武豊「救った」人情派オーナーに直電。三浦皇成「G1を勝たせて下さい」抜擢の裏側
「大きな舞台につながる、いいレースでした」
先週行われた東京スポーツ杯2歳S(G2)を制したガストリック(牡2歳、美浦・上原博之厩舎)。その鞍上・三浦皇成騎手は今年でデビュー15年目になるが、未だJRAのG1勝利がないジョッキーとして知られている。
JRA通算976勝、重賞19勝(いずれも23日現在)。紛れもない関東のトップジョッキーの1人でありながら未だG1に手が届いていない事実は、元JRAの先輩騎手・藤田伸二氏をして「珍記録」と言われても仕方がないのかもしれない。実際に「三浦皇成」で検索を掛けると「G1」「勝てない」といったワードが予測で表示される。
だが、そんなことは三浦騎手本人が一番よくわかっていることなのだろう。
三浦皇成騎手「G1を勝たせて下さい」抜擢の裏側
「昨年の北海道セレクションセールで1760万円だったこともあって、デビュー前の評判はそれほど高くなかったガストリックですが、追い切りの動きも良く、デビュー戦では出遅れながらも上がり最速の末脚で勝ち切る出色の内容。新馬戦では若手の永野猛蔵騎手が騎乗していましたが、『次は外国人騎手に』という話だったそうです。
ですが、ここで前田幸治オーナーに直談判したのが三浦騎手でした。
ガストリックのデビュー戦で4着だったキャラメルシフォンに騎乗しており、その動きを間近で見て一目惚れ。(東スポ杯の)勝利騎手インタビューでも『なかなかこういう馬はいない』と話していましたが、オーナーに直接電話をかけて『僕にG1を勝たせてください、お願いします』と必死だったそうです」(競馬記者)
ガストリックを手掛けるノースヒルズといえば、かつて低迷していた武豊騎手の復活のきっかけになったキズナがいる。2013年の日本ダービー(G1)を勝った際「僕は帰ってきました」と語ったエピソードはあまりに有名だ。福永祐一騎手を三冠ジョッキーにしたコントレイルもノースヒルズが手掛けた馬だった。
上記2頭のオーナーは前田晋二氏だったが、ガストリックの前田幸治オーナーはその兄にあたりノースヒルズの代表を務めている。その実績だけでなく、人情味溢れるオーナーとして有名だが、この三浦騎手の直談判も快諾したという。
「R.ムーア騎手やD.レーン騎手に先約があった関係もあって、T.マーカンド騎手で決まりかけていたそうです。ただ、三浦騎手は関東の騎手の中ではノースヒルズと良好な関係を築いているジョッキー。前田オーナーにも普段から可愛がられています。
武豊騎手にキズナを託した際も『競馬は武豊が活躍してこそ』という信念に基づいた決断だったそうですが、今回もG1をなかなか勝てずにいる三浦騎手を『男にしてやりたい』という思いがあったのでしょう。人間関係を重視するノースヒルズらしい決断だと思います」(同)
「大事なレースを僕に任せていただいたオーナーに感謝したいです」
東京スポーツ杯2歳Sの勝利騎手インタビューで、最初に「調教でも乗っていたが、どんな感触だったか?」と聞かれた三浦騎手だったが、その質問に答える前にまず開口一番でオーナーへの感謝を伝えている。
今年は春から丸田恭介騎手の高松宮記念、横山和生騎手の天皇賞・春、荻野極騎手のスプリンターズS、坂井瑠星騎手の秋華賞と、これまで壁に跳ね返されてきたジョッキーたちの初G1制覇が目立つ。
「それ(騎乗が決まって)からは(このチャンスを)『モノにするぞ』『この馬と大きいところを目指していく』という気持ちで追い切りに乗せていただきました」
レース後、ガストリックを管理する上原調教師は「王道を」と次走に年末のホープフルS(G1)を予定していることを明言。自らの直談判、そして好騎乗で大きなチャンスを手繰り寄せた三浦騎手は、今年の“トレンド”に乗れるだろうか。年末の大きなトピックスになりそうだ。
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