
JRA 一歩間違えれば……チャンピオンズC(G1)優勝テーオーケインズを襲った真夏の「悲劇」 痛ましい事故を乗り越えて掴んだ“帝王の座”
5日、中京競馬場で行われたチャンピオンズC(G1)は1番人気のテーオーケインズ(牡4歳、栗東・高柳大輔厩舎)が優勝。上がり最速の末脚で一気に前を飲み込み、JRA・G1初勝利を6馬身差の圧勝で飾った。
ファンからは冠名になぞらえて「砂の帝王誕生!」や「海外にも挑戦してほしい」といった声がチラホラ。また、レースを観戦した元JRA騎手の安藤勝己氏は自身のTwitterにて「まともなら今のダート路線では抜けとるね。この馬の時代になる」と、圧巻の内容に感服した様子だった。
誰もが舌を巻くパフォーマンスで、ルヴァンスレーヴ・クリソベリルに次ぐ“新・ダート王”の座についたテーオーケインズだが、ここまでの道のりは決して順風ではなかった。一歩間違えれば、亡くなっていたかもしれない「悲劇」を乗り越えてきたのだ。
2020年8月14日。お盆期間真っ只中の栗東トレセンで悲劇が起こった。17時36分頃にトレセン内にて火災が発生。火元の村山明厩舎から火は瞬く間に広がり、鎮火までに約3時間も要する大規模な火災となった。
この事故で村山厩舎の所属馬5頭が亡くなり、村山厩舎が半焼するなどの被害が出た。また、村山厩舎に隣接する厩舎でも被害があった。その1つが高柳大輔厩舎だ。
高柳大厩舎では、厩舎の建物にあった雨どいが焼けるなどの損傷が確認された。その他、重大な被害は出なかったものの、週末のレースへ出走予定だった1頭が火災の影響で出走取消となった。
それがテーオーケインズだった。
「煙と熱風が吹く影響で、馬房の正面から馬を運び出すことができず、裏の扉を開けて馬を安全な場所へ連れ出す救助活動が行われていました。ただ、馬具が燃えて馬を簡単に出せず、救助は非常に困難だったそうです。
当時の現場はまさに地獄そのものだったと聞いています。火の勢いがものすごく、風の向きも変わるなどして、別の厩舎へ火の手が回るなど大変だったとか。
救助された馬からも1頭、気管の火傷で亡くなった馬もいました。当時の現場の風が少しでも高柳大厩舎方面へ強ければ、煙を多く吸っていたら……。テーオーケインズが今生きて、そしてG1を勝っているのは、奇跡以外の何物でもないでしょう」(競馬記者)
出走を取り止めたテーオーケインズは、その後放牧に出されて、昨年10月下旬に戦線へ復帰。2連勝でオープンへ昇級すると、重賞を勝つなど順調に逞しく成長していき、今日に至っている。
テーオーケインズの今回の勝利は、懸命な消火・救助活動にあたった消防署、ボランティアの消防団をはじめ、厩務員などのトレセン関係者全員による勝利と言っていいかもしれない。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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