易度ということもあり、過去に達成したのはわずか2頭のみ。1頭は1971年のミルリーフ。その仔であるマグニテュードからは二冠馬ミホノブルボンが誕生したことでも有名だ。

 もう1頭は「奇跡の名馬」、「神の馬」といわれた95年のラムタラである。こちらはなんと無敗で達成という離れ業をやってのけたのだから、とんでもない偉業といえるだろう。日本では翌年にフサイチコンコルドが同じく無敗で日本ダービー(G1)を制し、「和製ラムタラ」ともいわれたが、いずれも父系にニジンスキーの血が入っていたことは2頭の共通点となる。

 そして、このラムタラが現役引退後に日本で種牡馬入りすることになったのは、空前絶後の大ニュースであった。

 当時の日本競馬界は、社台グループが輸入したサンデーサイレンスの産駒が大活躍していた時代。劣勢に立たされていた日高の生産者にとって、ラムタラの存在は非常に魅力的だったことは想像に難くない。

 ライバルと目されたサンデーサイレンスのシンジケートを遥かに上回った契約は、史上最高額であった。この一件は競馬関係者だけでなく多くの関心を集め、一般のニュースでも報じられたほどだった。

 しかし、競馬史上ただ1頭の無敗欧州三冠馬は、種牡馬としてはあまりにも残念な結果に終わったというしかない。その後もG1レースを席巻し続けたサンデーサイレンスに対し、ラムタラ産駒は大きな期待を背負ったものの、残念ながらクラシックを望まれるほどの大物は出なかったのである。

 産駒で中央の重賞勝ち馬は2002年の富士S(G3・当時)を優勝したメイショウラムセスが出た程度。母の父として、孫のヒルノダムールが11年の春の天皇賞(G1)を制したが、生産者から寄せられた大き過ぎる期待とは、かけ離れた成績のまま、日本での種牡馬生活を終えることになった。

 その後、6年にイギリスに売却されたラムタラの売却額は24万ドル。購入時の3000万ドルから100分の1にも満たない評価で、かつて栄華を極めた欧州へと里帰りする。その後、種牡馬を引退してからイギリスのダルハムホーススタッドで余生を送り、14年7月に22歳でその波乱の生涯を終えた。

 現役時代の名馬が、必ずしも名種牡馬とならないことは、競馬の世界で決して珍しいことではないとはいえ、デビューからわずか4戦で無敗の欧州三冠を制した現役時代の華やかさに比べると、あまりにも悲劇的な晩年だったといえるだろう。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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