同じ馬による二度の「凶行」でレースは大荒れ、着順変更なしにファンは大激怒、元JRA騎手佐藤哲三氏も「なんだコレ?」
29日の中央競馬は、白富士S(L)を好時計で逃げ切ったジャックドールの快勝などで盛り上がった一方、九州唯一の地方競馬・佐賀競馬では、ファンのみならず元ジョッキーまでもが驚く、前代未聞のハプニングが発生していた。
舞台となったのは、佐賀7Rの雲仙岳賞。11Rがメインの中央競馬と異なり、こちらは7Rが当日のメイン。中央競馬で例えるとオープン特別・リステッド競走の格付けで、地元の好メンバーが揃った一戦だった。
同レースの戦前の見立ては一騎打ち。2番コンカラー(牡6歳、佐賀・中川竜馬厩舎)と3番パイロキネシスト(牡10歳、佐賀・真島元徳厩舎)の2頭が、単勝2.3倍で並んでいた。
これら2頭とも元々JRAで活躍していた実績馬だ。中央在籍時の前者はオープン馬で、後者は3勝クラス馬だった。どちらも佐賀移籍後は安定した成績を残しており、2頭を絡めた馬券の購入が集中していた。
コンカラーのロケットスタートで幕を開けた7頭立ての1800m戦。そのままハナを取り切る構えを見せたコンカラーに、内からパイロキネシストが並びかけた1周目4コーナーで最初のハプニングが起こった。
何とパイロキネシストが、外を併走していたコンカラーの口に噛みつこうとしたのだ。
噛みつき行為に驚いたコンカラーは、コーナーで膨らむロスが発生。そして、後続もその煽りを受けて大きく回ることとなった。
噛みつき事件の後も、レースはもちろん続行。結局、噛みついたパイロキネシストがハナを取り切り、レースの主導権を握った。
予想外のアクシデントがあったものの、その後は下馬評通り、二強によるマッチレースになるかと思われた。だが、少々飛ばしすぎて苦しくなったパイロキネシストを、コンカラーが外から交わそうとした矢先。またも、ハプニングが発生する。
何と再びパイロキネシストが、コンカラーに噛みつきにいったのだ。
これによって加害馬、被害馬どちらもバランスを崩し、その隙に後続が一斉に殺到。リズムを崩した2頭は、あっという間に馬群に飲み込まれ、ブービーと最下位に沈んだ。
1度ならず2度にわたっての噛みつき行為は、さすがに競馬関係者も驚きを隠せなかったことだろう。その1人が当日、佐賀競馬YouTubeチャンネルの公式生放送『【SAGAリベンジャーズ】|よそで溶かした額を佐賀競馬で取り戻せ #21』に出演していた元JRA騎手の佐藤哲三氏だ。
佐賀7Rをライブ観戦していた佐藤氏は、1度目の噛みつきこそは大きく表情を崩すことなく冷静に見ていたが、2度目の噛みつきには「なんだコレ?」と動揺。司会者から「こういったことはあるんですか」の問いに「噛みつきにいくことはあるんだけど、あそこまでいくことは……見たことないかな」と、戸惑っていた。
ついには審議のランプが点灯する事態にまで発展。しかし数分後、対象となった4コーナーの噛みつきについては「着順を変更する事象とは認めない」との審議結果が公表され、着順変更することなく確定となった。
これには、怒りが収まらなかったファンも多数いたようで、当時のライブ配信のチャット欄やレース直後のSNS上は「あれが全て」「どう考えても納得いかない」と、大きく荒れることに。そんなファンの方々を佐藤氏は「馬券買ってる人たちが納得しないのは分かるかな」と、諫めていた。
一度ならず二度までも発生したアクシデントに、元騎手でも苦笑いを浮かべることしかできなかった珍事件。馬券を買っていた方々は気の毒だが、落馬などの大きな事故が無かっただけでも良しとしたい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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