
JRAソダシ「甘やかし」の絶好展開も12着轟沈……チャンピオンズC(G1)「敗因」はダート適性にあらず!? 歴史的「豹変」を知る元名ジョッキーが突きつけた“現実”とは

5日、中京競馬場で行われたチャンピオンズC(G1)は、1番人気のテーオーケインズ(牡4歳、栗東・高柳大輔厩舎)が勝利。今夏の帝王賞(G1)でダート界の頂点に立った実力派が6馬身差の圧勝で、一枚上の力を見せつけた。
その一方、2番人気に支持されながらも12着に大敗したのが、桜花賞馬のソダシ(牝3歳、栗東・須貝尚介厩舎)だ。
16頭の猛者が集ったダート1800mのレース。今回がダート初戦となるソダシにとって、包まれて砂を被る展開になりやすい1枠1番からの発走は大きな試練になると思われていた。
そんな状況下で吉田隼人騎手が下した「逃げ」という決断は、順当な選択といえるだろう。幸い、絡んでくる馬もおらず、ソダシはあっさりとペースの主導権を握ることに成功した。
毎年のように激しいハナ争いが展開されるチャンピオンズCとしては珍しい光景。レース直前になって1番人気をテーオーケインズに譲ったソダシだが、前半は白毛の女王を切る決断をしたファンの多くが肝を冷やす展開だったのではないだろうか。
それもそのはず。1000m通過61.4秒は昨年の60.3秒、一昨年の60.8秒よりもかなり遅いペースだからだ。過去5年を振り返っても、61.9秒だった2018年はルヴァンスレーヴが2番手から抜け出して快勝。61.6秒だった2017年もハナ争いを演じたテイエムジンソクとコパノリッキーが2、3着に残っており、先頭を行くソダシにとっては絶好のペースに思われた。
しかし、白毛の女王の快調な走りは、最後の直線を迎えたところであっさりと終わりを迎えてしまった。
2番手のインティに並びかけられると、ほぼ何の抵抗もできずに先頭を譲ったソダシ。主戦の吉田隼騎手が懸命にムチを打ったものの、本来の粘りもなく、そのまま馬群に飲まれてしまう。結果は12着と、前走の秋華賞(G1)に続き、またも大敗となってしまった。
「2番手のインティが4着、3番手のアナザートゥルースが3着に粘っているわけですから、今日のソダシが展開面で恵まれていたことは確かだと思います。吉田隼騎手も『しっかりとリズム良く走れたし、スピードの乗りは良かった。雰囲気も良かった』と一定の手応えは感じている様子でした。
ただ、それでも最後の直線で馬群に沈んでしまったのは、単純にダート適性がなかったのか、それとも精神面なのか……吉田隼騎手は『力のいるダートとか、古馬の牡馬相手で地力の差が出た』と話していましたが、ちょっとわからないですね」(競馬記者)
この結果を受け、レース後には「ソダシ」がすぐにトレンド入り。ネット上のSNSや掲示板などでは「ソダシの忖度レースだと思ったのに」「あの展開で負けるってことはダート適性がないとしか」「もうダートを走ることはないだろうね」「ダート適性はないってことがわかったのが収穫」など、やはりソダシのダート適性に敗因を求める声が多く見られた。
しかし、そういった見解に異を唱えたのが、元JRA騎手のアンカツこと安藤勝己氏だ。
安藤氏は自身の公式Twitterを通じて「ダート適性云々やなくて、馬がレースで走りたくないのかもしれない」と独自の見解を披露。「秋華賞の負け方が悪かったのをそのまま引きずっとる感じ」と前走と同じく精神面に敗因があるとみているようだ。
「陣営も、本馬場入場後には待機所へ向かわず早めにゲートの裏まで移動するなど、前走の秋華賞と同じ轍を踏まないよう気を遣っていたんですけどね……。もし、安藤さんがおっしゃるように精神面が敗因だとするのなら、ソダシはダート適性がなかったことよりも、よほど深刻な状況ということになります」(競馬記者)
実際に、競馬では連戦連勝の快進撃を続けてきた馬が、たった一度の敗戦で別馬のように変わってしまうケースは珍しくない。
最近では、一昨年の皐月賞馬サートゥルナーリアが有名だ。皐月賞(G1)まで向かうところ敵なしの4連勝。単勝1.7倍に応えて皐月賞を勝利した際は「三冠」の声もあったほどの名馬だった。
しかし、その後の日本ダービー(G1)で単勝1.6倍の人気を裏切ってしまうと、そこから一度もG1を勝つことなくターフを去っている。
「日本ダービーで人気を裏切ってしまったといえば、単勝1.6倍で敗れた2007年のフサイチホウオーも有名ですね。
フサイチホウオー以前に、日本ダービーで単勝1倍台に支持されたのは1973年ハイセイコー、83年ミスターシービー、84年シンボリルドルフ、91年トウカイテイオー、94年ナリタブライアン、2005年ディープインパクトの6頭のみ。いずれも引退後にJRAの顕彰馬として殿堂入りを果たしています。
だからこそフサイチホウオーがその後、別馬のように連戦連敗になってしまったのは、当時の誰にとっても意外でした。改めて競馬の難しさを知らしめるとともに、競走馬のメンタルに注目が集まるきっかけにもなりました」(別の記者)
ちなみに、そのフサイチホウオーの主戦を務めていたのが、現役時代の安藤氏だった。名馬の歴史的な激変を目の当たりにした当人の1人だけに、ソダシに突きつけた“現実”は重い。
「ダートの感触は悪くなかった。来年はフェブラリーS(G1)挑戦も視野に入れます」
レース後、そう前を向いた須貝調教師はまだダートの可能性を諦めていないようだ。果たして、白毛の女王は復活するのか――。来年にはソダシ主演の感動的な「ドラマ」が待っていることを期待したい。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。
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