JRA コマンドラインに「大差勝ち」の好時計も藤沢和雄師が素直に喜べないワケ、C.ルメール「グランアレグリア2世」ラスールに最大級の評価!
10日、東京競馬場で行われた4Rの2歳新馬(芝1600m)は、C.ルメール騎手の1番人気ラスール(牝2、美浦・藤沢和雄厩舎)が優勝。2着馬に3馬身半の差をつけてデビュー勝ちを飾った。
「新しいグランアレグリアだね。楽に流れに乗れたし、最後いい脚使った。瞬発力もある。乗りやすいしまったく問題なかった」とは、レース後のルメール騎手のコメント。
まだ新馬戦を勝ったばかりの馬に、G1・5勝の名牝が引き合いに出されるのは異例のこと。それほどラスールの圧勝は、名手を唸らせる内容だった。
放馬により1頭が除外となった17頭立てのレース。好発を決めた最内のアイキャンドウイッが、先手を主張してマイペースに持ち込む。対するラスールはしりもちをつくような格好の発馬となったが、そこはルメール騎手がうまくリカバーする。内からスルスルとポジションを上げ、最後の直線では好位3番手まで押し上げていく。
先に仕掛けたアイキャンドウイッがセーフティリードに持ち込みを図ったところを、楽な手応えで並びかけるとあっさりパス。ゴール前でも余裕十分だった。
「もしかしたらとんでもない超大物が登場したかもしれません。数多くの名馬の背中を知る名手の評価だけに、期待したくなります。勝ち時計の1分35秒3も優秀ですし、ゴール前でも手応えに余裕があったように、まだ全力で走っていません。
来年の牝馬クラシックは、ラスールとのコンビが早くも確定しそうな雰囲気ですね。ルメール騎手の評価が正しければ、グランアレグリアに続く桜花賞優勝もありそうです」(競馬記者)
前日に行われたサウジアラビアRC(G3)は、前半3ハロン37秒7という超スローペースだったとはいえ、コマンドラインの勝ち時計は1分36秒4と平凡。これに対し、翌日に同じく東京の芝1600mを走ったラスールの勝ち時計は1分35秒3と大きく上回っている。
タイム差にして1.1秒差なのだから、時計だけの単純比較であれば、「大差勝ち」にも等しい勝ち時計だ。2歳馬最強という声も出ている相手に見劣らない走りを披露したなら、グランアレグリア級というルメール騎手の言葉にも説得力がある。
ラスールの血統は、父が期待の新種牡馬キタサンブラックで母はサマーハ。母の代表産駒には、勝利を期待されていた春の天皇賞(G1)を目前に、骨折によって安楽死した悲運の名馬シャケトラがいる。血統的にも大物感は十分といえよう。
その一方で、同馬を管理する藤沢和師としては、超大物候補の登場でも心中は複雑に違いない。
なぜなら一時代を築いた名伯楽も、来年2月の定年引退を避けられないからだ。厩舎の看板馬であるグランアレグリアの後継者候補が登場しながらも、志半ばで他の調教師に託すしかないことは、藤沢師にとっても出来ることなら避けたかった現実だろう。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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