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あの大物個人馬主も言及した「東西格差」の要因

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撮影:Ruriko.I

 暑熱対策の観点から、先週と今週の2週間は札幌と新潟の2場で開催しているJRA。過去2年は東京五輪による特別対応を強いられ、2場開催は3週間に及んだが、今年はその期間が1週短くなった。

 1週減ったとはいえ、この2週間は関東馬にとって修羅場。関西馬の主場である小倉競馬が休止になるため、いわゆる「ブロック制」が解除される結果、新潟に関西馬が大挙、押し寄せることになるのだ。

 実際、先週末は新潟で行われた合計24レースに関西馬が160頭出走した。これでも関東馬の191頭よりは30頭以上少なかったのだが、結果は関西馬が関東馬を圧倒。日曜メインのアイビスSD(G3)こそ関東馬のビリーバーが意地を見せたが、24レース中なんと19レースを関西馬が勝利し、関東馬は2日間で僅か5勝に終わった。

 関西馬が“ワンサイド”勝ちした背景にはブロック制の解除もあるが、ご存じのようにそもそも競馬には「東西格差」という現実がある。

 関東馬のミスターシービーとシンボリルドルフがターフを席巻した1980年代後半までの競馬界は今とは逆の「東高西低」だった。ところが、1985年に栗東トレーニングセンターに坂路が誕生したことを契機に成績は逆転。「西高東低」となってから、早30年以上の月日が経ってしまった。

 これに対し、美浦トレセンにも1993年に坂路コースが導入され、その後も格差解消を図るべく様々な改良が進められてきた。近年はG1レベルでほぼ互角の成績を残してはいるが、全体的に見ると、その差は縮まったとは言い難い。

あの大物個人馬主も言及

 そんななか、「ニシノ・セイウン」の冠名で知られる西山茂行オーナーが『日刊スポーツ』の紙面に連載している「西山茂行の言わせてもらう」のコラム内で、JRAの東西格差に言及。自身のブログなどでもこの話題を取り上げ、Twitterではフォロワーらと白熱した議論を交わした。

 西山オーナーは自身のブログに、「わしは現在、東日本馬主協議会の調査委員長」と自身の立場を明記した上で、「東西格差についていろいろな角度から研究しているが、総じて関西入厩馬のレベルが高い」と断言。そもそも2歳馬が入厩してくる段階で東西に預けられる馬のレベルが違っているという持論を披露した。

 30年以上にも及ぶ「西高東低」の流れがそのまま受け継がれていることが最大の要因だと西山オーナーは分析。「美浦組の仕事が甘いわけでは決してない」、「厩舎関係者の仕事量、技量、熱心さ、全く東西五分である」と東西格差は決して厩舎力の差ではないとみているようだ。

 詳しくは西山オーナーのブログやTwitterをご覧いただきたいが、さらに唯一の違いとして挙げたのが「美浦と栗東の立地」であるという。

 現在開催中の新潟は美浦と栗東のどちらからも輸送時間は変わらない。ところが小倉への輸送は関東馬にとって長く“険しい”。この地理的ハンデに言及した上で、「栗東の調教師のフットワークの軽さと、美浦組の腰の重さは微妙に効いている」のも大きいという。

 西山オーナー曰く、フットワークの軽重の要因となっているのが美浦から都内間と、栗東から京都市間の距離。美浦―東京間の移動には2時間ほどかかるが、これが馬主と調教師のコミュニケーションを難しくしていると語り、自身のジレンマにもなっている様子。

 これを解消すべく、西山オーナーは美浦と銀座・六本木をつなぐ無料バスを提案。「これをJRAが無料で毎日運行したら馬主と調教師&騎手の距離が縮まります」と訴えかけたが……。

 提案の内容はともかく、東日本馬主協議会の調査委員長として西山オーナーの東西格差を是正したいという気持ちが強く伝わってくる。それは間違いない事実である。

 近い将来、西山オーナーが待ち望む「東西五分」の時代はやってくるのだろうか。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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