
JRA アグネスタキオンと「究極の選択」は呆気ない結末!? 幻の三冠馬「最大のライバル」アグネスゴールド逝く

また1頭、名馬が逝ってしまった。
2001年のきさらぎ賞(G3)、スプリングS(G2)を勝利したアグネスゴールドが、繋養先であるブラジルで天国へと旅立ったことが分かった。現役引退後は南米で種牡馬として活躍していたが、23歳でその生涯を終えた。
サンデーサイレンスを父に持つアグネスゴールドは、デビューから無傷の4連勝で重賞連勝をした実力馬。同世代には後のダービー馬ジャングルポケットをはじめ、ソダシの父としても知られるクロフネ、マンハッタンカフェ、ダンツフレームなど個性豊かな役者が揃っている。
なかでも突出した評価を受けていたのが、「幻の三冠馬」とも評されるアグネスタキオンだった。
そして、このアグネスタキオンと同等の評価をされていたのが、主戦騎手に河内洋、長浜博之厩舎、父サンデーサイレンスというところまで一致していたアグネスゴールドである。
タキオンが無傷の3連勝ならゴールドは無傷の4連勝。どちらもアグネスの冠名ついていることからも分かる通り、オーナーまで同じ。さらには生産者も同じだったのだから、関係者には嬉しい悲鳴というより悩ましい限りだったのではないだろうか。こちらについては、ファンの間でも2頭のどちらが強いのかと話題に上がることも珍しくなかった。
ただ、2頭の背中を知る男である河内騎手の胸中は、タキオン優勢と考えていたかもしれない。
全兄に前年のダービー馬アグネスフライトのいたタキオンに比べ、ゴールドの血統は陣営も懸念していたようにマイラー寄り。皐月賞(G1)2着のダンツフレームをきさらぎ賞で負かしていたように、戦ってきた相手は決して弱くはなかったものの、距離延長への不安はあった。
対するタキオンはラジオたんぱ杯3歳S(G3・当時)で世代トップ級の評価だったジャングルポケット、クロフネをレコード勝利で一蹴。不良馬場で行われた弥生賞(G2)を、2着馬に5馬身差で楽勝をしたにもかかわらず、河内騎手からは「良馬場ならもっと強い競馬を見せられた」と強気なコメントも出ていた。
両馬を管理する長浜師は「河内に委ねる」としたものの、三冠馬候補の声も出たタキオンに底知れない強さを感じていたのは、陣営もファンも同じだったのだろう。ともかく、皐月賞の最終的な決断は陣営からの発表を待つばかりだった。
しかし、誰もが注目したであろう無敗馬同士の「究極の選択」は、あまりにも呆気ない結末が待っていた。
なんと、スプリングS勝利の翌日になってゴールドの右前脚骨折が判明。その結果、河内騎手の決断を待つ前にタキオンへの騎乗が決定する。最大のライバルが離脱したことで、タキオンは単勝オッズ1.3倍の圧倒的1番人気に応えて皐月賞を優勝。日本ダービー(G1)での二冠を目指すこととなったが、左前浅屈腱炎を発症して出走を断念し、競走生活を終えた。
結局、両馬の直接対決が実現することはなかったものの、現役を続行したゴールドもかつての輝きを取り戻せず、秋の復帰戦で精彩を欠いた。そして、同馬もまたタキオン同様に左前浅屈腱炎を発症し、現役引退へと追い込まれてしまった。
競馬ファンにとって究極の選択といえば、的場均騎手のエルコンドルパサーORグラスワンダーや岡部幸雄騎手のシンボリルドルフORビゼンニシキが有名だが、このアグネス2頭がもし無事に競走生活を送れていたら……。そう思わずにいられないほど魅力的な2頭だった。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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