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JRA武豊×サイレンススズカ、池添謙一×メイケイエール「癖馬」の運命を左右する名手との出会い…超ハイレベル朝日杯FS(G1)組の「救われない」癖馬の再始動

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JRA武豊×サイレンススズカ、池添謙一×メイケイエール「癖馬」の運命を左右する名手との出会い…超ハイレベル朝日杯FS(G1)組の「救われない」癖馬の再始動の画像1

「癖ある馬に能あり」ということわざがある。これは一癖ある者ほど、凡人とは違った能力を持っていることを意味している。この言葉の通りならば、「癖馬」と呼ばれる馬は高いポテンシャルを有しているといえるだろう。

 しかし、必ずしもその能力が開花し、結果につながるとは限らない。気性の悪さからレースで能力を発揮できずに、そのままターフを去った馬も多くいる。「癖馬」が大成するかどうかは、その馬を御して能力を発揮させることのできる“手の合う”騎手との出会いに大きく左右される。

 影すら踏ませぬ大逃げで名を馳せたサイレンススズカも、デビュー当初は気性難に苦しむ1頭であった。新馬戦こそ順当に勝利したものの、続いて臨んだ弥生賞(G2)では発馬前に鞍上を振り落とし、ゲートの下を潜り抜けて脱出。再度ゲートに入りなおして発馬したところ今度は約10馬身もの大出遅れ、「癖馬」ぶりが顕在化し8着に敗れてしまった。

「癖馬」から最強馬に化けたサイレンススズカ

 

 その後は無事にOP入りこそ果たしたものの、気性難も災いしG1戦線では結果を残せずにいたサイレンススズカ。この年の冬には香港国際カップ(G2)に出走するのだが、そこで武豊騎手と出会ったことが大きな転機となった。

 このレースは5着に敗れたものの、勝ち馬とは0.3秒差と飛躍の予感を感じる内容。すると翌年、古馬になったサイレンススズカは武豊騎手を背に真価を見せる。2月のバレンタインS(OP)を圧勝すると、そこから破竹の重賞5連勝。武豊騎手との出会いを経て、サイレンススズカは道中で息を入れる“逃げて差す”スタイルを確立。気づけばかつての「癖馬」は、影すら踏ませぬ逃亡劇でターフを沸かせるスターホースへと変貌を遂げた。

 また、近年の「癖馬」といえば真っ先に名前が挙がるのはメイケイエールだろう。気性の悪さは出遅れ癖、折り合い難、斜行癖という三重苦ともいえる癖馬ぶり。武豊騎手や横山典弘騎手といった数々の癖馬を御してきた名手たちですら手に負えない程であった。

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池添謙一騎手 撮影:Ruriko.I

 そんなメイケイエールにとって転機となったのが池添謙一騎手との出会いだ。

 初コンビとなった昨年のスプリンターズS(G1)で4着に好走して見せると、続いて臨んだシルクロードS(G3)で久しぶりの重賞勝利。レースではスタートも決まり、折り合いもついており、斜行などの問題行動も一切ない完璧な競馬だった。騎手と陣営の懸命な努力の末に、メイケイエールはようやく力を発揮する術を得たのだ。

 “手の合う”騎手との出会いは、「癖馬」と呼ばれる馬にとっては大きな転機となり得る。だが一方で今年の3歳世代では“運命の出会い”を果たしたにも関わらず、人馬がすれ違ってしまった悲劇が存在する。

 そんな悲劇に見舞われたのが、今週末に阪神競馬場で行われる城崎特別(1勝クラス)に出走予定のアルナシームである。アルナシームは新馬戦を快勝するが、続く東スポ杯2歳S(G2)では向正面で制御不能に陥り12頭立ての6着に敗退。この時点で気性難からくる「癖馬」ぶりが顕在化してしまった。

 続いて臨んだ朝日杯FS(G1)は、過去2戦で騎乗した武豊騎手がドウデュースに騎乗するため、池添騎手に乗り替わることに。するとこれがいい方向に向いたのか、出遅れこそあったが道中では折り合いを欠くことなく、最後は脚を伸ばして4着に好走して見せた。

 G1の大舞台で結果を残し、池添騎手とのコンビに光明が見えたアルナシーム。しかし次走のつばき賞(1勝クラス)では池添騎手が騎乗停止になってしまい、福永祐一騎手に乗り替わりに。レースでは終始掛かり気味で、最後の直線では逃げ馬を捉えきれずに2着。続くスプリングS(G2)でも福永騎手が立ち上がる形になる程に折り合いに苦労して、7着に惨敗してしまった。

 今年の朝日杯FS組はかなりのハイレベルであり、勝ったドウデュース、3着のダノンスコーピオン、5着のジオグリフの3頭はそれぞれ後にG1を制している。更に2着のセリフォスは安田記念(G1)で古馬相手に4着に好走。朝日杯FSで掲示板に入った5頭の内アルナシームを除いた4頭はいずれもG1で結果を残しており、獲得賞金も1億円を超えている。

 ここで好走したアルナシームもG1で通用するだけの力を秘めているはずである。仮に朝日杯FSで手綱を握った池添騎手がその後も騎乗できていれば、アルナシームが気性難を克服し、運命は大きく変わっていたかもしれない。

 今回は自己条件から出直しの1戦に臨むアルナシーム。鞍上は前走に引き続き福永騎手が務める。今週末の阪神競馬場では池添騎手も騎乗しているが、アルナシームはまたしてもベストパートナーとすれ違うこととなってしまった。果たして悲劇の「癖馬」は今後どのような運命をたどるのか、その鞍上と共に注目していきたい。

(文=エビせんべい佐藤)

<著者プロフィール>

 98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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