
JRA史に残るオールカマー伝説の大逃げ ~君はツインターボを知っているか?~
どんな馬が相手でも、絶対にハナは譲らない。そんな個性的な逃げ馬を見かけることが少なくなった。
現代の競馬は「スローペース症候群」と揶揄されるくらい、先行馬有利、上がりの切れ味が要求されるレースが多い。下級条件戦でアッと驚く大逃げはあっても、重賞やG1レースで観客を盛り上げるような逃げ馬を見かけなくなってしまったのが現実だ。
今週行われるオールカマーは、今年で66回目を迎える伝統の重賞レース。そしてこの時期になると思い出す馬がいる。それが1993年の優勝馬ツインターボだ。
1986年以降、このレースを逃げて勝利した馬は6頭いる。しかしこの中で本物の逃げ馬が勝利したのは、このツインターボのみだ。他の5頭はもともと先行馬や差し馬だったが、意表を突いた逃げで作戦勝ちといったレースだったのである。
ツインターボは1991年3月と遅いデビューだったが、その新馬戦(中山ダート1800m)を逃げきって勝利し、続く500万特別(中山芝2000m)でも見事な逃げ切り勝ちをおさめデビューから2連勝を決めた。その後は日本ダービーを目指してトライアルの青葉賞に出走し、ここでも逃げて9着に敗退。しかしラジオたんぱ賞(G3)(現ラジオNIKKEI賞)で逃げ切って重賞初制覇を達成し、セントライト記念も逃げて2着、福島記念も逃げて2着、そして暮れのグランプリ有馬記念にも出走し、ここでも逃げて14着に大敗という成績だった。
遅めの3歳3月にデビューしながらも、わずか9カ月後にその年の有馬記念に出走したのだから大したもの。しかもデビューから有馬記念まで、すべてのレースで一貫してハナを譲らず、逃げを徹底できたのも見事といえるだろう。
しかしツインターボの真骨頂は古馬になってからだ。1992年の4歳は長期休養で1戦しかできず、1993年の5歳になっても中山金杯、中山記念、新潟大賞典は掲示板に載ることはできなかったが、鞍上に中舘英二騎手を迎えた七夕賞では、向こう正面から一気に後続を突き放し、最後は2着に0.7秒の差をつけて快勝。勝利時計は1分59秒5という好時計、しかも前半1000mは57秒4という超がつくハイペースだったのである。
そして秋初戦を迎えオールカマー(当時G3)に出走。このレースは天皇賞馬ライスシャワーを筆頭に、ホワイトストーン、シスタートウショウ、イクノディクタス、ムービースターといった実力馬に加え、大井競馬から当時37歳の的場文男騎手が騎乗したハシルショウグンや、当時23歳の内田博幸騎手が騎乗したドラールオウカンが参戦と豪華な一戦だった。(ちなみにこのオールカマーに騎乗して今も現役ジョッキーなのはこの2名のみである)
レースは7枠に入ったツインターボが好スタートを決め、最初のコーナーで早くも後続に5馬身以上のリードをつけると、その差をみるみる広げた。向こう正面では2番手のホワイトストーンに10馬身以上の差をつけ、3コーナーでは20馬身ほどに差を広げる大逃げとなったのである。
その逃げっぷりは圧巻で、場内のどよめきも実況の興奮もG1レース並みのものであった。そして第4コーナーではすでにセーフティリードとなり、最後は2着ハシルショウグンに0.9秒の差をつけて圧勝したのである。
ツインターボの大逃げを見るために競馬場に足を運んだファンも多く、実際に七夕賞は当時の入場記録である4万7391人が集まったという。そしてオールカマーでも、その逃げを見るために多くのファンが来場し、道中の大逃げには大歓声が響いた。前年の菊花賞でミホノブルボンを、天皇賞(春)ではメジロマックイーンを破ったライスシャワーを寄せ付けない逃げに、多くの競馬ファンは酔いしれたのである。
現在の中~長距離戦線を舞台とした場合、競馬ファンのイメージに浮かぶ個性的な逃げ馬はいないのではないか。かつてはツインターボ以外にもメジロパーマーやサイレンススズカといった逃げ馬がいた。しかしデビューから一貫して逃げを徹底し、実際に重賞を何勝もした馬はツインターボぐらいだろう。メジロパーマーもサイレンススズカも、絶対的な逃げ馬として戦法が確立したのはデビューからかなり後だったからだ。
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