JRA「単勝113.4倍」永島まなみが武豊1番人気に4馬身圧勝! 北海道サマーセール682万円の“異端児”ジャマンは第2のデアリングタクトになれるか
10月31日、阪神競馬場で行われた5Rの新馬戦でどよめきが起こった。
この日の天皇賞・秋(G1)に騎乗しなかった武豊騎手の大本命馬ホープインザダークが馬群に沈んだからではない。後続をまったく寄せ付けない横綱相撲で圧勝を飾ったのが、単勝万馬券のジャマン(牝2歳、栗東・高橋康之厩舎)だったからだ。
14頭立て芝1600mのレースだった。スタートを決めた武豊騎手とホープインザダークが敢然とハナを主張したが、そこに「ゲート練習も厩舎のスタッフさんがしっかりとやってくれていたおかげで、すんなりと出てくれた」と、内から抵抗したのが永島まなみ騎手とジャマンだった。
新人騎手のまさかの抵抗に、1番人気馬で無茶な競り合いに持ち込むわけにもいかない武豊騎手はあっさりと譲歩。若き人馬が堂々とペースの主導権を握った。
前半の半マイルを49.1秒という超スローペースに持ち込むことに成功したジャマンだったが、単勝113.4倍の馬だけに“泳がされている”に過ぎないかに見えた。何よりも、武豊騎手とホープインザダークが2番手からしっかりと鈴をつけており、普通のレースなら単勝万馬券馬の見せ場は最後の直線までだったはずだ。
しかし、最後の直線で先に音を上げたのはホープインザダークの方だった。一方、ズルズルと馬群に沈んでいく1番人気馬を尻目に、“枷”が外れたように抜け出したのがジャマンだ。永島騎手が馬場の真ん中に持ち出すと、どんどん後続を突き放していく。結局、最後は4馬身差の圧勝劇となった。
「鞍上の永島騎手がまだ5勝、管理する師匠の高橋康調教師もここまで同じく5勝と苦戦しているコンビだっただけに人気がなかったのかもしれませんが、とても単勝万馬券の馬とは思えない圧勝劇でしたね。レース後に永島騎手が『普段から(調教に)乗せてもらっていて、追い切りもやる毎に動きが良くなっていました』と話していた通り、直前の追い切りの動きも悪くなかったですよ。
もちろん50kgという斤量の恩恵もあったと思いますが、非常に強い競馬でした。来年のクラシックを意識できる逸材だと思いますし、永島騎手としては絶対に手放したくない馬になったでしょう。ここまで同じ女性騎手の古川奈穂騎手など同期に押され気味の永島騎手ですが、この出会いがきっかけになるといいですね」(競馬記者)
祖母スパークルジュエルの甥にベルモントSやブリーダーズCクラシック(ともに米G1)を勝ったドロッセルマイヤーがいるものの、近親に目立った活躍馬はいない。リオンディーズ産駒だが、1つ上の全兄グロワールミノルが中央で8戦未勝利のまま、今年の夏に地方へ移籍したばかり。昨年の北海道サマーセールにおいて682万円で取引されたジャマンは、デビュー戦から単勝万馬券になるだけの背景がある、いわば“落ちこぼれ”といえる存在だろう。
しかし、だからといって、それが負ける理由にならないのが競馬だ。この日の4馬身差の圧勝劇は、何が起こるかわからない競馬の魅力が詰まった一戦ともいえた。
「実は昨年に牝馬三冠を達成したデアリングタクトも、当歳時は800万円で上場されるも買い手がつかずに主取りになるなど、決して恵まれた存在ではありませんでした。今から三冠牝馬と比べるのは酷かもしれませんが、ジャマンも前評判をどんどん覆すような存在になってほしいですね」(別の記者)
「フラフラするところはありましたが、直線に入って促すとしっかりと反応してくれた。抜け出して1頭になると周りを気にする余裕があったくらいなので、これからもっと良くなると思います」
レース後、そう期待を寄せた永島騎手は、これで通算6勝目。仮にジャマンと今回と同じ舞台で行われる来年の桜花賞(G1)を目指すなら、それまでに出走資格となる通算31勝が目標になる。
師匠の高橋康調教師から「ちょっと勢いをつけてあげたかったし、これで自信を持ってくれれば」とエールを送られた永島騎手。「もっと良くなる」というジャマンの成長ももちろんだが、騎手もまた自身の成長がコンビ継続のカギとなりそうだ。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。
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