「空白の20年」を終幕させたエフフォーリアの快進撃。札幌新馬に未来はあるか

函館開催も終わり、先週から札幌開催がスタート。8月には豪華メンバーが集う札幌記念(G2)も予定されており、9月1週目まで約1か月半の間、引き続き北の大地から目が離せない。
そんな札幌開催で行われる2歳新馬戦も、また一つの楽しみと言えよう。
23日にダート1700mで行われたレースは、3番人気ミラーオブマインドが2着馬との競り合いを制して3着以下を10馬身以上突き放す完勝。
また翌24日に芝1800mで行われたレースでは、5番人気ドゥアイズが一度は2着のウヴァロヴァイトに外から交わされたものの、内からもう一度差し返す勝負根性を見せて勝利するなど、素質溢れる2頭が勝ち上がりを決めている。
過去には、2000年に芝1800mでデビュー勝ちしたジャングルポケットが日本ダービー(G1)を制覇。その後も3歳馬ながら挑戦したジャパンC(G1)を勝利するなど、札幌新馬の勝ち馬から歴史的名馬が誕生している。
他にも札幌新馬勝ちといえば、多くのG1ホースを輩出してきた例がある。2000年以降、のちにG1馬となったケースは以下の通りだ。
■札幌新馬勝ちのG1ホース
(※2000年以降の対象馬、主なG1勝ち鞍)
2000年 ジャングルポケット【日本ダービー、ジャパンC】
テイエムオーシャン【桜花賞、秋華賞】
2005年 マツリダゴッホ【有馬記念】
ファイングレイン【高松宮記念】
2010年 グランプリボス【朝日杯FS、NHKマイルC】
レーヴディソール【阪神JF】
2011年 ヴィルシーナ【ヴィクトリアマイル】
2014年 レッツゴードンキ【桜花賞】
2016年 ソウルスターリング【阪神JF、オークス】
2017年 タワーオブロンドン【スプリンターズS】
2020年 シュネルマイスター【NHKマイルC】
エフフォーリア【皐月賞、天皇賞・秋、有馬記念】
上記の通り約20年の間にG1馬を多数輩出しているものの、どちらかといえば牝馬やマイル戦線で大物が誕生するケースが多いように映る。不思議なことに、牡馬クラシックにおいてはジャングルポケットを最後に、何故か縁がない状況が続いていた。

そんな「空白の20年」に終止符を打ったのがエフフォーリアだった。
2020年8月の芝2000mでデビュー勝ちすると、無敗のまま翌年の皐月賞(G1)を制覇。続く日本ダービーこそ2着に惜敗したが、その後は古馬相手に天皇賞・秋(G1)と有馬記念(G1)を制し年度代表馬に選ばれるなど、一躍スターダムへと駆け上がった。
「近20年をみても、後にG1を勝つ馬の多くは東京、京都、阪神などの主要競馬場でデビュー勝ちしているケースが圧倒的に多いです。ですが、昨年夏の小倉で新馬勝ちしたドウデュースがダービー馬になったことで、改めてローカル開催の2歳新馬戦にも注目が集まってきている印象があります。
そういった点を踏まえても、ジャングルポケットを最後に、そこから続いていた『札幌新馬勝ち馬は牡馬クラシックに縁がない』というジンクスをエフフォーリアが打ち破ったことによって、夏の札幌にも競馬ファンの期待感は高まるのではないでしょうか」(競馬誌ライター)
余談ではあるが、昨年エフフォーリアが皐月賞を制する1か月前にジャングルポケットが老衰のため亡くなっている。札幌デビュー勝ちのバトンを20年の時を経てエフフォーリアに託し、そして繋いだと思うとドラマのような感慨深いストーリーにも映る。
長期に渡り続いていた札幌新馬勝ちのジンクスが破られた現在。札幌開催の2歳新馬で結果を出した逸材のなかから、未来の牡馬クラシックホースが誕生する日も近いかもしれない。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?
PICK UP
Ranking
23:30更新
「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
【香港C(G1)展望】BC制覇の偉業から1か月、ラヴズオンリーユー有終の美へ!レイパパレはC.スミヨンと新コンビ、最大のライバルは最高レーティングの英国馬
横山典弘騎手が若手騎手に「あの乗り方はやめろ」岩田康誠騎手らが実践する「お尻トントン」は、競走馬の負担になるだけ?- 「死活問題」発生に競馬YouTuberが絶滅の危機!? 突然の動画削除にファンも動揺…… チャンネル配信者らに何が起こったのか
- 「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
- エリザベス女王杯「単勝430.6倍」大激走に19歳ジョッキーも「本当に信じられません」。 武豊1番人気がまさかの結末で生まれたJRA・G1最高配当【競馬クロニクル 第30回】
- 浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- アドマイヤ軍団が「G1・45連敗」武豊と絶縁し「40億円」と引換えに日本競馬界フィクサーの”逆鱗”に触れた凋落の真相?
- JRA調教師の目標は「餌やり」からの卒業!? 競馬界の「影の王」ノーザンファーム外厩大成功に存在意義ズタズタ……
















