JRA“南関の雄”も挑戦状!今年のチャンピオンズC(G1)は「異種格闘技戦」?交流G1の歴史に残る“地方の雄”のライバル物語
5日、中京競馬場で開催されるチャンピオンズC(G1)。前身のジャパンCダートから歴史を継いだ今年の「砂の王者決定戦」は、例年以上に多士済々なメンバーが集まった。
初ダートに挑む白毛の女王ソダシを筆頭に、芝とダートの両重賞を制したクリンチャー。他にも、昨年の王者チュウワウィザードや、7歳セン馬アナザートゥルースら、バラエティに富んだ出走馬が集結。多様性のある興味深い一戦となりそうだ。
そんな「異種格闘技戦」で存在感が際立っているのが、船橋競馬所属のカジノフォンテンだろう。今年1月の川崎記念、5月のかしわ記念といった地方交流G1レースを制した“南関の雄”が、いよいよJRAのリングに初登場。中央のチャンピオンズCでも激走を見せることができるだろうか。
“地方の雄”といえば、真っ先に思い浮かぶのがメイセイオペラとアブクマポーロだ。2頭が活躍した時期は、今から20年以上も前の1990年代終盤。お互いにしのぎを削る戦いを演じると同時に、中央勢に立ち向かった雄姿は今でも色褪せることはない。
南関東競馬所属のアブクマポーロは、97年のオールカマー(G2)で中央初参戦。9頭立ての8着と、初めての芝コースに苦戦した。しかしリベンジを果たしたのは同年11月30日、中京競馬場で行われた東海ウインターS(G2)。ダート戦なら負けないとばかりに、トーヨーシアトルら中央勢を一蹴した雄姿は“地方の雄”の称号に相応しいものだった。
一方、岩手競馬所属のメイセイオペラは、アブクマポーロと生涯4度対戦。98年1月の川崎記念、6月の帝王賞の両G1では敗れたものの、10月に地元の統一G1マイルCS南部杯で優勝。3度目の対決で初めて先着した。
同年12月の東京大賞典(G1)では、アブクマポーロが返り討ち。2着に敗れたメイセイオペラだが、両馬とも中央勢を退けて地方馬ワンツーフィニッシュを飾るなど大いに存在感を発揮。当時、このライバル対決は2頭の頭文字から「AM対決」ともてはやされた。
年が明けた99年。「AM対決」は実現しなかったものの、フェブラリーS(G1)でメイセイオペラが優勝。現在まで日本競馬史上唯一となる、地方馬として初の中央G1制覇を成し遂げている。
カジノフォンテンに話を戻せば、今年の船橋勢は実際に強い。今年7月のジャパンダートダービー(G1)では、船橋所属のキャッスルトップが12番人気ながら優勝。3歳の砂の王者を決めるレースで、中央勢7頭をまとめて退ける大金星を挙げた。
また11月3日、金沢競馬場で行われたJBCクラシック(G1)では、こちらも船橋所属のミューチャリーがJRAのG1馬5頭を撃破して優勝。先に挙げたカジノフォンテンの2勝を含めると、船橋勢3頭で今年の交流G1レースを4勝する快進撃を演じている。
ちなみにミューチャリーは、3歳春からカジノフォンテンやヒカリオーソらとライバル関係を築いてきた19年の南関東クラシック世代。この黄金世代なら、中央勢を相手に「大仕事」をやってのけそうな期待も膨らむ。
“南関の雄”から“地方の雄”へ。果たしてカジノフォンテンは、チャンピオンズCで存在感を発揮することができるか。あれから20余年、メイセイオペラやアブクマポーロに匹敵する激走を期待したい。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。
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