
武豊も「後味が悪い」と苦言…反省のG1勝ちから6年、浜中俊が特別な想いで迎えるスプリンターズS

10月2日、中山競馬場ではスプリンターズステークス(G1)が開催される。
秋のG1シーズン到来を告げる短距離王決定戦に、今年も快速自慢が集結。中でも大きな注目を集めているのが、前哨戦のセントウルS(G2)を制したメイケイエールと、夏のスプリント王という看板を引っ提げて出てくるナムラクレアの初対決である。
人気を集めることが予想されるこの2頭の共通点と言えば、父がミッキーアイルであるということ。勝てば産駒の初G1制覇ということにもなるが、この点に関してはナムラクレアの鞍上である浜中俊騎手にとって、より一層力の入るポイントとなることだろう。
ミッキーアイルと浜中騎手と言えば、2013年9月のデビュー戦から引退レースとなった2016年12月の阪神C(G2)まで、キャリアの全20戦中16戦でコンビを組んだ“相棒”である。
このコンビで計6勝を挙げており、2014年のNHKマイルC(G1)と2016年のマイルCS(G1)を含む重賞を5勝。名コンビとして多くのファンの記憶にも焼き付いている。
しかし、輝かしい実績を残した一方で、決して良い思い出だけではないのも事実。ミッキーアイルにとって生涯最後のG1勝利となった2016年のマイルCSでは、浜中騎手の騎乗がレースに多大な影響を及ぼしている。
4歳になってから短距離路線を中心に使われていたミッキーアイルだが、勝ち鞍は3歳秋のスワンS(G2)が最後。「リフレッシュしてもう1度マイルを使ってみよう」という陣営の判断もあり、約1年半ぶりにマイル戦への参戦を決めた。
ゲートが開くと持ち前のスピードでハナを奪い、リードを保ったまま直線へ。2番手からネオリアリズムが迫ってきたが、先頭を譲ることなく最後の200mを迎える。
前で競り合う2頭を目がけて差し馬勢も詰めてくる中、ミッキーアイルは坂を迎えても根性を発揮。しかし、最後のひと踏ん張りをと浜中騎手が右ムチを入れたのが影響したか、ミッキーアイルの進路が徐々に外側へと向かって行く。
すると、馬体を併せていたネオリアリズムがそのあおりを受けて外にヨレてしまい、後続のサトノアラジンとディサイファ、さらにダノンシャークまでもが玉突き事故のように接触。あわや大事故というシーンを招いてしまった。
武豊騎手も「後味が悪い」と苦言…
結局、ミッキーアイルは最後まで先頭を譲らずゴール。審議の結果、不利を受けなかったとしても勝ち馬に先着できた被害馬はいなかったという判断により、降着処分はなし。2年6カ月ぶりとなるG1勝利が確定したのだが、浜中騎手には「開催8日間(11月26日~12月18日まで)の騎乗停止」という重い処分が下っている。
レース後、5着に終わったサトノアラジンの川田将雅騎手が「最後も良い勢いで伸びていたのですが……つくづく運がないのだなと思いました」と振り返れば、落馬寸前までバランスを崩して10着に敗れたディサイファの武豊騎手も「直線まで良いレースができていましたが、後味が悪いですね。転倒しなくて良かったです」と苦言を呈した。
勝利した浜中騎手でさえも、本来であれば歓喜のインタビューとなるはずが、第一声から「直線で外に斜行してしまい申し訳ない気持ちです」と反省の弁を述べたほど。相棒・ミッキーアイルにも「2つ目のG1タイトルとなりましたが、すごく後味の悪い結果にしてしまって本当に申し訳ない」と謝罪の意を表した。

そんな酸いも甘いも経験した元パートナーの産駒で勝利したこともあってか、ナムラクレアとのコンビで昨夏の小倉2歳S(G3)を制した際には、思わず大きなガッツポーズが飛び出した。
以降はすべてのレースで手綱を取り、函館スプリントS(G3)では減量ギリギリの「斤量50キロ」に挑戦してまで騎乗を決断。実に14年ぶりという過酷な減量に耐えてでもナムラクレアと戦うことを望んだのは、この秋のビッグタイトルに懸けていたからだ。
スプリントG1のタイトルというのは、父ミッキーアイルにとっての悲願。同馬は高松宮記念(G1)とスプリンターズSを2回ずつ、計4回挑戦したものの最高成績は2着。頂点には一歩届かなかった。
実は5歳秋にマイルCSで復活のG1星を挙げた後も、暮れの阪神Cから始動して翌春の高松宮記念を目指していく予定だったが、「2017年の種付けシーズンに間に合うから」という理由で翌年1月末に電撃引退が決定。急転直下で現役生活に幕を下ろすことが決まった。
父が果たせなかったスプリントG1制覇は子どもたちへと受け継がれ、あれから5年が経った2022年秋に2頭が挑戦。どちらが勝っても悲願達成には変わりないのだが、やはり浜中騎手には人一倍燃えるものがあるはずだ。
6年前の悔しさを晴らし、ミッキーアイル産駒の初G1制覇を、父の悲願であったスプリント戦で成し遂げることができるか。浜中俊とナムラクレアのコンビから目が離せない。
PICK UP
Ranking
17:30更新横山典弘騎手が若手騎手に「あの乗り方はやめろ」岩田康誠騎手らが実践する「お尻トントン」は、競走馬の負担になるだけ?
「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
武豊やC.ルメールでさえ「NGリスト」の個性派オーナーが存在感…お気に入りはG1前に「無念の降板」告げた若手騎手、過去に複数の関係者と行き違いも?
- 浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
- JRA「馬が走ってくれません」スタート直後の“レース拒否”に大反響!? 三浦皇成も打つ手なし……未勝利馬がまさかの「自己主張」で1か月の出走停止処分
- 「正直なところ辟易としています」武豊が巻き込まれた29年前のアイドルホース狂騒曲…レース前に明かしていた「コンビ結成」の裏話
- 【NHKマイルC(G1)予想】ジャンタルマンタルは皐月賞の反動があるとみて消し! 出走唯一の連勝馬に着目
- 皐月賞(G1)クロワデュノール「1強」に待った!? 「強さが証明された」川田将雅も絶賛した3戦3勝馬
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
- 横山典弘「27年ぶり」ドバイ決戦へ。「自分の命と引き換えに僕を守ってくれた」盟友ホクトベガの死で止まった時間…今度こそ無事完走を