元JRA藤田伸二氏が武豊の「神騎乗」を絶賛! 名手が唸った「1角までの入り」、「道中ポツン」、敗れたC.ルメールとの最大の違いは「華麗な〇〇」

「ユタカコール」に沸いた今年の日本ダービー(G1)。感動の勝利から丸1日が経った30日夜、元JRA騎手の藤田伸二氏が自身のYouTube「藤田伸二チャンネル」でレースを回顧した。
冒頭で自身の本命が池添謙一騎手鞍上のプラダリアだったことを明かした藤田氏。「いい競馬はしてたんだけど、結果は残念でした」と軽く振り返ると、話題は第89代ダービー馬に輝いたあの馬へと移行した。
「終わってみたら横綱相撲だった」
藤田氏がそう評したのはもちろんドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)のことだ。武豊騎手を背に、惜敗した皐月賞(G1)3着から雪辱を果たした。
まず藤田氏が振り返ったのはドウデュースのスタートだ。ゲートの出は「無難だった」とした上で、馬なりで後方集団に置かれた皐月賞のときとは違い、ダービーでは「何もしていないように見えて、(最初のコーナーまで)気持ちちょっと踏んでました」と、武騎手のちょっとした動きを見抜いていた。
元一流騎手だからこそ分かる皐月賞(初角15番手)とダービー(初角13番手)の微妙な位置取りの差。これがダービーの舞台で最高の結果につながったことを強調した。
元JRA藤田伸二氏が武豊の「神騎乗」を絶賛!
「結果的にクビ差2着のイクイノックスより前で運べたのは大きかったと思います。もし藤田氏が言うようにスタート後に踏み込んでいかなければ、イクイノックスの後ろになっていた可能性もあります。それでも勝っていたかもしれませんが、より厳しい競馬を強いられていたのではないでしょうか。
初角までの位置取りを振り返った場面で『さすがユタカさん』と繰り返していましたが、それくらい藤田氏の目にはスタート後の約20秒間が“神騎乗”に映ったようですね。また向正面では後方5番手をポツンと1頭だけで走っていましたが、これも道中でうまく息が入る要因になったと分析していました。ジオグリフやダノンベルーガが団子状態の馬群の中でせめぎ合っていたのとは対照的だったようです」(競馬誌ライター)
ドウデュースの勝因として、スタートから道中の位置取りを挙げた藤田氏。実はC.ルメール騎手鞍上のイクイノックスと見せた直線の攻防でも武騎手の“腕”が光った場面があったという。
それは視聴者から武騎手の「ステッキワーク」について質問を受けた場面である。藤田氏は、武騎手が最後の直線でムチを何度か持ち替えていたことに言及した。
「(最後の直線だけで)3回持ち替えているんですよ。騎手ってゴール前で焦ってるときはあんなステッキワークはできない。(武騎手の)持ち替える素早さとステッキワークは見事でしたね。さすがだなと思いました」とべた褒め。
実際に直線の武騎手の“腕”の動きをリプレイで見ると、そのスゴさがよく分かる。
「残り300mあたりで武騎手は右ムチを2発入れています。このときドウデュースは左(内)に結構よれてしまったんです。すると武騎手はすかさずムチを左手に持ち替え、今度は左ムチを1発入れて、軌道修正を図りました。もしここで持ち替える余裕がなく、右ムチしか入れていなければ、内からよれてきたアスクビクターモアと接触していた可能性もありました。
残り200mを切って先頭に立ったドウデュースに武騎手はさらに左ムチを2発。すると今度は右(外)によれる素振りを見せたので、武騎手は再びムチを持ち替え、最後にもう1発、右ムチを振るいました。持ち替えるスピードは本当に一瞬で、華麗としか形容する言葉が見つかりません」(同)
藤田氏も言及した武騎手の「ステッキワーク」はまさに芸術品だった。ダービーの舞台でこれをできる騎手は他にいないだろう。
そしてステッキワークでも明暗を分けたのがルメール騎手だったかもしれない。直線の追い比べを改めて見ると、ルメール騎手は残り200mあたりからムチを入れ始めているが、7発すべてが左ムチだった。
「終始左ムチだったことは決して悪いことではありません。ただ、藤田氏が言及していたように、ダービーの大舞台で焦ってしまい、持ち替える余裕がなかっただけかもしれませんね。2頭のクビ差は両騎手のステッキワークの差だったといえるかもしれません」(同)
藤田氏が絶賛した武騎手の“神騎乗”。その冷静さが6度目のダービー制覇をもたらしたというのは言い過ぎだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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