
JRAアイビスSD、8枠有利は本当? 正しい買い方とは
今週から夏の新潟開催が始まり、そして札幌開催は2週目となる。小倉開催は夏の猛暑を考慮して2週間のお休みとなり、今週の目玉はやはり、年に一度の直線1000mの重賞アイビスSD(G3)だ。
過去21回行われ、様々なドラマが起こってきたこのレース。今年は今村聖奈騎手と藤田菜七子騎手の対決に注目が集まるが、アイビスSDの直線競馬といえば、誰もが思い浮かべるのは「8枠有利説」だろう。
確かに新潟の直線競馬は圧倒的に外の8枠が有利という見方がある。他の距離では使われていない綺麗な芝を走れること、そしてラチを頼ってまっすぐ走らせることができるのが大きな利点だ。確かに過去の結果を見ても8枠の好走は多いように思える。
しかし本当にアイビスSDは8枠有利なのだろうか。過去21回のレース結果や内容を踏まえ、徹底的に検証してみた。
「8枠」絶対有利説は意外にも……
まず公平な条件で比較するため、今年行われるアイビスSDと同じ条件に絞る。つまり2回新潟2日目に行われた過去のアイビスSDが対象となる。3回目の開催や開催4日目では、アイビスSDまでに何度か直線競馬が行われ、馬場状態が微妙に変わってしまう。ゆえに開催日や馬場状態が同じであることが望ましい。
次に天候だ。今週の新潟は晴れが続き、週末は良馬場が濃厚。であるならばやはり馬場の差が出る稍重、重、不良馬場は検証の対象から外し、良馬場で行われたレースに絞って検証する。
最後に頭数だ。フルゲート18頭か14頭かでは、展開も各馬の位置取りもまったく別物になる。今回はフルゲート18頭のレースなので、最低でも16頭以上のレースに絞りこむことにした。
以上、これまでの開催日と馬場状態、そして出走頭数を踏まえると、過去21回のうち8回が今回と同じ条件で行われた。では、その8回の8枠成績を見てみよう。
2020年
18番 ミキノドラマー(13人気→6着)
17番 メイショウカズヒメ(15人気→4着)
16番 クールティアラ(12人気→15着)
2019年
18番 アルマエルナト(8人気→11着)
17番 フェルトベルク(10人気→8着)
16番 オールポッシブル(9人気→3着)
2018年
17番 ペイシャフェリシタ(3人気→11着)
16番 ブロワ(11人気→16着)
15番 ダイメイプリンセス(1人気→1着)
2017年
16番 アクティブミノル(2人気→4着)
15番 ラインミーティア(8人気→1着)
2013年
18番 スプラッシュエンド(16人気→12着)
17番 レオパステル(8人気→4着)
16番 ヤマニンパピオネ(7人気→17着)
2010年
18番 アスドゥクール(13人気→7着)
17番 テイエムカゲムシャ(7人気→15着)
16番 アポロドルチェ(6人気→4着)
2008年
18番 カノヤザクラ(2人気→1着)
17番 マルブツイースター(4人気→9着)
16番 サープラスシンガー(5人気→4着)
2006年
16番 テイエムチュラサン(4人気→14着)
15番 マルターズホーク(16人気→11着)
【3.0.1.18】勝率13.6%・連対率13.6%・複勝率18.1%
この成績だけを見ると、8枠は突出して凄いといえる成績ではない。8回中4回は1頭も8枠の馬が馬券に絡んでいない。確かに人気薄も2頭馬券に絡んでいるが、上位人気で馬券圏外に敗退している馬も少なくなく、やはり見極めは重要だ。
まず言えることは、8枠であっても【10番人気以下は消し】。馬券に絡んだ馬はすべて9番人気以内。このレースは過去10年で1番人気の連対率が90%となっており、力がある馬は好走しやすい傾向にある。それだけに8枠に入っても人気薄になるような馬は消しの判断でいいだろう。
次に馬体重にも注目。8枠の馬だけでなく他の馬も外のラチ沿いを目掛けて殺到するため、8枠の馬は意外に窮屈な競馬を強いられる傾向にある。そのプレッシャーをはねのけるため、ある程度の馬格は必要で、軽量馬の好走は難しい。3着以内に好走した4頭はすべて470kg以上。一方で470kg未満の馬はすべて馬券圏外に敗退している。つまり【馬体重470kg未満は消し】となる。
そして馬券に絡んだ4頭中3頭は4~5歳の関西所属牝馬というのもポイント。もともと牝馬が好走してきたレースだが、この条件に前述の【10番人気以下は消し】【馬体重470kg未満は消し】を加味すると【2.0.1.1】勝率50%・連対率50%・複勝率75%となるので狙いやすい。
最後にローテーションも考慮しよう。馬券に絡んだ4頭はすべて前走が同年の5月以降で、3か月以上の休み明けはすべて圏外に敗退している。
以上の検証から、2回新潟2日目、フルゲート16~18頭、良馬場で行われるアイビスSDに関して言えば、8枠は抜けて好成績を残しているわけではない。ただし【9番人気以内】【馬体重470kg以上】【4~5歳の関西所属牝馬】【前走は5月以降】であれば、好走確率はグッと高まる。以上を踏まえて今年の出走予定馬を見てみると、8枠に入ったのは以下の3頭。
16番 ビリーバー(美浦:石毛善彦厩舎)
17番 シンシティ(栗東:木原一良厩舎)
18番 レジェーロ(栗東:西村真幸厩舎)
ビリーバーとレジェーロは激走条件から外れるが、シンシティは現時点で確定していない人気以外の条件をクリアしている。前走初芝の韋駄天S(OP)で3着、そしてダート1000mは2戦2勝というのもプラス要素。もし9番人気以内で大幅に馬体が減っていなければ、今年のアイビスSDで買うべき8枠の馬は「シンシティ」が正解だ。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。
PICK UP
Ranking
5:30更新「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
宝塚記念(G1)団野大成「謎降板」に関西若手のエースが関係!? 武豊の不可解な登場と突然のフリー発表…関係者を激怒させた「素行不良」の舞台裏
浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
- 皐月賞(G1)クロワデュノール「1強」に待った!? 「強さが証明された」川田将雅も絶賛した3戦3勝馬
- 武豊やC.ルメールでさえ「NGリスト」の個性派オーナーが存在感…お気に入りはG1前に「無念の降板」告げた若手騎手、過去に複数の関係者と行き違いも?
- 未勝利ルーキーが「深刻理由」で乗鞍激減!?度重なる失態に師匠からはお灸、エージェントも契約解除の大ピンチ
- JRA「出禁」になったO.ペリエ「税金未払い」騒動!? L.デットーリ「コカイン使用」K.デザーモ「アルコール依存症」過去の”外国人騎手トラブル”に呆然……
- 【阪神C(G2)展望】武豊“マジック”でナムラクレア、ママコチャを破った重賞馬が待望の復帰戦! 短距離界の有馬記念に豪華メンバーが集結
- 「世代最強候補」クロワデュノールは本物なのか?ホープフルSで下馬評を覆す最強刺客
- 天才の息子・福永祐一は何故「天才」と呼ばれないのか? 「漁夫の利」に集約されたシュヴァルグランでの「決意」に落胆