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セイウンハーデスにも襲い掛かった「不治の病」…“奇跡の復活”カネヒキリ以来の伝説に挑む

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セイウンハーデス 撮影:Ruriko.I

 8月に入り、JRAの夏競馬も札幌と新潟に舞台が移った。来週12日からは小倉の開幕も迫る中、今週は“夏の王”を目指していた注目馬のニュースが話題になった。

 7月9日に七夕賞(G3)を制し、9月3日の新潟記念(G3)に向けて調整中だったセイウンハーデス(牡4歳、栗東・橋口慎介厩舎)が右前脚の屈腱炎を発症。長期休養に入ることが発表された。

 昨年のプリンシパルS(L)を勝った有望株は3歳時こそ重賞勝利を挙げることができなかったものの、4歳となった今年は5月の新潟大賞典(G3)で古馬の強豪相手に2着に食い込む健闘を見せ、迎えた前走の七夕賞で待望の重賞初勝利を掴んだ。

 サマー2000シリーズのタイトル獲得はもちろんのこと、秋の大舞台へという期待も高まっていた矢先の戦線離脱……。それも父シルバーステートを引退に追い込んだ屈腱炎という難敵とあって、競馬ファンからは「セイウンハーデス、お前もか……」という悲痛な叫びがあがった。

 かつては「不治の病」として恐れられていた屈腱炎だが、近年は医療技術の進歩もあって競走復帰だけでなく、大舞台で復活を果たした馬の例も珍しくない。

“奇跡の復活”を果たしたカネヒキリ

 なかでも代表的な存在と言えるのが、“砂のディープインパクト”と呼ばれたカネヒキリだろう。3歳時にジャパンダートダービー(G1)からダービーグランプリ(G1)、ジャパンカップダート(G1・現チャンピオンズC)とダートのG1級競走で3連勝を挙げ、明け4歳初戦のフェブラリーS(G1)も制したレジェンドホースだ。

 ところが、続くドバイワールドC(G1)で4着(※5位入線後の繰り上がり)に敗れ、帰国後の帝王賞(G1)で連敗を喫すると、屈腱炎を発症して長期の戦線離脱へ。2007年の秋には復帰に向けて帰厩も果たしながら、その調教過程で屈腱炎を再発させてしまうという不運に見舞われた。

 それでも再起を諦めなかった角居勝彦元調教師の奮闘もあって、帝王賞から約2年5カ月後の2008年秋・武蔵野S(G3)でついに復帰を果たす。そこでは9着に終わったが、続くジャパンCDを勝って同レース3年ぶり2度目の優勝を達成。見事にダート王へと返り咲いた。

 しかもその1勝に留まることなく、暮れの東京大賞典(G1)でも勝利を収めると、翌年1月の川崎記念(G1)を勝って自身2度目のG1級3連勝を達成。「不治の病」に打ち勝って王座を奪還したカネヒキリの歩みは“奇跡の復活劇”として今なお語り継がれている。

 競馬界の常識を変えた伝説からはや15年。「不治の病」というイメージは薄れつつあるものの、カネヒキリのように屈腱炎を乗り越えてG1制覇まで成し遂げた馬というのは現れていない。

 芝馬では、2012年の日本ダービー(G1)で1番人気に支持されたワールドエースがダービー後に屈腱炎を発症。約2年後にマイラーズC(G2)をレコードのおまけ付きで優勝して復活を遂げたが、続く安田記念(G1)では5着止まり。以降は香港マイル(G1)の4着など善戦は見せるも、G1制覇には手が届かなかった。

 そして最近では、2020年のダービー3着馬・ヴェルトライゼンデが昨年の鳴尾記念(G3)を制し、屈腱炎から約1年4カ月ぶりの復帰戦で重賞初制覇という快挙を達成した。秋のジャパンC(G1)でも3着と好走を見せ、今春のタイトル獲得に期待がかかったものの、大阪杯(G1)で9着に敗れた後に両前浅屈腱炎が発覚。再び長期休養を余儀なくされている。

 さらにセイウンハーデスと同じシルバーステートの産駒でも、2021年に新馬戦と野路菊S(OP)を連勝した素質馬のロンが屈腱炎を乗り越えて復帰を果たしたが、復帰後は2勝クラスで2着・3着・5着と足踏み。2歳時に見せた才能の片鱗を見せることはできていない。

 こうして振り返ってみると、カネヒキリの奇跡から15年が経った今なお“復帰”には辿り着けても“完全復活”を成し遂げた馬が出ていないというのは気になるポイントだろう。

 それでも、セイウンハーデスのオーナーである西山茂行氏は自身のSNSで「西山牧場でしっかり治す。来年を楽しみにしておれ」と綴っており、前向きなコメントが出ているのは頼もしい限りだ。

 一族の因縁となりつつある屈腱炎に打ち勝ち、カネヒキリに続く“完全復活”を果たすことができるか。セイウンハーデスの長い戦いがはじまる。

GJ 編集部

GJ 編集部

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