
JRA「大スランプ」C.ルメールの切り札「第2のグランアレグリア」がクラシック絶望……安藤勝己氏が絶賛した大器も、遠ざかる本家の偉大な背中

24日、春の開幕を告げる東京競馬場で行われたフローラS(G2)は、5番人気のエリカヴィータ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)が、2着パーソナルハイを差し切って勝利。三冠牝馬アーモンドアイを手掛けた名伯楽が今年初の重賞勝ちを飾り、オークス(G1)へ大きな弾みをつけた。
「開幕週の馬場なので好位につけたかったし、国枝先生と打ち合わせした通りのポジションで進められました。(オークス出走権の懸かる)トライアルなので積極的にいきました」
レース後、鞍上の田辺裕信騎手も自画自賛する会心のレース。「マイルを使ってきた馬なので、スタートを上手く出られれば、いいポジションが取れると思っていた」と狙い通りの4番手から、最後は逃げた桜花賞6着馬をしっかりと捕らえた。
その一方、同じくマイルを使われながらも不甲斐ない結果に終わったのが、2番人気のラスール(牝3歳、美浦・宮田敬介厩舎)とC.ルメール騎手だ。
新しいグランアレグリアと絶賛された大器が……
雨が降っていたものの、良馬場で迎えた芝2000mのレース。スタートを決めたラスールだったが、エリカヴィータら好位グループを見る中団からレースを運んだのは、ルメール騎手のこの馬に対する信頼の表れだろう。
最後の直線を迎え、残り400mを切ったところで外へ持ち出されたラスール。ルメール騎手のエスコートはほぼ完璧で、あとは自慢の末脚を爆発させるだけだと思われた。
しかし、ルメール騎手のムチが入るものの、従来の伸びを見せられない。結局、前が止まらない開幕週の馬場コンディションもあってか、先頭集団に迫ることもないまま6着でゴールした。
「初の2000mということで、道中少し行きたがる場面がありましたが、ルメール騎手が前に馬を置いて上手くなだめていました。最後の直線で外に持ち出された時は突き抜けるかと思ったのですが、案外でしたね。
最後は後ろから来たルージュエヴァイユに差されていますし、少し距離が長いのかもしれません。本来、こんな馬ではないはずなのですが……」(競馬記者)
「新しいグランアレグリアです――」
昨年10月のことだ。デビュー戦を単勝2.1倍の人気に応えて快勝したラスールに、ルメール騎手は、自身が主戦を務めているG1・6勝のマイル女王を引き合いに出し、最大級の賛辞を贈った。

この発言はメディアでも大きく取り上げられ、続くシンザン記念(G3)では牡馬相手に単勝1.8倍という圧倒的な人気。かつてルメール騎手とのコンビで伝説を作ったアーモンドアイが初重賞を飾ったレースで、新たな名牝の誕生を誰もが予感していた。
しかし、スタートでやや後手を踏むと、本来の伸びを欠いて7着に惨敗……。ルメール騎手は今年、ここまで重賞勝利に手が届いていない異例の状況にあるが、思えばこのレースが2022年の重賞初戦だった。
その後、ラスールは仕切り直しの1勝クラスを単勝1.5倍に応えてあっさり突破。陣営としてもグランアレグリアが勝った桜花賞(G1)には間に合わなかったものの、今回のフローラSで切符を掴み、オークスでこそ脚光を浴びるつもりだったはずだ。
だが結果は見ての通り、無残なものとなった。
「残念な結果に終わってしまいました。ラスールについてはルメール騎手だけでなく、元JRA騎手の安藤勝己さんも高く評価していました。今年1月にラスールがシンザン記念で敗れた当日に、中山ではフェアリーS(G3)が行われたのですが『ラスールが出ていれば勝っていた』と、あえて名前を挙げたほどです。
2月に解散した藤沢和雄厩舎の所属馬だったので、順当なら新人の蛯名正義厩舎にそのまま転厩する見込みでしたが、ダンシングプリンスなどを手掛ける宮田厩舎に入った経緯からも、陣営の期待は特別なものがあるはずです。この敗戦で春のクラシックは絶望的になりましたが、秋には大きな舞台で見たい馬です」(別の記者)
「道中で我慢した分、最後は伸びてくれましたが、坂を登ったところで馬が疲れてしまいました。距離が長いかも」
レース後、そう肩を落としたルメール騎手。これで昨年12月から続くJRAの重賞連敗は26になった。果たして、5年連続リーディング騎手に光が見えるのはいつなのか。JRA移籍後最大といえる苦難の日々が続いている。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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