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ぼくらはあの頃、アツかった(15) 黒猫が運んできてくれた「北斗万枚初達成」の甘い記憶。

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 忘れもしない1月3日だ。フラフラの状態で朝からドロンジョに突撃した筆者は、そこで鼻水がとめどなく流れ出すほどに負けた。なんであんなに負けたのか自分でも分からない。きっと冷静ではなかったのだ。それほどにWの激甘期間が筆者に与えた幻想は麻薬的であったのである。有り金が尽きたので、途中でATMに走った。

 工場街にあったW。最寄りのATMまでそれなりに距離がある。ハンドルを握りしめてアクセルを踏み込んだ。

 九州の片田舎。お正月。一年で一番渋滞する時期だ。都会とは真逆である。普段なら車で5分ほどの道のりに30分近くかかった。メタルを聞きながら前の車のブレーキランプを眺めていると、なんだか冷静になった。あのドロンジョはもう出ない。激甘期間は終わったのだ。Wはもうエデンでもユートピアでもアルカディアでもエルドラドでも桃源郷でもない。ただの田舎のホールである。

 何のためにATMに来たのか分からなくなった。なので、筆者はとりあえずパンを買った。ソーセージが乗った惣菜パンである。

 駐車場でもしゃもしゃと食べた。終わってしまったW伝説に黙祷を捧げるつもりで。鎮痛な気分だった。駐車場の脇。筆者の右手には茶色く変色したツツジの植え込みがあり、そこからニャーという声が聞こえた。

 見ると、薄汚い黒猫がのっそりと姿を表したところだった。野良である。筆者の手元の惣菜パンを物欲しそうに眺めながら、足元に擦り寄ってくる。筆者は無心だった。なんとなく、手元のソーセージをほんの少し、ちぎって投げる。ダッシュで駆け寄りもしゃもしゃと食べる猫。手元の袋で玉ねぎが入ってないのを確認して、先程より大きめにちぎって投げた。ダッシュで駆け寄る猫。またちぎる。駆け寄る。やがてすっかりソーセージがなくなった。

 駐車場の、コンクリート製の輪止に腰掛け、過去惣菜パンだったパンを食べる。

 南中した太陽に照らされた猫。ビロードのような黒い毛が光の粉を纏ったように輝いていた。香箱座りで筆者の足元に収まる。目を細め。寝ているのか起きているのか分からない、満ち足りた。幸せな顔だった。それを見ていると、やさぐれていた筆者の心もまた、撫でられるような気持ちになった。

 しばらくそうして、猫と一緒にひなたぼっこした。

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