相次ぐ不祥事にJRAも真っ青!? 「心よりお詫び」も旧態依然の“極甘処分”に反省の色なし?改めて問われる関係者のモラル
あってはならない不祥事が、またもや発覚してしまった。
先週24日、JRAは中央競馬の調教助手がインターネット上の動画投稿サイトにおいて、勝馬予想を複数回行っていた事実が確認されたとして、裁定委員会において当該調教助手、雇用主である調教師に戒告処分を下したと発表した。
発表された内容によると、8月29日に動画投稿サイトにおいて厩舎関係者の関与を疑わせる勝馬予想に関する動画の存在が確認されたことから調査を開始。9月2日に調査および関係者への事情聴取の結果、動画を作成し投稿した人物が調教助手であることを確認したという。
9日に第1回の裁定委員会を開催し、当該の調教助手および雇用主である調教師に対して予定される処分を通知するとともに、行政手続法に基づき弁明の機会を付与。そして24日、調教助手および調教師ともに指定期日までに弁明書の提出はなかったことから、第2回裁定委員会を開催し、処分を決定したとのことだ。
処分内容は当該調教助手に対し、過怠金50万円。雇用主である調教師には戒告というものだった。
当該調教助手は、競馬の公正確保に疑念を抱かせる勝馬予想を行ったこと、また、雇用主である調教師は、従業員の監督を怠ったことにより、ともに「競馬の公正確保について業務上の注意義務」に違反したとして、日本中央競馬会競馬施行規程第147条第19号に該当すると認め、上記処分を決定したとされている。
ただ、競馬施行規程に則った処分とはいえ、「関係者による勝ち馬予想」は、馬券発売を行うJRAが掲げる「競馬の公正確保」を著しく脅かす可能性のある行為だ。
つまりはJRAの馬券購入者に対する信用問題の根幹に関わる問題であり、本来であればもっと絶対に許されない姿勢を明確に示す必要があるはずだ。
しかし、過怠金50万円という処分についても事の重大さを考えると軽過ぎることは明白であり、それどころか当該調教助手や調教師の実名は公表しないという「極甘」と述べざるを得ない内容には、現場サイドからも大きな反発があったようだ。
「動画が投稿されているといった情報は、瞬く間にトレセン内に知れ渡りました。これだけSNSが浸透している昨今なら当たり前でしょう。少し考えれば重大な違反だというのは分かる気がするのですが、どうしてやってしまうのか理解出来ません。JRAはとにかく身内に甘い印象で、高収入のJRA従事者にしたら50万円の過怠金なんて軽微なもの。
関係者が馬券を買ってはいけないのは、自分の担当馬の出走に関わっているからです。信頼関係の元に成り立っている仕事で、そういった立場の人間が『あの馬はいらないとか、この馬が勝負』なんて事を不特定多数が閲覧可能な場に動画を載せるなんてのは言語道断。長期間の謹慎処分や解雇であってもいいくらいです」(競馬記者)
少し前にもレース当日のパドックで、馬を引いている厩務員が歩くのが遅いと関係者がSNSで呟いて炎上したこともあった。犯人は当然ながら特定されて、管理する調教師が謝罪することに……。
「今回も調教師に戒告の処分がありましたが、これはむしろ被害者といえるだけに可哀想な事案。なら調教師はこういった問題行為を犯した者を、クビにできるのかといったら出来ません。驚くかもしれませんが、昨今では雇用主の調教師より厩務員などの立場が強く、パワハラやモラハラなんてのを恐れて何も言えない調教師は多数いるんです。
もっと辿れば調教師は、スタッフを選ぶ事なども基本的には出来ない制度ですから。現行の制度では調教師になるタイミング、引き継ぐ厩舎などは運頼みでスタッフが決まってしまう訳です。調教師がやれる事と言ったら、馬主から預かっている大切な馬をやる気のある人や向上心のある人間に担当させるくらい。そういった点を改善していかない限りは、こういった事は今後も起き続けるでしょう」(同)
JRAの福田正二審判担当理事は「ファンの皆様にご迷惑およびご心配をお掛けしたことについて、主催者として心よりお詫び申し上げます。今回の事案について厳正な処分を行い、厩舎関係者に対する研修を継続的に実施していく等、再発防止に努めて参ります」とコメントした。
今春には、大阪の男性税理士が指南役とされた持続化給付金の不正受給疑惑も問題視されたが、結局は戒告程度の有耶無耶な決着で幕引きを図ったJRA。このときも実質的な処分もないまま、該当者を公表しない甘い処分となっている。
相次ぐ不祥事がありながら旧態依然な事なかれ主義を続ける現状に、他の関係者やファンから「これだけのことをしておいての“極甘処分”に反省の色なし」という声が出ても不思議ではない。改めて競馬に携わる関係者のモラルを問われることになりそうだ。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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