JRA武豊「ハナ差」で逃がしたダービー3連覇! スペシャルウィーク、アドマイヤベガからの痛恨敗戦…「生まれ変わった」福永祐一がジオグリフと挑む
1年で競馬が最も盛り上がりを見せるダービーウィーク。ホースマンの夢ともいわれるこの競馬の祭典は、これまでの数々のドラマを生んできた。
「ダービー馬のオーナーになることは一国の宰相になることより難しい」という話も、囁かれているほどだ。それだけに、ダービーを勝つことは競馬に携わる人間にとって最高の栄誉といえるもの。
かつて、柴田政人騎手は「ダービーを勝てたら騎手をやめてもいいくらい」と憧れ、1993年にウイニングチケットで悲願の勝利を挙げた際、「世界中のホースマンに、第60回日本ダービーを勝った柴田政人ですと伝えたい」と話したことはあまりにも有名だ。
しかし、誰もが憧れるダービージョッキーの称号を日本競馬史上最多となる、5度も手にしているのが武豊騎手である。
勿論、競馬界のレジェンドも初勝利までには苦労した。デビュー早々にブレイクした若き天才は、飛ぶ鳥を落とす勢いで数々のG1レースを勝利したものの、ダービーに関してはなかなか勝つことが出来なかった。そもそも並の騎手なら当たり前の話でも、武豊という条件が付いた途端に不思議がられること自体が、彼の天才たる所以だろう。
1996年はダンスインザダークで初めて1番人気馬と挑んだにもかかわらず、藤田伸二騎手とフサイチコンコルドの強襲に遭ってクビ差2着に惜敗。後輩騎手に先に勝たれるという屈辱も味わったものの、リベンジの機会はすぐに訪れた。
2年後の1998年にコンビを組んだスペシャルウィークでは、これまでの鬱憤を晴らすかのような5馬身差の大楽勝。翌99年には、アドマイヤベガで渡辺薫彦騎手のナリタトップロードや和田竜二騎手のテイエムオペラオーをゴール前で測ったように差し切る技ありの騎乗で連覇を達成し、若手騎手と格の違いを見せつけた。
武豊「ハナ差」で逃がしたダービー3連覇の偉業
あれだけ勝てなかったダービーをあっさり連覇した天才が、2000年に前人未到の3連覇を目指したパートナーは皐月賞馬エアシャカールだった。
皐月賞(G1)と同じく後方から進め、直線の長い東京を意識して仕掛けを待つ冷静さも見せた。残り200m過ぎに先頭に立つ姿を見て、武豊の勝利を誰もが予感し始めた瞬間、外から猛然と襲い掛かったのが、河内洋騎手とアグネスフライトのコンビだ。ゴールまで2頭の叩き合いが続いた激闘は、ハナ差でアグネスフライトが勝利。3連覇の野望を寸前で打ち砕いたのは、兄弟子の意地だったのかもしれない。
そして、武豊ですら成し得なかったこの偉業に今年挑むのは、後輩の福永祐一騎手とジオグリフのコンビである。
福永騎手のダービー初騎乗は、武豊騎手とスペシャルウィークが優勝した98年。陣営も想定してなかった逃げでキングヘイローは14着に沈んだ。天才と呼ばれた父・洋一氏の2世というプレッシャーもあったのだろう。その後も才能の一端は垣間見せながらも、大舞台での勝負弱さはなかなか消えなかった。
転機となったのは、ワグネリアンで悲願のダービー初制覇を遂げた2018年だ。この勝利をきっかけに、それまでの福永騎手からは考えられなかったような勝負強さが目立つようになった。2020年には無敗で三冠を制したコントレイルとの出会いもあり、昨年はシャフリヤールで連覇にも成功した。
言葉は悪いが、一昔の前の福永騎手からは考えられないような別人ぶりである。
もはや別人のように生まれ変わった福永騎手だが、競馬の神様はまたしてもドラマを用意してくれた。かつて武豊騎手の3連覇を阻止した兄弟子の河内騎手と同じく、ライバルとして兄のような存在でもある武豊騎手とドウデュースのコンビが立ちはだかる。
どのような結末が待っているのかはわからないが、今年のダービーもまた、我々に新たな感動を与えてくれるに違いない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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