5億円ドーブネ2連勝も武豊の代打・吉田隼人が「酷評」された理由。「一戦消化しただけになってしまった」喜びも束の間、心配される今後の路線
2日の中京競馬場で行われた2歳オープンききょうSは、話題の5億円ホース・ドーブネ(牡2歳、栗東・武幸四郎厩舎)が逃げ切って勝利。単勝1.7倍の人気に応え、デビュー2連勝を飾った。
7頭立て、芝1400mのレース。やや遅れ気味のスタートだったドーブネだが、ダッシュ力を活かしてハナへ。最初の600mを34.3秒で通過すると、先頭のまま迎えた最後の直線へ。鞍上の吉田隼人騎手がゴーサインを送るとスッと後続を突き放し、最後は流してゴールした。
「今日は能力だけで勝ちました」と語った吉田隼騎手は、凱旋門賞(G1)騎乗のため不在だった武豊騎手の代役できっちり結果を出した格好だ。
デビュー戦で、大ヒット競馬アプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)で知られる藤田晋氏の馬主初勝利を届けたドーブネ。2連勝で早くもオープン初勝利を手にした藤田氏は自身のTwitterで「やった涙(絵文字)」と喜びを露にしている。
収得賞金を上積みできたことで、今後の展望が大きく開けたドーブネ。5月の千葉サラブレッドセールで5億1711万円(税込み)の超高額で取引されただけに、今後はやはり武豊騎手とともに来年のクラシックで活躍することを多くのファンが期待しているに違いない。
しかし、そんな快勝劇の一方で、ある記者はそういった青写真から「大きく遠ざかった」と酷評する。
「勝つには勝ちましたが、正直ドーブネが今後どこを目指すのか、わからなくなる一戦でした。ディープインパクト産駒の超高額馬ということで、普通なら最も高額賞金レースが集まるクラシック路線を目指すべきだとは思いますが、この日のレースぶりはデビュー戦で武豊騎手が教えていたことを『リセットしてしまったのでは』と疑問を持たざるを得ません。
というのも、デビュー戦で武豊騎手が『道中も調教より我慢がきいていました』と話していた通り、やや行きたがる面があるドーブネだけに、今回1400mで逃げてしまったのはどうなのかと思いますね。もし今後、クラシックを目指して距離を延長していくようなら、今回のレースは目標に『大きく遠ざかった』と言わざるを得ない内容でした」(競馬記者)
実際にレース後、吉田隼騎手も「ゲートもゆっくり出ましたが、併せる形になるとハミをとって行ってしまいました。そういうところを教えたかったのですが……」とコメント。「今日は一戦消化しただけになってしまいました」と、とても勝利した騎手とは思えない反省の弁が口をついた。
これには他の記者もドーブネの今後を心配する。
「うーん、目先の1勝を拾っただけというか、ちょっと内容のないレースになってしまいましたね。もともと芝1200mでデビューという話もあっただけに、陣営も気性面からくる距離に課題があることは把握しています。
ただ、それでも札幌の芝1500mを選択したのは、やはりマイル路線の可能性を残したかったからでしょう。武豊騎手もデビュー戦では、あえて控える競馬を試みていましたしね。ただ、今日の内容だと今後は1400m以下が主戦場になってもおかしくないです。普通の馬なら全然OKですが、約5億円の超高額馬ですからね……」(別の記者)
単純なレースの賞金でも、仮に今後のドーブネの主戦場が1400m以下になるなら、2歳10月以降から3歳夏までの重賞はG1がないどころか、11月の京王杯2歳S(G2)、来年3月のファルコンS(G3)、5月の葵S(G3)と3つしかない。
一方で、もし1600mを走ることができれば朝日杯フューチュリティSやNHKマイルCといったG1を始め、重賞競走も毎月のように存在し、今後の可能性も大きく広がる。
「実は近年、札幌の芝1500mデビューはクラシック路線で活躍する馬よりも、むしろ短距離で活躍する馬が目立ちます。
例えば、今年のNHKマイルC(G1)を勝ったシュネルマイスターがそうですし、過去にもグランプリボスやタワーオブロンドンといったG1馬も札幌・芝1500mデビュー組ですね。そういった意味ではドーブネも、良い短距離馬になる可能性は十分あるはずですが……今回のレースは、そういった流れを加速させてしまったかもしれません」(同)
「初戦の強いイメージを大事にしたい」
レース前には、そう意気込んでいた吉田隼騎手。だが、勝つには勝ったものの、残念ながら100点満点の代打成功というレースにはならなかったようだ。ここから豊富な経験を持つ武豊騎手が、どう5億円の大器を育てていくのか注目したい。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
PICK UP
Ranking
23:30更新- クロワデュノール「世代最強説」に現実味も…ダービー馬候補が未勝利戦より遅い時計の怪
- ルメール軍団「誤算続き」で迷走中?使い分けの弊害に一部ファンから疑問の声
- 武豊×ドウデュース完全包囲網で波乱含み!?豪華メンバーのジャパンCにチェルヴィニア、ブローザホーン、オーギュストロダンら最強メンバー集結。レジェンド元JRA騎手の見解は?
- 「別競技」の高速馬場で欧州最強マイラーの意地見せたチャリン!ジャパンC参戦オーギュストロダン、ゴリアットに朗報?
- 武豊ドウデュースに「最強刺客」立ちはだかる…今年のジャパンCで「外国馬は消し」が危険すぎる理由
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- C.ルメール「アンラッキー」な過怠金に謝罪…マイルCSでも「牝馬のC.デムーロ」の手綱冴えるか?
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
- 【京都2歳S(G3)展望】藤田晋オーナーの大物エリキングが登場! ジョバンニ、サラコスティがリベンジに燃える
- 【ジャパンC(G1)展望】「ディープ」オーギュストロダンVS「ハーツ」ドウデュース、2005年有馬記念から19年越しの最終決戦!
関連記事
JRA「1年目3勝」の苦労人が掴んだ三冠最終章の主役。吉田隼人「負けたら僕のせいでいい」騎手人生を変えた6年前の執念とは
JRAキングカメハメハ「最後の大物」は三冠馬の弟!? ジェンティルドンナの弟スレイマンが1.9秒差の大差勝ち!
JRA関東の「勢力図」にもちょっとした異変、躍進したのは横山武史だけじゃない!? C.ルメール追う川田将雅はゴールドシップばりの「大出遅れ」から定位置に復帰
川田将雅「迷惑騎乗」にファンの不満が爆発!? 吉田隼人は日本ダービー(G1)で“ソダシ潰し”のリベンジ成功、割を食ったのはまたしても金子オーナーのヨーホーレイク
新垣結衣「逃げ恥サイン」はまさかの1週遅れ!? 日本ダービー(G1)シャフリヤールVSエフフォーリア激戦の裏で、屈辱のオークスから吉田隼人&須貝尚介コンビが実力を証明