JRA 「重賞を勝てる」松岡正海が大絶賛したのは“単勝93倍”の伏兵!? 敗戦続きも名手を唸らせた要因とは
2月27日の中央競馬は、定年・引退を迎える調教師が送り出す馬たちが大きな注目を集めた。
日本を代表する名伯楽・藤沢和雄調教師も、この日を最後に第一線から退いた。3頭出しのメインレース・中山記念(G2)で有終の美を飾ることはできなかったが、調教師として臨む最後の開催日もしっかりと2勝をマーク。最後の勝利は中山7Rの3歳1勝クラスを制したレッドモンレーヴで、通算勝利数を「1570」に伸ばしてキャリアに幕を下ろしている。
単勝1.8倍のレッドモンレーヴが人気に応えて勝利を収め、2着には2番人気のゴーゴーユタカ、3着は4番人気のモンタナアゲートと人気サイドで決着したこの一戦。3連単は1番人気の1720円と順当な結果になったが、ここで取り上げたいのが9番人気で4着に入ったウインモナークである。
昨年7月に福島の新馬戦で勝利を挙げて、新種牡馬ビッグアーサー産駒のJRA初勝利を記録した同馬。その後は北海道に向かい、8月に札幌のクローバー賞(OP)で4着の後、今年初戦となった1月のクロッカスS(L)は9頭中8着と崩れた。
そんな戦績もあってか、この日はブービー人気の単勝93.0倍と人気を落としていたが、外枠からスムーズに先団に取りつき、道中は2番手で追走。4角では逃げ馬を捕らえて先頭に躍り出るシーンもあったが、最後は人気の差し勢に飲み込まれる形で4着に敗れた。それでも、3着馬とは写真判定の末のハナ差で、もう少しで馬券圏内という奮闘を見せている。
注目すべきは、レース後の松岡正海騎手のコメントである。
「休養明けを使った分上積みはありましたが、体はもうひと絞り欲しい感じでした。重賞を勝てるかなというぐらいの器だと踏んでいますし、まだ完成途上です。次走以降に期待したいです」
確かに、昨年8月にクローバー賞を走った後は間隔を取り、年明け初戦では馬体重が前走比+18キロの486キロまで成長。それでいて、叩き2走目の今回も+4キロの490キロとさらに体重を増やしており、「もうひと絞り欲しい」状態でもあれだけ上位に食らいついていくことができたのであれば、今後に向けて期待も膨らんでくる。
さらにマイルへの距離延長に加え、直線に急坂がある中山コースといった様々な懸念点を抱えた中での奮闘ぶりから、鞍上も想像以上の手応えを得たのだろう。とはいえ、重賞でもオープンクラスでもない、1勝クラスの4着馬から「重賞」を意識したコメントが飛び出すというのは驚きだった。
■最近はケガで苦しんでいる松岡正海騎手
2010年に26歳でJRA年間100勝を初めてクリアするなど、順調に勝ち星を伸ばしていったところから一転、2011年以降は相次ぐ落馬負傷にも悩まされ、ケガとの闘いの日々が増えた松岡騎手。
思うように体が動かせない、馬に乗ることもできない時間の中で、白星を量産していくことよりも、人々の記憶に残る馬との出会いを大切にしたいという想いが強くなったのだと、かつてインタビューで語っていたことがあった。
直近の「松岡正海の馬」を思い浮かべると、やはり出てくるのはウインブライトだろう。キャリア24戦のうち22戦で松岡騎手が手綱を取り、2019年には香港でクイーンエリザベス2世カップ(G1)と香港カップ(G1)を制覇した名コンビだ。
調教からコミュニケーションを取りつつ、自身が納得できる状態に仕上げてレースに臨み、結果を出すのが松岡流。そんな“職人”のような一面を持つ男に「重賞を勝てるかなというぐらいの器」と言わしめたのだから、この馬の将来性には期待を抱かずにいられない。
成績だけを見ると、新馬戦の後は3戦連続の馬券外。昇級の壁に苦しんでいるように映るかもしれないが、一端の3歳馬として切り捨ててしまうにはまだ早いかもしれない。大化けの可能性を秘めたウインモナークと松岡正海騎手の今後から、目が離せない。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。
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