
2度の屈腱炎を克服した「不屈」の実力馬がいよいよ復帰! ナリタブライアンの「同期」はG1制覇、鳴尾記念勝利ヨーホーレイクに続けるか

関係者にとって頭を悩ませるサラブレッドの故障の一つが屈腱炎。「不治の病」といわれるほど競走馬生命を脅かすものである。
屈腱炎は馬の上腕骨と肘節骨をつなぐ腱である屈腱において、腱繊維の一部が断裂し、患部に発熱や腫脹を起こしている状態のことを指す。医療技術が発達した近年はその限りではないが、一昔前まではその完治のしづらさや再発可能性の高さから競走馬として再びターフで活躍することは困難を極めるため、引退を余儀なくされることも多かった。
しかし一方で、屈腱炎を複数回発症しても諦めずリハビリを重ね復帰、それだけでなく重賞タイトルまで獲得してしまうほど不屈の活躍をした馬もいる。
その1頭にオフサイドトラップが挙げられる。
三冠馬ナリタブライアンと同期
オフサイドトラップは三冠馬ナリタブライアンで有名な1994年のクラシック世代の1頭である。若葉S(OP・当時)など3連勝し名乗りを上げるも春クラシックではナリタブライアンの前に成すすべなく完敗。その後、ラジオたんぱ賞(G3・現ラジオNIKKEI賞)で4着に敗れると屈腱炎を発症した。
同年12月のディセンバーS(OP・当時)で復帰すると3着と結果を残し、翌95年2月のバレンタインS(OP)で約1年ぶりに勝利。だが、ケガを克服したと思った矢先に2回目の屈腱炎を発症。12月に一旦復帰したものの1走のみで再度長期休養を強いられることとなり、復帰したのは96年11月の富士S(OP・当時)だった。
その後、3年連続出走となったディセンバーSで2着と復調の兆しを見せ、翌年1月のアメリカジョッキークラブC(G2)から5月末のエプソムC(G3)まで重賞5戦うち3戦で馬券圏内に入るパフォーマンスをみせた。
しかしオフサイドトラップはエプソムCの後、3回目の屈腱炎を発症してしまった。
当時の馬齢ですでに7歳だったが陣営は諦めず、オフサイドトラップは98年3月に東風S(OP・当時)で復帰。2着と結果を残すと、7月の七夕賞(G3)で初の重賞タイトルを手中に収めたのだ。
勝った勢いそのままに新潟記念(G3)も制すると、次走の天皇賞・秋(G1)でも勝利。3度の屈腱炎からG1馬になるまで蘇ってみせたのである。
「不屈」の実力馬がいよいよ復帰

オフサイドトラップの活躍からおよそ26年、2度の屈腱炎を発症してなお諦めず、9日のエプソムCで復帰予定の1頭がいる。ヴェルトライゼンデ(牡7歳、栗東・池江泰寿厩舎)だ。
ヴェルトライゼンデは2020年にクラシック三冠を制したコントレイルと同世代の1頭で、兄にG1馬ワールドプレミアと重賞馬ワールドエースを持つ良血として早くから注目を集めた。クラシックでは勝利こそ無かったもののダービーで3着と爪痕を残し、古馬初戦のAJCCでも2着と実力を証明。中長距離路線で活躍が期待されたが屈腱炎を発症した。
4歳3月とまだ若い段階での発症、治した後でも十分活躍できる機会はあると陣営は判断。長期療養を経た22年6月の鳴尾記念(G3)で復帰。2番人気に推されたレースでは道中で中団に控えると、直線では上がり3ハロン2位となる33秒7の末脚を見せ、後にエリザベス女王杯(G1)を勝つジェラルディーナ相手に半馬身差しのぎ切り勝利。復帰初戦で初重賞制覇を収めた。前走から中495日という間隔は、JRAの平地重賞史上最長での勝利である。
その後も11月のジャパンC(G1)では勝ち馬と約1馬身差の3着、昨年1月の日経新春杯(G2)では勝利。4月の大阪杯(G1)で6度目のG1に挑むも9着に敗れた後、屈腱炎を再発した。
脚部不安に悩まされながらも、その素質は折り紙付きといえる本馬。陣営は諦めず現役続行を決定。そして来る9日、1年2ヶ月の休養を経て復帰予定である。
すでに競走馬としてはベテランの域となる7歳、実に現役生活の2年半を屈腱炎と闘ってきたが、不屈の闘志で復帰する。奇しくも1日には屈腱炎明け3戦目となったヨーホーレイクが鳴尾記念を制した。およそ四半世紀前にG1馬まで上り詰めたオフサイドトラップやヨーホーレイクに続いて、ヴェルトライゼンデは勝利を掴み取ることができるか。
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