JRA珍名馬オヌシナニモノの「あまりに切ない」境遇!? 宿命のライバル・アイアムハヤスギルに先着も、ゴール寸前“逆噴射”……の原因とは
16日、中山競馬場で行われた11R京成杯(G3)は、6番人気のオニャンコポンが重賞初制覇。
特徴的な馬名に加え、大ヒット漫画『進撃の巨人』の人気キャラクターと同名の「珍名馬」として注目されている同馬だが、その意味が「偉大な者(アカン語)」であることを改めて証明する勝利となった。
一方、同じ「珍名馬」としてTwitterのトレンド入りを果たしたのが、約35分前の中山10RジャニュアリーS(OP)に出走したオヌシナニモノ(牡5歳、栗東・高橋義忠厩舎)である。
「珍名馬」の先駆けとして、今や出走するたびにトレンド入りを果たしているオヌシナニモノ。今回は3走前にワンツーゴールを決めた“宿命のライバル?”珍名馬アイアムハヤスギルにリベンジを果たしたものの、レースの結果はなかなか辛い現実を物語っている。
16頭立てのフルゲートで行われたレース。オープン入り初戦を迎えたオヌシナニモノだったが、前走の勝ちっぷりが評価されて3番人気に支持された。
そんなファンの期待に応えるように、最後の直線を先頭集団で迎えたオヌシナニモノは、抜群の手応えで馬群から抜け出す。スッと後続を3馬身近く突き放した際は、多くのファンが勝利を確信したことだろう。
しかし、残り50mといったところだろうか。先頭を走っていたオヌシナニモノが、まるでガス欠したかのように失速……。あっという間に後続馬群に飲み込まれて、最後は5着まで着順を落としてゴールした。
「うーん、良い馬なんですけど1200mでは、どうしても最後に止まってしまうんですよね。脚抜きのいい不良馬場ならワンチャンスあるんですが、この日のように力のいる良馬場だとなかなか……厩舎も騎手も、あの手この手を尽くしてはいますが」(競馬記者)
記者がそう語る通り、オヌシナニモノの戦績は「ダート1150mがベストの馬」であることを如実に物語っている。
ここまで19戦4勝の戦績だが、1150mでは3戦3勝と無類の相性を誇っているオヌシナニモノ。しかし、それが1200mになると、9戦して1勝2着2回と今一歩勝ち切れない。
それも1200mは不良馬場ならすべて連対、それ以外はすべて3着以下と、これほど傾向がはっきりしている馬もそうはいないだろう。
「陣営も本当は1150mのレースに使いたいのでしょうが、実は1150mは福島しか開催されない特殊な距離。従って福島の開催を待つしかありませんが、1150mのオープン以上のレースは存在しません。つまり、すでにオープン馬のオヌシナニモノがベストな条件で走れる機会は、おそらくもうないんですよ……」(同)
例えば昨年、2000mの天皇賞・秋(G1)を勝ったエフフォーリアが、2500mに延長された有馬記念(G1)をあっさり連勝した例がある一方、オヌシナニモノのようなスプリンターは距離が少し延びただけで、その壁にぶち当たることは珍しくない。
代表的な例は、今なお「最速」と名高いサクラバクシンオーだろうか。1400m以下では12戦11勝という生粋のスプリンターだったが、最後まで1600m以上で勝利を挙げることはできなかった。
まるでお約束のようなゴール前の失速ぶりも相まって「あまりにも切ない状況」と言わざるを得ないオヌシナニモノ。果たして、天の助けを借りず、あと「50m」の壁を超えられる日は来るのだろうか。それとも陣営は本馬が出走するたびに、てるてる坊主を逆さに吊して、ワンチャンスを祈る他ないのだろうか……。
元々、抜群の注目度を誇る人気馬だけに、さらに興味深い存在になりそうだ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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