
JRA アサマノイタズラ「激走」に元主戦の「金言」!? 自身は痛恨の「降板」でも優先したものとは

20日、中山競馬場でセントライト記念(G2)が行われ、田辺裕信騎手が騎乗の9番人気アサマノイタズラ(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)が優勝。待望の初重賞制覇を成し遂げるとともに、3連単の払戻が30万馬券という波乱の立役者となった。
14頭立ての芝2200m戦を1000m通過60秒5と緩みないペースで進んだ菊花賞トライアル。最後の直線入口で4頭が横一線に並ぶほど各馬が早めに仕掛けるなか、アサマノイタズラは直線半ばまで後方で脚を溜めた。残り200m付近で外へ持ち出すと、矢のような伸び。先に抜け出していたソーヴァリアントをゴール寸前で差し切った。
「中山競馬場が得意な田辺騎手らしい決め打ちが見事にハマりましたね。
田辺騎手曰く『菊花賞へ向けてどう権利を取ろうかと考えていた』とのことで、あくまで陣営は『3着以内にさえ入れば』と思って田辺騎手を起用したと思います。期待した以上の結果が出たのではないでしょうか」(競馬記者)
アサマノイタズラには、デビューから前走までの全レースで嶋田純次騎手が騎乗していた。特に4走前のスプリングS(G2)は7番人気ながら、早めに仕掛ける競馬が功を奏して2着。自身初の重賞勝ちを意識させた馬だけに、嶋田騎手にとって「痛恨」の乗り替わりだったはずだ。
「嶋田騎手はアサマノイタズラのレースを終えるたびに乗り替わりを覚悟していたみたいです。とはいえ、これまでは乗り替わりにならなかったですから。やはり本人は辛いと思います。しかし、ここで不貞腐れないのが嶋田騎手の凄いところだと思いますよ」(同記者)
田辺騎手はレース後にインタビューにて「嶋田騎手ともいろいろと話をして情報は集めていました」と、話している。自分のお手馬の情報を仮にも“奪われた相手に伝えるのは、複雑な心境だったはずだ。
「嶋田騎手はアサマノイタズラを管理する手塚厩舎の所属騎手です。
平松さとし氏のインタビューで『(手塚師へ)少しでも恩返しをしたい気持ちでいっぱいです』とも答えていました。師匠のためなら出来ることは何でもする思いだったのではないでしょうか。
田辺騎手がわざわざ勝利後に嶋田騎手の名前を出しているのですから、嶋田騎手のアドバイスが今回の勝利に繋がったことは間違いないはずです」(同記者)
結果的に自分が降板することになっても、優先すべきは馬と厩舎の将来と考えるのが所属騎手としての誠意。それに9月20日は手塚師の誕生日でもある。本来なら自身の手綱で恩返しをしたかっただろうが、形は違えども恩師への「誕生日プレゼント」となったのではないだろうか。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
PICK UP
Ranking
5:30更新「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
武豊が社台に干された「曰く付き」阪神JF……”引退説”が囁かれた大スランプの原因「ダンスファンタジア事件」とは
武豊やC.ルメールでさえ「NGリスト」の個性派オーナーが存在感…お気に入りはG1前に「無念の降板」告げた若手騎手、過去に複数の関係者と行き違いも?
- JRAマイネル軍団総帥・岡田繁幸さん逝く。武豊「僕の原点、この馬と一緒に全国区になった」絶体絶命だった天才を世に放った偉大な決断と信念【特別寄稿】
- JRA池添謙一「2度結婚」「DV不倫」よりも紆余曲折の騎手人生。オルフェーヴル三冠→外国人で凱旋門賞、勝負強さは当代随一だが……
- 「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
- 浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
- 皐月賞(G1)クロワデュノール「1強」に待った!? 「強さが証明された」川田将雅も絶賛した3戦3勝馬
- 皐月賞馬、ダービー馬不在の菊花賞を勝ったのは?
- JRA「パワハラ訴訟」渦中もノーザンファームからの信頼は急上昇!? 藤沢和雄、堀宣行ら関東の名伯楽に迫る勢い、快進撃続く木村哲也調教師の「生き残り戦略」とは
関連記事
福永祐一「壁騎乗」でタイトルホルダー惨敗……元JRA安藤勝己氏「タメて相手を待つような競馬が合ってない」惨敗にトドメを刺したのはもう一人の刺客
JRA超良血馬の「大コケ」にガッカリ!? 父母に「エアグルーヴ×ベガ」、C.ルメール確保も待っているのは兄と同じいばらの道か
JRA「デアリングタクトの屈辱」から半年、またも許した大波乱……アンカツ「してやったりの展開」松若風馬「先行したいと思っていた」は当然の話?
C.ルメールや池添謙一でも到達できない領域……福永祐一が実現する「理想像」に各方面から絶賛の嵐!
JRA C.ルメール「謎」の後方待機に疑問の声!? 騎手が明暗分けたローズS(G2)、中京の鬼・福永祐一が「お手本騎乗」で有力馬の敗因バッサリ?