パチスロ「連チャン性以外にも『とんでもない特徴』があった裏Ver.」～4号機名機伝説～ 『ビーチガール』後編【アニマルかつみの回胴青春時代Vol.107】

　時は四半世紀前の1997年、頬を撫でる風も日ごと涼しさを増しつつあった10月のことである。

　インターネットがまだまだ一般的でなかった当時、パチスロ必勝ガイドの編集部には毎日のように全国の読者から、ハガキや封書で様々な情報が寄せられていた。

　その日も自分は、弟分のニューガルーダ石川（現・ガル憎）と、おびただしい読者情報を重箱の隅をつつくように物色していた。

　前年春、誌面企画の一環としてレトロ台や裏モノの実戦取材に特化した活動（連載）を開始し、いままさに大ブレイク中だった師弟コンビ「ザ・マッドパチスロブラザーズ（マッパチ）」。その、次の取材対象を探していたのである。

　編集部の片隅で郵便物の山と格闘すること、小一時間。ようやく大物を探り当てた。

「近所の店に、『ビーチガール』のバッキバキな裏モノがあります。等価交換で10万コースは当たり前、時には30万出ちゃうこともあります」

　なんともソソる話である。個人的にも大好きで、プライベートでも近所の店でよく打っていた『ビーチガール』。不穏な噂など一切なかった「彼女」が裏返ってしまったというのだから、これはもう放ってはおけない。ガルーダ君の反応も同様だった。

　数日後。電車を何本か乗り継ぎ、情報にあった首都圏某県の某ホールに向かった。初めての土地の、初めての店。しかし、不安はなかった。裏モノ導入の実績については当時、好事家の間では有名なチェーンだったからだ。

　店に到着し、パチスロコーナーへ足を踏み入れると、裏モノ設置店特有の鉄火場然としたムードに、いい意味で武者震いがした。

　香ばしい風体の常連客たちに目を付けられないよう気を配りながら、写真の隠し撮りがバレないようカメラの位置や角度も確認し、シマの中ほどの空き台に並んで腰を下ろす。

　打ち始めてほどなく、「彼女」の異常性に気づいた。高い爆裂性能の帳尻会わせであろう。通常時、リプレイがぜんぜん揃わず、物凄い勢いでコインが呑まれていくのである。

「こりゃ、大ハマリを喰らったら、えらいことになるぞ…」

　しかし、そんな不安をよそに、投資わずか3本で初ビッグを引き当て、いきなり引き戻し込みで11連チャン。その後も、ハマってもせいぜい下皿分くらいで「当たれば5～6連チャン」を繰り返し、気づけばパチンコ用の大きな箱を棚上に2杯、足下に4杯積み上げていた。

　一方、食いつきに手間取り序盤は苦しめられていたガルーダ君の方も、中盤から連打を重ねて、それなりの出玉の山を築くことができた。

　正直、自分の台は初当りの軽さから高設定であることは間違いなく、閉店まで打ち切りたかった。が、なんせ我々は見知らぬよそ者。常連たちの眼差しが険しくなってきたので、午後7時すぎに退散と相成った。

　情報のとおり、凄まじい爆発力を見せてくれた『ビーチガール』の裏バージョン。しかし、出玉以外にも「彼女」には、裏モノならではのとんでもない特徴があった。

　なんと、本来はあるはずのないフラグ告知機能を搭載していて、ボーナスが成立すると全リール停止後に右リール横の「REPLAY」ランプが点滅するのである。

　おそらく、フラグ告知機能のあるタイヨーの姉妹機『マスターダックⅡ』（※前回へのリンク）の中身をごっそり移植したものと思われるが、成立ゲームでいきなりチェリー付きハサミ目が出るなど、「わかる人が打てば一発でわかる」という、とんでもないシロモノだった。

　いまと違ってコンプライアンス意識に乏しかった当時、全国各地に様々な裏モノが存在し、それらを求めて我々マッパチは活動を展開していたのだが、この日打った『ビーチガール』の裏バージョンは、間違いなく個人的ベスト3に入る「名機」である。

　まぁ、労せずして13万両近くもお持ち帰りでき、帰りの道中はひとり「ウッキウキ♫」だったというのも、あるのだが…。