パチスロ「掃除屋は見た!! 3号機乱世の舞台裏」【アニマルかつみの回胴青春時代Vol.50】
前にも書いたと思うが、自分は東京へ移住した当初、生活の糧を得るためにバンドメンバーからの紹介で、パチンコ店を専門とする清掃会社でアルバイトをしていた。
仕事は基本的に、閉店後の深夜。床清掃だけだと2~3時間程度で終わるが、規模の大きな店舗で壁やガラスも含めたフルコースとなると、スタッフ総動員体制でも明け方までかかる。
ハードな肉体労働だった。しかし、受験勉強などで十代の頃から夜行性な生活には慣れていたし、何より「昼間に好きなだけパチンコが打てる」というのは大きなメリットだった。
それに…である。一般の客の立場ではけして踏み入ることの出来ない、パチンコ店の裏側を垣間見ることができる。パチンコやパチスロを趣味とする者として、これほど心躍らされることはなかった。
そもそも、自分が掃除屋のバイトをしていた頃というのが、いままさに本連載で書き綴っている、裏モノ連チャン機の全盛期。
狂乱の時代を掃除屋の立場から生々しく体験できたことは、いまもこうして昔話に花を咲かせることを生業としている者として、本当によかったと思っている。
さて、深夜の現場ではよく、翌朝の「モーニング」を仕込んでいる場面に遭遇した。
念のために説明しておくと、モーニングとは朝イチ1回転目に777が揃うようビッグのフラグを立てておく、パチスロでは古くから定番のサービスのこと。
1996年夏に「業界健全化のために」といった、いつの時代にもありがちな陳腐な大義をもって自主規制の名目で禁止となってしまったが、「とにかく朝イチはモーニングを完全奪取!!」することが、昔からのパチスロ攻略の「はじめの第一歩」だった。
バイトの中には、モーニング台を覚えておいて翌朝、それを取りに行くという不届き者もいたが、自分はさすがに良心が咎めたので…というか、万が一、会社にバレてしまってはタダじゃ済まなくなるので、「ぐっ」と我慢をした。
さて、一般的にモーニングを仕込む場合、対象となる台に専用の打ち込み機をセットしてフラグが立つまで回すのだが、渋谷のH店で見た光景は意外なものだった。
地下のパチスロコーナーでひとり床掃除をしていると、店長さんが文庫本くらいの大きさの「謎の機械」を手に現れた。
シマに並ぶ『コンチネンタル』の中の1台のドアを開け、慣れた手つきでその「謎の機械」をドアの裏側に取り付け、ボタンを操作する店長さん。すると……
「トルゥトルゥトルゥ、ピロリロ…ピポッ、ピポッ、ピポッ、ピーーーーー」
一連の遊技操作を10倍速で消化したかのような音が鳴ったと思ったら、アッという間にセット完了。その日は確か5台にモーニングを仕込んでいたが、ぜんぶセットするのに3分とかからなかった。
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