JRA横山典弘「V字復活」に武豊ら関西ジョッキーが悲鳴!? すでに重賞2勝、勝ち星約3倍増で評価急上昇……マンション借りての“ガチ進出”の背景とは
今年に入って横山一家の勢いが止まらない。関東リーディングの横山武史騎手、2位の横山和生騎手、そしてすでに今年重賞2勝の横山典弘騎手。それぞれ関東、ローカル、関西と主戦場を分けていることもあり、各地で結果を出している。これが3人の話し合いによって為されているものであれば、かなりの策士といえよう。
中でも昨年と比較してV字復活を見せたのが、一家の大黒柱である横山典騎手だ。
昨年は1994年以来となるJRA重賞未勝利、騎乗数は2020年の421回から大幅に減少して253回。関東所属騎手で唯一、日本ダービー(G1)を2勝している現役トップジョッキーとは思えないものであった。しかも本人に騎乗意欲があるにも関わらず、馬が集まらないのである。エージェントを利用していないにしても、かつての栄光からは考えられないものであった。
しかし、昨年10月に転機が訪れる。拠点を美浦トレセンから栗東トレセンへ移したのだ。
その結果はまさに大成功といえるだろう。1月だけで騎乗数は54回、年間計算で648回になるのだから、ここ数年でもっとも騎乗数を集めていることになる。
そして、すでに6勝をあげており、年間72勝ペースは昨年の26勝を大幅に上回る。さらに昨年未勝利だった重賞もすでに2勝。特にシンザン記念(G3)で見事な勝利を見せたマテンロウオリオンの騎乗に関しては、管理する昆貢調教師が「ノリちゃんは天才」と最大限に評価しているほどである。
過去にも栗東に滞在したことはあったが、今回の滞在がこれほどまでに好結果を生むとは想像できなかっただろう。当初は2021年の年末まで滞在する予定だったようだが、それを延長しているのだから、まさに水を得た魚という表現がピッタリ。マンションを借りて本格的に滞在するのは本気の表れといえよう。
一方で横山典騎手の栗東滞在で割を食った騎手は少なくない。
そもそもここ数年は吉田隼人騎手、横山和騎手と関東の中堅騎手が栗東に拠点を移し、質の良い騎乗馬を確保して大きく勝利数を伸ばしてきた。ここ2年はコロナ禍もあって短期免許で来日する外国人騎手はほとんどいなかったが、逆に関東から騎手がやってきて騎乗馬を持っていかれるのである。
そこで横山典騎手の栗東滞在で特に影響を受けている騎手、そして今年大きく影響を受けそうな騎手を探ってみた。まず横山典騎手が、どの栗東所属厩舎に多く騎乗しているか見てみよう。
■2022年 横山典弘騎手 騎乗数上位5厩舎
安田翔伍 14回
昆貢 13回
本田優 6回
武英智 5回
松永幹夫 4回
続いてこれらの厩舎に今年騎乗した騎手を見てみる(平地のみ。騎乗数2回以上)。
・安田翔伍厩舎
横山典弘 14回
横山和生 6回
岩田康誠 3回
川田将雅 2回
・昆貢厩舎
横山典弘 13回
※他の騎手はすべて1回以下。
・本田優厩舎
横山典弘 6回
泉谷楓真 7回
松山弘平 5回
藤岡康太 4回
小沢大仁 2回
丸山元気 2回
武豊 2回
酒井学 2回
・武英智厩舎
横山典弘 5回
富田暁 7回
松田大作 6回
松山弘平 3回
古川吉洋 3回
池添謙一 2回
岩田康誠 2回
・松永幹夫厩舎
横山典弘 4回
武豊 2回
岩田望来 2回
横山和生 2回
※短期免許のC.デムーロ騎手は除く
この内容を見てもわかるように、上記の5厩舎は横山典騎手を主戦もしくは準主戦騎手として扱っているのである。
例えば、かつて昆厩舎の主戦騎手でもあった古川吉洋騎手は、もはやその立場を横山典騎手に完全に奪われている。古川吉騎手は昆厩舎に2019年49回・2020年53回・2021年47回騎乗してきたが、今年は1回のみ。横山典騎手の13回とは圧倒的な差がある。
さらに昨年、安田翔伍厩舎で最多の57回騎乗した横山和騎手は、今年6回と父・横山典騎手の半分以下。その立場をまさか父親に奪われるとは思いもしなかったのではなかろうか。
また、ここ2年ほどほとんど騎乗依頼がなかった武英智厩舎や本田優厩舎が騎乗を依頼し、しかも主戦級の扱いをしていることも特筆すべき点だ。この流れは、さらに拡大していく可能性もある。
そして、注目したいのは松永幹夫厩舎だ。
松永幹厩舎の主戦騎手は2013年から2021年まで9年連続で武豊騎手であった。しかし、その図式は崩れ、今年は横山典騎手4回に対し武豊騎手は2回。まだ1か月だけなので騎乗数に大きな開きはないが、実は松永幹厩舎の騎乗成績を見ると、2019~2021年の3年間の平均勝率では、横山典騎手が武豊騎手よりも2倍以上高い。
このまま横山典騎手の快進撃が続けば、さらにトップ厩舎も黙っていないはず。C.ルメール騎手、川田将雅騎手、福永祐一騎手といったトップジョッキーが関東や海外に遠征するとき、乗り替わりの対象として名前が挙がることがあるかもしれない。
そしてそれは、これまでその立場にいた関西の中堅騎手にとって厳しい状況とも言えるのだ。
横山典騎手がこのまま完全に関西を拠点とするのか、それともいずれ美浦に戻るのかは本人次第だ。しかし、ここまで安定した騎乗馬を確保でき、なおかつ結果もついてきている。特別な事情がない限り、美浦に戻る理由は見当たらない。
2022年は、横山典騎手が関西の台風の目となるかもしれない。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。
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