ぼくらはあの頃、アツかった(13) パチスロは、心に届く鎮痛剤。「鬼武者3」が教えてくれた悟りの境地

 いつも同じ服を着ているおじさんがいた。パーカーの上に釣人用のベスト。背中に「8」と書いてあった。
年齢は50代前半。渡辺徹を5回くらいバックドロップしたような顔をして、彼は常にそこにいた。九州の、片田舎のホールである。

 常連たちからは「エイトマン」と呼ばれていた。言わずもがな、背中に刻まれたナンバーが由来である。

 台パン。ドル箱シェイク。激アツ演出が外れた際のスタッフへのクレーム。

 タバコの灰はフロアに直接捨てていたし、止めた台が爆裂するのが嫌だからと、帰る際には必ず下皿にメダルを残してゆく。数え役満である。失点のデパートだ。ホールで出会った人々は天の川の星の数ほどいるが、古今東西、エイトマンを超える「嫌いなお客」は未だかつて居ない。

 筆者はある時、ロデオの「鬼武者3」を打っていた。ちょうど五年ほど付き合っていた彼女と別れたばかりの時期で、心が錆びていた。周りが全員敵に見えたし、みんなが筆者のことを指差して笑っているような錯覚を覚えていた。これはもうスロに逃げるしかあるまいと、アルバイトの給料を全額財布にぶち込んで、全部使うつもりで店に来て、導入されたばかりの爆裂機にケツを落ち着けたところで、隣がエイトマンである事に気づいた。

 普段なら即座に移動している所だったが、その日の筆者は正気じゃなかったので、そのまま続行した。

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