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エルコンドルパサー馬主「腰を据えて挑戦しないといけない」 “もう1頭の勝ち馬”から学ぶ凱旋門賞優勝への「近道」とそれを阻む国家レベルの「問題」

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 3日、パリロンシャン競馬場で凱旋門賞(G1)が行われ、重馬場の条件のなかドイツ馬トルカータータッソが優勝した。不良馬場で行われた昨年の2着馬インスウィープは独ダービー(G1)であることから、ドイツ好走馬は道悪が得意なことを改めて証明した。

 これに対し、日本からはクロノジェネシス(牝5歳、栗東・斉藤崇史厩舎)とディープボンド(牡4歳、栗東・大久保龍志厩舎)の2頭が出走したものの、クロノジェネシスは7着、ディープボンドにいたってはブービーから30馬身も離された最下位14着に終わった。

 2頭は日本の道悪馬場で快勝した経験がある馬だが、それでも太刀打ちできない。それが、欧州の道悪馬場と言えるだろう。改めて日本競馬と欧州競馬の違いが浮き彫りとなった。そうなると、どうすれば日本馬は凱旋門賞を勝てるのだろうか。

 そこで浮上してくるのが欧州に「長期滞在」するプランだ。このプランで凱旋門賞制覇へ挑んだのが1999年のエルコンドルパサーだ。

 99年4月に渡仏したエルコンドルパサーは、遠征初戦となった5月のイスパーン賞(G1)こそは2着に敗れたが、続くサンクルー大賞(G1)では並み居る欧州強豪馬を差し置いて優勝。その後フォワ賞(G2)勝利を経て、挑んだ凱旋門賞ではモンジューとの競り合いに敗れたが、3着馬に6馬身差をつける2着と大健闘。現地のファンやメディアから「もう1頭の勝ち馬」と、勝利に等しい称賛を受けた。

 ここで問題となってくるのが、果たして日本馬が欧州に長期滞在したところで欧州の馬場に適性を示すのかどうかという点である。それを裏付けるのが、エルコンドルパサーの渡仏後の調教についてのエピソードだ。

 フランスでの調教を開始した当初のエルコンドルパサーは日本より遥かに丈が長い芝に苦労し、軽い調教でも疲れた様子を見せていた。特に降雨によって馬場が緩くなったときは、フォームが崩れた状態で走っていたという。

 ところが、欧州の馬場で調教を重ねるうちにエルコンドルパサーの走法は変化していった。また、走法が変化したことで筋肉の付き方も変わり、胴長で細身の馬体となっていった。

 このことから、欧州に長期滞在し向こうの馬場に合った走法に変化させることが、日本馬の凱旋門賞勝利への近道と言える。

 ただ、このプランには人的・金銭的な問題が関わってくる。エルコンドルパサーの場合、厩舎スタッフ以外にも欧州競馬に通じた専門家など多数の人間の協力の元、成り立っている。そして滞在に伴う金銭の負担は基本的に馬主持ちで、その金額は巨額である。

 しかし、本番の10日前に出国して挑んだクロノジェネシスが惨敗しているように、一朝一夕で勝てるレースではないのが凱旋門賞だ。エルコンドルパサー馬主の渡邊隆氏が話す「凱旋門賞はポンといって勝てるようなレースではありません。勝とうと思ったら欧州仕様の馬にする必要があるので、ある程度、腰を据えて挑戦しないといけない」といった覚悟がないと、まず勝負にならないのが現実ではないだろうか。

 このことについては、フランスの競馬関係者も口を揃えて証言している。フランスの競馬専門紙『パリ・チュルフ』は、日本馬3頭が出走した14年に「現地での前哨戦を使わなかった」と、3頭の敗因を分析。また、この年の勝利騎手であるT.ジャルネ騎手は「日本馬が凱旋門賞を勝つにはどうすればいい?」という質問に「ロンシャンは特殊な競馬場。やはりそこを走った経験は非常に大事」と、回答している。

 以上の点から、日本馬が凱旋門賞で結果を出すためには欧州への「長期滞在」が近道に思える。ただ、「長期滞在」には人・金銭で解決出来ない障壁がある。それが通称「60日ルール」だ。

 これは出国してから帰国までの日数が60日を超えると、帰国後の日本での出走に大きな障害が発生することを指している。ここで言う大きな障害とは、着地検査の日数が大幅に長くなるのだ。

 着地検査は輸入検疫解放後に行う検査のことで、臨床検査および各種感染症検査が家畜防疫員により行われる。着地検査期間中は、他の馬と隔離されることになる。この期間は当然レースへ出走することも出来ない上、併せ馬などの調教も困難である。

 世界基準では90日となっているが、日本では30日短い。この差に競馬関係者は苦慮しており、矢作芳人調教師はサンケイスポーツで連載中のコラム『信は力なり』で「この30日の差が大きく、現地での前哨戦出走が難しくなっている。過去多くの日本馬もこの壁に苦しめられてきた」と、胸の内を明かしている。

 凱旋門賞が終わった後の日本では、ジャパンC(G1)や有馬記念(G1)といった大レースが控えている。しかし現行のルールでは仮に60日以上の長期滞在で凱旋門賞に挑んだ場合、年末の大レースへの出走が出来なくなる。そのため、国内の競馬関係者は余裕があれば長期滞在で凱旋門賞へ挑みたいにもかかわらず、挑めていないのが現状と言えるだろう。

 では、「60日ルール」を変えればいいのだが、それも簡単な話ではない。「60日ルール」は、家畜伝染病予防法という法律を元に制定されている。つまり、家畜伝染病予防法という法律を改正しない限り「60日ルール」改正も難しいのではないだろうか。

 凱旋門賞は100回の歴史で3歳馬が60回制しているように、斤量面で恩恵がある3歳馬が有利なレースである。それゆえ、日本馬が凱旋門賞を獲るならば「長期滞在」かつ「3歳馬」で挑むのが現実的と思われる。

 ただ、3歳馬は若く怪我等がなければ引退する年齢ではないため、凱旋門賞出走後はジャパンCや有馬記念などへ続戦するのが自然と言える。しかし、現状の日本では検疫のルール上不可能であるため、関係者の足取りが重い。日本馬が凱旋門賞を勝利するためには、競馬関係者の努力はもちろんのこと、国家レベルでの改革が必要なのではないだろうか。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

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