桜花賞&NHKマイルCによる「変則二冠」達成。最強3歳に唯一足りないピース「非業」の名牝ラインクラフト
それも当時の1番人気は、皐月賞で6着に完敗していたペールギュント。シンザン記念(G3)の勝ち馬とはいえ、当時の牡馬と牝馬の実力差は、相当広く見積もられていたということだろう。そして、それはラインクラフトと同じ桜花賞で3着だったデアリングハートが、10番人気の低評価だったことからも窺える。
結果的にそのNHKマイルCは、先述したラインクラフトとデアリングハートがワン・ツーゴール。トップクラスの牝馬であれば、牡馬と互角以上に渡り合えることを改めて示した一戦だった。
その後も秋華賞2着や高松宮記念2着などトップクラスで活躍したラインクラフトだったが4歳時の8月19日、放牧先のノーザンファーム空港牧場において調教中に死亡。現役G1馬の急死ということで、当時の競馬界には大きな衝撃が走ることとなった。
ラインクラフトがあまりにも突然世を去ってしまってから、今年でちょうど10年になる。
クラシックを分け合ったライバルのシーザリオとエアメサイアの仔が再びクラシックを賑わせている一方で、この馬の仔の姿が見られないことを惜しむファンは今でも多い。
飛躍した話になるかもしれないが、もし無事であればファンシミン系の血を引き継いだ息子が皐月賞を制し、NHKマイルCで母と同じ”変則二冠”に挑んでいたかもしれないと思うと、何とも切ない気持ちになる。
今年のNHKマイルCは、桜花賞で4着だったメジャーエンブレムが1番人気になりそうだ。彼女がここでライバルの牡馬を押し退けて主役を張れるのも、偉大なる”先人”たちが作った道があるからこそと述べるのは、少し言い過ぎだろうか。