JRA 武豊が「競馬」にもたらした革命は、善か悪か。大坂なおみ会見拒否にM.デムーロ「気持ちはすごくわかる」、岩田康誠「何も話さへん」浜中俊「もういいでしょう」は現代スポーツの犠牲者?
「騎手の方がこれだけ丁寧にマスコミ対応をするようになったのは、間違いなく武豊騎手の功績ですね。武豊騎手が競馬の第一人者としてこれだけ有名になったのは、その成績も然ることながら、芸能人顔負けのトークと取材対応能力があったからこそ。
福永祐一騎手や池添謙一騎手など、そんな武豊騎手に憧れて騎手を目指したジョッキーも多いですし、彼らが『マスコミに丁寧に対応するのは騎手として当然』という、今の競馬の風潮を作ったと思います。
武豊騎手がデビューする以前の競馬界は、マスコミに対してもっと殺伐としていました。コメント1つ拾うのも一苦労という話も聞いたことがあります。単なるギャンブルだった競馬に、スポーツ性やエンターテイメント性をもたらしたのは、武豊騎手やそこに続いた騎手たち競馬関係者の功績だと思いますね」(別の記者)
良い時も悪い時も、長く競馬関係者が丁寧なメディア対応を重ねた結果が、今の競馬人気を生み、支え続けていることは紛れもない事実だ。ただ、同時に競馬に限らず、今のメディア取材は明らかに過剰気味で、コロナ禍で取材制限が敷かれた際は「楽になった」という騎手や調教師の声もチラホラと聞こえてきた。
しかし、その一方でデムーロ騎手が「競馬はまた、特別な世界」と話した通り、競馬は競馬関係者の“声”を求めるファンの馬券購入で成り立っている。
またナイキやタグ・ホイヤー(ルイ・ヴィトン)、資生堂など数多くのスポンサーを抱える大坂選手もアスリートとして、今の時代は競技の実績だけでなく、メディアやファンの対応で生まれる人気・イメージが必要不可欠であることも自覚しているはずだ。
「どっちが悪いとか、そういう話ではないんですよね」というデムーロ騎手の言葉が示す通り、これは近代スポーツの成り立ちにも関わる非常に根深い問題である。
すぐに何かが劇的に改善されることは想像しにくいが、少しでもアスリートが本来の力を発揮できる環境になることを願ってやまないのは、ファンもメディアも同じのはずだ。
(文=浅井宗次郎)
<著者プロフィール>
オペックホースが日本ダービーを勝った1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」。
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