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最強馬候補の一角グラスワンダーがマークした朝日杯の怪物ぶり

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 18日、2歳チャンピオンを決する2歳G1のひとつ、朝日杯フューチュリティS(G1)が開催される。今年で74回目を迎える伝統あるレースである。

 過去の勝ち馬を拾ってみても翌年春の皐月賞(G1)や日本ダービー(G1)をはじめ、後にG1を制する馬がずらりと並ぶ。だが、1991年に阪神で開催されていたラジオたんぱ杯3歳牝馬Sがラジオたんぱ杯3歳S(現ホープフルS・当時G3)として混合戦で行われるようになると、徐々にクラシックへつながる活躍馬の出現度がこのレースに偏り始める。

 朝日杯3歳S(朝日杯FSの前身)時代でクラシックを制した最後の馬が93年のナリタブライアン。2001年に名称変更されて以降は12年のロゴタイプが皐月賞を制しているだけで、昨年のドウデュースのダービー制覇は実に28年ぶりにこのレースからダービー馬が出現したことになる。

 とは言え、その間もG1格付けのレースらしく、勝ち馬から後のG1馬が生まれており、「歴史に残る」クラスの名馬も現れている。中でもその勝利に衝撃が走り、「怪物」の異名を轟かせたのが97年の勝ち馬グラスワンダーだ。人気ゲームの『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)内でもキャラクターとして登場しており、その名前はおなじみかも知れないが、改めてグラスワンダーの朝日杯を振り返ってみたい。

 グラスワンダーは95年生まれの馬だが、日本ではなくアメリカで生を受けており、96年のキーンランドセールに上場。現場にいた尾形充弘調教師の目に留まり、シェイク・モハメド殿下との競り合いの結果25万ドルで落札された。

 そのまま尾形厩舎で管理されることになったグラスワンダー。デビューは9月の中山1800m戦。引退レース以外のすべてで手綱を取った的場均騎手(現調教師)を背に単勝1.5倍の圧倒的1番人気を背負って2番手から楽に抜け出して後続に3馬身差をつける楽勝。

 2戦目は当時1400mで開催されていたアイビーS(当時OP)。ここでも単勝1.4倍の1番人気に推される。スタートで後手を踏んで終始馬群の後ろにつけるレースだったが、直線に入って残り200mのところで先頭に立つとノーステッキのまま後続をちぎり、5馬身差の圧勝を飾った。

 デビューから月イチペースで使われてきた3戦目に選ばれたのが京成杯3歳S(現京王杯2歳S・G2)。このレースには小倉3歳S(現小倉2歳S・G3)と新潟3歳S(現新潟2歳S・G3)の両重賞を勝った馬も参戦していたのだが、グラスワンダーの単勝オッズは1.1倍とここでも圧倒的な人気。レースでは好スタートを切って2番手につけると、4コーナー過ぎで先頭に並びかけ、そのまま直線残り400mで抜け出して先頭に立つと、やはりノーステッキのままムチの入る後続を尻目に引き離す一方で、6馬身差をつけてここも圧勝。

 3戦連続で楽勝してきたグラスワンダーは、3歳王者決定戦の朝日杯に駒を進める。

 ここにはデイリー杯3歳S(現デイリー杯2歳S・G2)や函館3歳S(現函館2歳S・G3)の勝ち馬をはじめ、東京スポーツ杯3歳S(現東京スポーツ杯2歳S・当時G3)の2着馬、3着馬が参戦するなどメンバーが揃ったレースだったが、ここでも単勝1.3倍と抜けた1番人気に推される。

 もはや敵はいない状態で迎えたレース。難なくスタートを決めると中団につけて追走。4コーナー過ぎから先団に取り付くと、初めてムチを使われて気合いを入れられ、一足早く抜け出していたマイネルラヴを外から並びかける間もなく交わし2馬身半差をつけて完勝した。

 その走破タイムが表示されると、観客がどよめいた。勝ちタイム1分33秒6は90年に的場騎手が騎乗してリンドシェーバーでマークしたレコードタイム1分34秒0を0.4秒上回り、同日同距離で開催された1600万下条件特別(現3勝クラス)の勝ちタイムを0.7秒上回る驚異のタイムとなった。

 レースを終えて的場騎手は「じっくり乗っても差し切ってくれると思っていたので、気楽に走らせた」「今日も素晴らしい時計で、強い勝ち方をしてくれました」と賞賛のコメントを贈った。尾形調教師も来シーズンのアメリカ遠征を口にするほどの圧倒的な勝利だった。

 このレースは15頭立てのうち、グラスワンダーと同じ外国産馬が11頭出走していたのだが、2着のマイネルラヴは後にスプリンターズS(G1)で短距離最強馬だったタイキシャトルを破って勝利、4着のアグネスワールドは英仏のG1を勝ったほか、10着のボールドエンペラーはスペシャルウィークが制したダービーの2着になるなど、レベルの高さが改めて後年証明された。

 だが、グラスワンダーはこの後骨折が判明。7カ月の休養を余儀なくされる。この間にもう1頭の「怪物」エルコンドルパサーが同じく的場騎手で共同通信杯4歳S(現共同通信杯・98年は積雪によるダートでの開催のため、格付けなしの重賞)とグラスワンダーが目標としていたNHKマイルC(G1)を制覇した。

 グラスワンダーが復帰戦に選んだ毎日王冠(G2)で相まみえ、サイレンススズカを入れた3頭が伝説のレースを繰り広げるが、それはまた後の話。引退までにG1・4勝を挙げて種牡馬入り。ジャパンC(G1)を勝ったスクリーンヒーローを送り出し、さらにスクリーンヒーローからはモーリス、ゴールドアクター、ウインマリリンといったG1馬が誕生。モーリスからはスプリンターズSを制したピクシーナイトが生まれ、4代にわたるG1制覇を成し遂げるなど、引退してからも名馬であることを証明した。

ゴースト柴田

ゴースト柴田

競馬歴30年超のアラフィフおやじ。自分の中では90年代で時間が止まっている
かのような名馬・怪物大好きな競馬懐古主義人間。ミスターシービーの菊花賞、マティリアルのスプリングS、ヒシアマソンのクリスタルCなど絶対届かない位置からの追い込みを見て未だに感激できるめでたい頭の持ち主。

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