JRAスプリンターズS(G1)「写真判定12分」着差わずか1cmの死闘! 譲れない戦いを制し、史上初の春秋スプリント王が誕生した96年
4日に開催されるスプリンターズS(G1)。90年にG1に昇格して以降、数多の名勝負が繰り広げられてきた。中でも、ファンの間で名勝負と語り継がれてきたのが1996年のスプリンターズSだ。
この年、短距離馬にとってひとつのターニングポイントとなった。JRAの短距離競走体系が整備され、従来夏の中距離重賞として風物詩となっていた高松宮杯(現・高松宮記念)が施行時期を春へ移し、スプリントG1に昇格して生まれ変わっている。
この短距離G1に生まれ変わった最初のレースを制したのがフラワーパークだ。
3冠馬ナリタブライアンが短距離G1に参戦したことの方が記憶に残り、勝ち馬の影が薄いのだが、フラワーパークはG1・高松宮杯の勝者として春のスプリント王となり、秋のスプリンターズSに春秋スプリント王の座をかけて参戦する。
この年のスプリンターズSはメンバーが揃った。前年の覇者で連覇を狙うヒシアケボノ、前年の2着、高松宮杯でもフラワーパークの2着に入り、G1初制覇をかけたビコーベガサス、翌年の高松宮杯を制するシンコウキングが参戦。
そして、マイルCS(G1)を人気薄で逃げて3着、さらに前走のCBC賞(当時G2)でフラワーパークを逃げ切りで破ったエイシンワシントンも参戦していた。人気はフラワーパークが1番人気で、以下ビコーベガサス、エイシンワシントンという順であった。
ゲートが開くと、ヒシアケボノが出負けして後退。一方、逃げて主導権を握ろうとエイシンワシントンが抜群のスタートを切って先手を確保すると、その後ろにフラワーパークがマークする形で外から2番手、ビコーペガサスは内の5番手あたりから追走する。
エイシンワシントンが1馬身程度のリードを保ったまま3コーナーに入ると、中団でアクシデントが起こる。内を追走していたニホンピロスタディに故障発生。真後ろにいたビコーベガサスは的場均騎手が必死に回避するも、あおりを受けて後方へ下がり、レースから脱落してしまう。
そのまま4コーナーから直線へ。前半33.5秒で飛ばしたエイシンワシントンの脚色は衰えず半馬身差をつけて先頭のまま。フラワーパークはわずかずつ差を縮めていくが、まだ届かない。残り1ハロン、熊沢重文騎手は右ムチを炸裂させてエイシンワシントンを追う。そこへ、1完歩ごとに差を縮めていくフラワーパーク。
両者一步も譲らない先に並びかけたところがゴールだった。頭の上げ下げという勝負で、ファンもどちらが勝ったのかまったくわからない。そして、長い長い写真判定。12分に及んだ結果はフラワーパークに軍配が上がる。
その着差、わずか1cmという死闘であった。
3着に入ったシンコウキングとの着差は5馬身。まさに死力を尽くしたマッチレースとなり、フラワーパークは史上初の春秋統一スプリント王の座に輝いたのだった。
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