C.ルメールも川田将雅も認める大物がまたも足踏み……8戦連続1番人気も「僕が上手く乗れなかった」コントレイルに次ぐJRA史上最速記録から約1年、16年ぶりの不名誉な記録も
24日、東京競馬場で行われた石和特別(2勝クラス)は、4番人気のドンナセレーノが勝利。一方、1番人気のボーデン(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎)は2戦連続の2着という悔しい結果に終わった。
C.ルメール騎手を背に、単勝1.7倍という圧倒的な支持を集めたボーデン。課題のスタートも決まり、東京芝1800mの大外枠を跳ね返す中団追走。4コーナーで先行集団に取りついた時、多くのファンがこの馬の勝利を想像したに違いない。
実際に、残り200mを迎えた際は3番人気のカランドゥーラとのマッチレースに持ち込み、勢いはボーデンにあった。あとはライバルを競り落とすだけで、待望の3勝目が手に入ると思われたが、ラスト100mを切ったところでドンナセレーノが強襲……。最後はクビ差交わされて、2着でゴールした。
「レース後、ルメール騎手が『今日は僕が上手く乗れなかった』と、早めに動いたことを後悔している様子でしたが、正直そこまで悪いレース運びには見えませんでした。
今日は勝ち馬に上手く乗られましたし、3着馬には2馬身差。この内容なら、次こそ順番が回ってくると思うのですが……」(競馬記者)
JRA史上最速の6馬身差の圧勝劇
記者が言葉を濁すのも無理はないかもしれない。これで通算9戦2勝となったボーデンだが、4回を数える2着はすべてクビ差以内の接戦で、本当にあと一歩のところで敗れている。それもデビュー戦で2着に敗れて以降は、すべて1番人気。今回で8戦連続の1番人気となったが、またも煮え湯を飲まされる結果となってしまった。
一体、この馬が未だ2勝クラスに留まっているなど、当時を知るファンからすれば誰が想像できただろうか。
昨年1月のことだ。仕切り直しの未勝利戦に挑んだボーデンは、これを6馬身差の圧勝。勝ち時計1:45.2は東京競馬場で行われた3歳戦においてJRA史上最速であり、これを超えるのは2歳秋の東京スポーツ杯2歳S(当時G3)で、後の三冠馬コントレイルが叩き出したスーパーレコードのみだった。
そういった経緯もあり、皐月賞(G1)出走を懸けて挑んだ次走のスプリングS(G2)では、1勝馬ながら1番人気に支持されたボーデン。重馬場に苦しみ3着に敗れたものの陣営の狙い通り、皐月賞の優先出走権を掴んだことは大きな収穫だった。
しかし、その後にフレグモーネを発症して皐月賞挑戦が白紙に……ここからボーデンの歯車がどこか狂ってしまったのかもしれない。
仕切り直しの一戦となったのは、約2か月後のラジオNIKKEI賞(G3)だった。賞金的に出走が微妙だったため、デビュー戦から手綱を取り続けていた川田将雅騎手が小倉で騎乗し、若手の武藤雅騎手が抜擢されたが、それでもボーデンは1番人気に推された。
だが、スタートで出遅れたこともあって、4コーナーで大きく外を回らざるを得なくなったボーデン。小回りの福島競馬場では致命的な不利であり、レースはキャリア最低の6着に敗れた。
一度狂った歯車は、さらに大きなアクシデントを呼んでしまう。
必勝を期して自己条件に戻ったボーデンは、単勝1.1倍という絶対的な大本命に推された。観ているファンからすれば、1勝クラスに出ること自体に「反則」と言いたくなるような評価だったが、あろうことかスタートで出遅れると、まさかの4着……。
単勝1.1倍以下の馬が馬券に絡めなかったケースは2005年4月以来、約16年ぶりという不名誉な記録まで生まれてしまった。
その後、ボーデンは結局3戦掛かって1勝クラスを卒業。2勝クラスでも1番人気に推され続けているが、2戦連続で2着と足踏みが続いている。ちなみに“あの”未勝利で6馬身ぶっちぎった2着馬トゥーフェイスは、今年2月に2勝クラスを勝ち上がって、3勝クラスでも2着。オープン入りを目前にしている。
川田騎手に武藤騎手、ルメール騎手、さらには戸崎圭太騎手まで、騎乗したジョッキーたちが口を揃えて、その素質を評価するボーデン。果たして、悩める大器が連勝街道に入るのは、いつの日か。大レースが続く春も深まってきた。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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