JRA京成杯・日経新春杯・愛知杯へ必見! 2022年・開幕で分かれた“絶好調男”と“絶不調男“。「関東横山カルテット」と「関西C.デムーロ旋風」の影響とは?
2022年のJRAが幕を開け、お馴染みの金杯と3日間開催が終了した。1月の中山開催も残り2週となったわけだが、昨年であれば川田将雅騎手の26戦連続未勝利(1番人気で10連敗を含む)という不本意な結果も記憶に新しいだろう。
今年も当然のことながら絶好調騎手と絶不調騎手が存在しており、ファンの馬券作戦に大きく影響している。
今回はそんな絶好調騎手と絶不調騎手をまとめたので、紹介しよう。
【関東・絶好調騎手】
横山武史
関東で“横山”の姓を持つ4人の騎手、つまり「関東横山カルテット」が絶好調。その大将格は、昨年のJRA年度代表馬に輝いたエフフォーリアの主戦騎手であり、年間100勝を達成した横山武史騎手だ。今最も勢いに乗っていると言っても過言ではないが、年明けはさらに勢いを増している。開催4日間で5勝を挙げており、さらに勝率18.5%・連対率33.3%も昨年の13.3%・24.7%を超える好成績。今週は騎乗停止で騎乗できないが、復帰後の爆発は間違いなさそうで、ぜひ覚えておいてほしい。
横山和生
2020年30勝→2021年79勝と大ブレイク。関東だけでなく関西の厩舎からも信頼が厚く、多くの騎乗依頼が届くのが特徴。現在4勝で関東2位、今週は小倉遠征で有力馬を多数集めており、横山武騎手を逆転して暫定1位も視野に入る。
横山典弘
上記2人の父である横山典弘騎手も好調だ。2020年は重賞7勝、63勝と好成績だったが、2021年は重賞未勝利で26勝と大幅ダウン。しかし今年はいきなりシンザン記念(G3)をマテンロウオリオンで勝利するなど2勝。年間50勝ペースは昨年の約2倍。今週は日経新春杯(G2)にクラヴェルで参戦するが、勢いに乗った横山典騎手を馬券から外すのは愚策、当然注意が必要だろう。
横山琉人
関東横山カルテット4人目の伏兵。横山典騎手の家族と勘違いするファンもいそうだが、父はかつて中山大障害(G1)などを勝利した横山義行騎手。つまり横山典騎手たちと血縁関係はない。しかし、その勢いは本物だ。昨年デビューし9勝にとどまったが、今年はすでに3勝。なお馬券に絡んだのは3歳の平場戦だけで、さらに勝利したのは1200m戦のみ。しかも逃げ先行馬に騎乗した時に結果を出しているので、減量の恩恵をうまく活かしているようだ。狙いはずばり「3歳戦・平場戦・逃げ先行馬に騎乗」この3つが揃ったレースである。
石川裕紀人
昨年は年間30勝と前年の2倍を勝利し、今年も3勝と好スタート。このままであれば年間70勝を超えるペースだ。特筆すべきは騎乗馬の質。今年15回の騎乗はすべて4番人気以下で、5番人気で1勝、6番人気で2勝なのだから恐れ入る。そして、その3勝はすべて1200m戦なのは覚えておくべき。愛知杯(G3)ではデビュー以来手綱を握り続けているスライリーに騎乗するが、秋華賞(G1)5着の実績からも侮れない存在だ。
【関東・絶不調騎手】
津村明秀
昨年は前年から10勝多い41勝を挙げたが、今年はここまで23回騎乗して2着も無い。1~3番人気に4度騎乗して2度の3着が最高着順というのも厳しい現実だ。若手の飛躍が目立っており、その割を食ったかもしれない。今週は土曜が中京、日曜が小倉と大忙し。特に2019年以来となる小倉遠征を決めたのも危機感の表れといえそう。
藤田菜七子
関東唯一の女性騎手である藤田菜七子騎手も厳しい状況にある。昨年は怪我もあってデビュー2年目と同じ14勝、一昨年の35勝から大幅にダウンした。昨年8月15日の勝利を最後に110連敗中と苦戦続き。今週は1年ぶりの小倉遠征で9レースの騎乗となるが、ハイレベルな関西所属騎手が相手では厳しいレースが続きそうだ。
永野猛蔵
デビュー1年目の昨年は29勝と結果を出したが、この4日間は15度の騎乗で未勝利と結果を出せなかった。それでも今週は土曜の中山で全12レースに騎乗、日曜も7レースに騎乗と関係者の期待は高い。しかしここまで1~3番人気に3度騎乗して未勝利なのは痛く、残念ながら昨年の勢いはない。人気なら思い切って消しもありか。
秋山稔樹
デビュー1年目は17勝、そして2年目の昨年は42勝と大きく飛躍した秋山稔樹騎手も今年はスタートでつまずいている。昨年42勝中5番人気以下の勝利が14勝と多かったが、今年は人気薄馬でもサッパリ。昨年の3日間開催までの4日間は合計23レースの騎乗依頼があったが、今年は12レースのみ。これは昨年1月で3kgだった減量が、今年は1kgに減った影響といえそう。今週は小倉遠征に活路を見い出し、東西の厩舎から8頭の騎乗馬が飛び込んできた。小倉は昨年4勝を挙げているが、今のリズムで結果が出せるか勝負所だ。
【関西・絶好調騎手】
川田将雅
昨年は開幕から26戦連続未勝利だったが、今年はロケットスタートに成功。7勝は東西合わせて1位で、勝率33.3%・連対率42.9%は昨年の28.5%・41.4%を上回る高数値。ただし1番人気で勝率60%・連対率70%を記録する一方、1番人気以外では11戦1勝2着1回のみと低迷。1番人気以外では評価を下げるのが正解だ。愛知杯のデゼル、日経新春杯のヨーホーレイクは危険な人気馬といえるだろう。
M.デムーロ
今年はフェアリーS(G3)をライラックで勝利するなど4勝と好スタート。2018年以来となる年間100勝も計算できる。1番人気から5番人気までまんべんなく勝利し、距離も不問と頼もしい。ライバルのC.ルメール騎手や武豊騎手が不調、そして福永祐一騎手が怪我で不在というのも大きい。日経新春杯のステラヴェローチェは負けられないレースになりそうだ。
坂井瑠星
昨年、過去最高の53勝を記録し、今年も3勝と好スタートを切った。4度の騎乗ながらも1~4番人気ですべて馬券圏内に好走している安定度も光る。愛知杯のマリアエレーナ、日経新春杯のショウナンバルディはともに伏兵的存在だが、坂井瑠星騎手のJRA重賞8勝はすべて4番人気以下。ここも侮れない存在といえそうだ。
藤岡佑介
今年3勝を挙げたが騎乗数は9回なので、勝率は川田騎手と同じ33.3%とハイレベル。しかも勝利はすべてダート戦で、ダートに限定すれば勝率・連対率ともに50%と高数値。しかも1~2番人気の騎乗なら、勝率は100%に達する。ただし今週も騎乗数は6鞍と少なめで、ダートの騎乗馬が1~2番人気になるかは微妙なところ。また京成杯(G3)にヴェールランスで参戦するが、先週のフェアリーSで騎乗したエバーシャドネーがサッパリだったことは気になるところだ。
斎藤新
キャリア4年目の斎藤新騎手も飛躍が見込めそう。今年2勝のうち1勝はレッドガランで勝利した中山金杯(G3)。ただ、今年関西で騎乗したのはすべて4番人気以下。今週以降はC.デムーロ騎手の帰国で質の高い騎乗馬が取り合いになると思われるので、今後の鍵となりそうだ。
【関西・絶不調騎手】
C.ルメール
例年通り、年末年始休暇を取ったルメール騎手だが、2勝は挙げたものの1~3番人気で9回騎乗して1勝2着1回は関係者的には不満だろう。フェアリーSで騎乗したエリカヴィータが大きな不利を受けるなど、ツキがないのも気がかり。愛知杯のマジックキャッスル、京成杯のアライバルはともに実力馬だが、過信は禁物だ。
武豊
存在はレジェンド級だが話題にならない。昨年は75勝を記録したが、今年はまだ1勝で年間25勝ペース。ただし1~3番人気では6度騎乗して5度馬券圏内に好走しており、騎乗馬の質が大きく影響していると思われる。シンプルに上位人気なら抑え、4番人気以下なら消しがセオリーか。愛知杯のルビーカサブランカ、日経新春杯のフライライクバードはボーダーラインといったところ。連軸には推奨できないが、相手候補に一考したい。
浜中俊
昨年42勝の浜中俊騎手は、今年まだ未勝利。騎乗数も9回と少なく、先週まで短期免許で滞在していたC.デムーロ騎手の影響が大きかったと思われる。実際先週までの騎乗馬は半分以上が8番人気以下で1~3番人気はゼロだった。今週は地元九州の小倉で騎乗。得意のコースであり、今週だけで過去4日と同じ9鞍の騎乗馬を確保、騎乗馬の質も上がっている。本人も巻き返しに力が入るだろうが、勝利のリズムを取り戻すには時間がかかるかもしれない。
池添謙一
こちらもC.デムーロ騎手の影響が大きかったと想定される一人。先週まで17回の騎乗があったがすべて4着以下と散々な成績。ただし浜中騎手同様に騎乗馬の質が低く、17頭中16頭が7番人気以下だったのでやむを得ないところもあったか。ただし人気以上の着順も4回のみと少なく、リズムを取り戻すのはもう少し先かも。愛知杯のラルナブリラーレ、日経新春杯のトラストケンシンも苦戦は必至か。
以上、現時点での“絶好調騎手”と“絶不調騎手“をまとめた。
他にも関西勢は団野大成、藤岡康太、泉谷楓真、松若風馬、亀田温心騎手らが低調な成績だったが、これらは先週まで滞在していたC.デムーロ騎手が、36回の騎乗で8勝2着10回(連対率50%)と多くの有力馬を集めた影響が出ている。
トップジョッキーは有力馬をC.デムーロ騎手に奪われ、中堅騎手はトップジョッキーに実力馬を奪われるという、まさに「C.デムーロ旋風」だったのだ。そういった意味では彼が帰国して不在の今週が本当の開幕といえるかもしれない。
いずれにせよ、まだ2022年のJRAは始まったばかり。今後春のクラシックやG1シーズンに向けて、どの騎手が頭角を現すのか注目したい。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。
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