JRA「ダービー馬候補」コマンドラインはコントレイル2世となれるか!? G1馬の登竜門サウジアラビアRC(G3)、優勝馬が抱えていた共通の「不安」とは
9日、東京競馬場ではサウジアラビアロイヤルC(G3)が開催される。東京の芝1600mを舞台に争われるこの2歳重賞は、出世レースとしても知られる登竜門的な存在。今年も将来性豊かな素質馬が出走を予定しており、注目の一戦となりそうだ。
前身であるいちょうS時代には、エアグルーヴ、メジロドーベル、イスラボニータなどの名馬を輩出。2015年から現在のサウジアラビアRCへと改称して格付けもG3に替わった。
改称後も名馬の登竜門的な性格は継続しており、近年も17年ダノンプレミアム、18年グランアレグリア、19年サリオスが3年連続でG1を勝利した。昨年の勝ち馬ステラヴェローチェは、神戸新聞杯(G2)を快勝したばかり。主役を務める菊花賞(G1)での戴冠に期待も高まる。
そして、今年最も注目を集めるのがC.ルメール騎手とのコンビが決まっているコマンドライン(牡2、美浦・国枝栄厩舎)。アーモンドアイでG1を席巻した「ルメール×国枝厩舎」のコンビが送り込む実力馬だけに、求められるのは「結果」だろう。
コマンドラインは、6月に東京のマイル戦で2着に3馬身の差をつけてデビュー勝ち。単勝オッズ1.1倍の断然人気に応えて圧勝した。クラシックを目指すなら距離延長も視野に入れていいようにも感じられるが、来年の日本ダービー(G1)を狙えるのではないかという期待馬が、出世レースとはいえマイル戦を選択してきたのは少々気掛かりだ。
「2000mでも問題ないでしょう。レース後も全然疲れていませんし、今後へ向けていい勉強ができました」とは、新馬勝ち後のルメール騎手のコメント。
実際にレースで騎乗した騎手の言葉だけに、問題ないようにも思える。
「クラシック狙いだと東京スポーツ杯2歳S(G2)でしょうけど、こちらは11月半ばでまだ先ですからね。サウジアラビアRCから復帰したということは、よほど順調に調整が進んでいるということでしょう。
結果次第にはなりそうですが、順当に勝ち上がるようだと、東スポ杯からホープフルS(G1)に進んだコントレイルのイメージに近い使い方になりそうですね」(競馬記者)
ただ、前述した近年のサウジアラビアRC勝ち馬の顔触れから分かるように、これらは現時点でいずれもG1勝ちの最長距離はマイルまで。共通しているのは、どの馬も距離延長に不安を抱えていたということである。
加えて無視できないのは、コマンドラインの兄姉2頭の存在だ。2つ上の兄アルジャンナは、2000mでデビュー勝ちするも、1800mの重賞を3戦して全敗。ダービーで最下位に敗れ、古馬となってもマイル戦で復帰している。1つ上の姉トレデマンドは、芝のマイルですら勝てないまま、ダートに転戦した1800mでようやく初勝利を挙げた。
3頭揃ってディープインパクト産駒ということもあり、コマンドラインにとっても無関係とは言い切れない事情もある。
「昨年、無敗で三冠馬となったコントレイルにしても、上はダートの短距離馬でしたからね。状況としてはコマンドラインも同じような背景を持っているといえます。
ただ、コントレイルが本質的に中距離ベストといわれているように、コマンドラインもステイヤーという感じではなさそうです。こればかりは走ってみないと分かりません」(同)
前向きな材料があるとすれば、このように血統が同じでもスケールが異なるケースは、決して珍しくはないことだろう。1頭のみ超大物が出て他は不思議なほど走らないなんてことは、競馬界では日常茶飯事。コマンドラインも同様に、例外となる可能性は十分に考えられる。
このまま順調にコントレイル2世の道を進むことが出来るのか、それとも距離の壁にぶつかってしまうのか、まずは2戦目のマイル重賞を楽勝して次走に万全の態勢で臨みたいところだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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