
藤田伸二「神騎乗」魅せたデアリングタクト祖母の快勝

先週から始まった札幌開催は2週目。31日のメインは牝馬限定重賞のクイーンS(G3)が行われる。
27日現在、『netkeiba.com』が公開している単勝予想オッズでは、3歳馬ウォーターナビレラが1.6倍。本番でも断然の1番人気に支持されそうだ。
同馬の鞍上を務める武豊騎手は、数年前から夏競馬の拠点を徐々に北海道に移行。今年は他場で重賞が行われている日でもほぼ北の大地に留まって騎乗を続けている。
そんな夏の北海道を拠点に数年前まで大活躍していたのが元JRA騎手の藤田伸二氏だ。出身が馬産地の新冠町ということもあって、夏になると毎年のように“里帰り”し、地の利を生かして、函館と札幌で暴れ回っていた。
藤田伸二「神騎乗」魅せたデアリングタクト祖母
実際に藤田氏はJRA通算1918勝のうち3分の1以上にあたる679勝を地元2場で記録。函館記念(G3)を3勝、札幌記念(G2)を2勝するなど重賞も合計13勝している。そして、そのうちの1つが2006年のクイーンSだった。
その年、藤田氏が騎乗したのは4歳のデアリングハートという小柄な牝馬だった。馬名からも察しがつくように、2年前に無敗で牝馬三冠を達成したデアリングタクトの祖母である。
2002年に社台ファームで生まれたデアリングハートは、シーザリオやラインクラフトと同世代。重賞を通算3勝した実力馬で、G1でもたびたび上位を賑わせた。
3歳春に桜花賞(G1)3着、NHKマイルC(G1)で2着した後、05年のクイーンSで古馬牝馬に挑戦。この時は後藤浩輝騎手を背に1番人気に支持されたが、4着に敗れていた。
その後、凡走が続いていたデアリングハート。4歳春になった同馬の窮地を救ったのが他ならぬ藤田氏だった。
「初コンビを組んだのは4歳春のヴィクトリアマイル(G1)でした。3歳春の時点では“最強の1勝馬”とまで呼ばれていたデアリングハートですが、前年の秋華賞(G1)から3戦連続で2桁着順に沈んだことで、“もう終わった馬”という烙印を押されそうになっていました。
しかし、11番人気で迎えたヴィクトリアマイルで藤田氏が大健闘の6着に導くと、続くエプソムC(G3)でも10番人気で4着。復活への手応えをつかんで臨んだのが前年4着に敗れていたクイーンSでした」(競馬誌ライター)
そのレースでデアリングハートは、マイネサマンサ、ヤマニンシュクルに次ぐ3番人気に支持されていた。
フルゲート14頭立ての6枠9番から好スタートを切ったデアリングハート。1コーナーで先行集団がごった返す展開になったが、札幌競馬場を知り尽くす藤田氏は落ち着いて中団の好位をゲットした。
前半3ハロンが34秒4と緩みのないペースで流れ、縦長の隊列になると、2コーナーまでに藤田氏はうまく外にエスコート。3コーナーを4番手で回ると、勝負どころで徐々に進出を開始し、ほぼ馬なりのまま4コーナーで先頭に立つという理想的な展開に持ち込む。
直線に入っても終始余裕の手応えで末脚を伸ばすと、最後は外から迫ったヤマニンシュクルに1.3/4馬身差をつけてゴール。この勝利はデアリングハートにとって2歳秋の未勝利戦以来、実に1年10か月ぶりの2勝目となった。
「改めて当時のVTRを見ましたが、文字通り完璧な騎乗でしたね。直線が短い小回りコースだけに、周りを意識していないとインで閉じ込められる可能性もあります。藤田氏が外に持ち出したタイミングや仕掛けたタイミング、全てが計算され尽くした騎乗に見えました。まさに札幌コースを熟知した藤田氏の神騎乗といえるレースだったと思います」(同)
その後も藤田氏はデアリングハートが6歳春に引退するまでほとんどのレースでコンビを組み、5歳秋には府中牝馬S(G3当時)を制している。
果たして今年のクイーンSでは、16年前の藤田氏のような神騎乗を披露してくれる騎手は現れるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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