【徹底考察】弥生賞(G2) マカヒキ「父ディープインパクトが歩んだ”覇道”を突き進む寵児」
「宿命」
すべての生き物はこの世に生を受けた瞬間から、ある種の「使命」を帯びている。
それは、両親や祖先を超えることだ。
これまで、すべての生き物はそうやって進化を重ねてきた。
だが、優秀な遺伝子だけが容赦なくつながれてゆく、サラブレッドにおいての”それ”は「使命」ではなく『宿命』と称して良いかもしれない。
それだけに「近代競馬の結晶」と称された父を持つ子供たちは、生まれながらに一際重い『宿命』を背負わされている。
史上2頭目、無敗の三冠馬「英雄」ディープインパクト。
そんな偉大なる父が歩んだ軌跡に”真っ向勝負”を挑んでいる息子がいる。
ディープインパクトと同じ馬主に見出された俊英が一頭。
父譲りの末脚を武器に新馬、若駒Sを連勝。
次に狙う、いや”歩む”は皐月賞へとつながる弥生賞。
その先に待つのは史上3頭目の無敗の三冠、そして父が涙を飲んだ世界の頂点……。
それまで負けは、許されない。
我が”覇道”を阻むものは、切り捨てるのみ――。
宿命の寵児・マカヒキがゆく。
『考察』
まだOPを勝ったばかりのマカヒキが注目されている主な理由は、そのレース内容と上がりを含めた時計の優秀さ、そして何より父ディープインパクトと同じローテーションを歩んでいる姿がロマン派の心をくすぐるからだろう。
まず新馬戦だが上がり3ハロン33.5秒、1:47.7という走破時計は2歳新馬として破格のタイムといえる。ただし、この時計を額面通り受け取るのは早計か。この日の京都は極端に速い時計が記録された日であり、メインの秋華賞(G1)に至っては1:56.9。これは同年の天皇賞・秋(G1)より1秒以上速い時計となる。
また上位陣こそ出走していないが、負かした他のメンバーは未勝利をようやく勝ち上がった程度のレベル。時計は優秀だが、これだけで能力を過信するのは危険だろう。
一方でマカヒキの能力の一端が伺えたのは若駒S(OP)だといえる。無論、このレース自体はスタートの3ハロンが37.6秒、上がりの3ハロンが33.5秒という小頭数の3歳戦らしい超スローペース。したがって、マカヒキが記録した32.6秒の末脚はいわゆる「ヨーイドン」から生まれたものだ。
それでも新馬戦同様、ムチも入れずにあっさりと突き放したのだから重賞級の能力があることは確かか。また、2戦とも何ら折り合いに不安を見せることもなく、中団からあっさりと抜け出したレースセンスは、今後も同馬の強い武器になるはずだ。
ただ、不安な点も目に付く。まず若駒Sで見せた末脚が、今後も安定して発揮できるのかという点だ。
例えば、昨年の東京スポーツ杯2歳S(G3)は最初と最後が36.9-33.7という若駒S同様の極端なスローペースだったが、その勝ち馬スマートオーディンもまた上がり32.9秒という破格の末脚を見せていた。
しかし、2番人気に支持された次走の共同通信杯(G3)では35.8-35.6という平均ペースの中、本来の末脚を発揮できず6着に敗れている。無論、雨の影響もあっただろうし、必ずしもマカヒキにも当てはまるわけではないが、こういった馬が決して珍しくないのも事実だ。
さらに新馬戦後に発症した鼻出血も気に掛かる。
鼻出血は、人間でいうところの鼻血と同じ症状。だが、人間とは異なり鼻でしか呼吸できない馬にとって鼻孔の詰まりはレースのパフォーマンスに影響するどころか、下手すれば死に至る場合もある。鼻の外傷であれば良いが肺出血が鼻孔を伝っている場合もあり、JRAでも症状が現れた馬には1か月以上の出走停止処分を用いている。
【血統背景】
全姉に重賞2勝のウリウリがいるが、それだけで本馬を短距離馬と決めつけるのは早計だ。ディープインパクト×フレンチデピュティという配合には、昨年のジャパンCを勝ったショウナンパンドラがいるし、カミノタサハラが実際に弥生賞を勝っている。母系にはサクラローレルを送り出したレインボウクエストや、アルゼンチンの大種牡馬サザンヘイローの血も入っており、気性的にも日本ダービーまで距離の心配をする必要はなさそうだ。
≪結論≫
現時点で父ディープインパクトを超えているといわれると疑問符を打たざるを得ないが、それでもまったく可能性がないとは言い切れないスケールを秘めた馬。若駒Sで見せた末脚がコンスタントに使えるのであれば、弥生賞だけでなく春の2冠制覇まであるかもしれない。ただ、先述した通りペースによって本来の末脚が発揮できなかったり、鼻出血の再発によって惨敗する危険性も孕んでいる。
また、今年はクラシック出走可能賞金のボーダーが異常に高いため、弥生賞では出走権を確保するだけでなく2着以上で賞金を加算したい。本番でサトノダイヤモンドに騎乗する可能性の高いルメールを引き続き手配したのは、このためだろう。当然ながら仕上がりも万全で挑みたいところだ。
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