
強過ぎたゆえの遠回り、伝説の新馬戦組が3強対決に断

競馬ファンなら誰しも一度は耳にしたことがある「伝説の新馬戦」というフレーズ。こういった表現は、同じレースに出走した馬から後のG1馬が複数誕生することで、振り返れば超ハイレベルのメンバーが顔を揃えていた事実が判明した場合に使われる。
最も有名なものでは、菊花賞(G1)当日に開催される2歳新馬だろう。2008年には勝ち馬のアンライバルドが翌年の皐月賞(G1)を制し、3着ブエナビスタはG1・6勝を挙げた名牝に育った。4着スリーロールスも翌年の菊花賞を勝ち、2着リーチザクラウンはG1を勝てなかったものの、クラシックを沸かせた実力の持ち主だった。
これに比べるとさすがにスケールで見劣るものの、昨年の8月末に行われた新潟の2歳新馬も好メンバーが揃っていたことを思い出したい。
このレースを2着に6馬身差で圧勝したイクイノックスは、その後に東京スポーツ杯2歳S(G2)を制して今春の皐月賞、日本ダービーといったG1で連続2着。3着サークルオブライフはアルテミスS(G3)に続き、阪神JF(G1)を制して2歳女王となっている。
伝説の新馬戦組が3強対決に断
1着、3着の馬が既にG1級のポテンシャルを証明しているなら、2頭の間に割り込んだ2着馬も弱いはずがない。それがメンアットワーク(牡3、美浦・斎藤誠厩舎)である。
ただ、早い時期から活躍を見せた前述2頭に対し、こちらは随分と遠回りをすることになった。強敵相手に善戦したこともあって、ファンだけではなく陣営もすぐに勝ち上がれると考えただろう。
しかし、2戦目の未勝利を3番人気で3着に敗れると連戦連敗。気が付けば10連敗という目も当てられない結果は、陣営にとってもさすがに想定外だったのではないか。
迷える実力馬の転機となったのが、芝からダートに矛先を変えた6月の未勝利戦だ。それまで不甲斐ない競馬を続けていたメンアットワークは水を得た魚のように躍動する。最後の直線をほぼ馬なりで迎えると、2着馬に9馬身の差をつける大楽勝。良のダート1600mを1分36秒0の好タイムで勝利してしまったのである。
ちなみにこの日の東京メインは、ユニコーンS(G3)だが、こちらの勝ちタイムは1分35秒2。楽に突き抜けた勝ち方を考えると、ダートの3歳重賞と0秒8差は十分に評価ができるはず。ユニコーンSの勝ち馬ペイシャエスが、次走のジャパンダートダービー(G1)で2着に入っている。同レース4着のハピが人気するレパードS(G3)なら、出番があっても驚けない。
「下馬評ではハピ、タイセイドレフォン、ホウオウルーレットによる3強対決が濃厚となっていますが、それ以外の馬でも十分に通用するメンバー構成だと思います。この時期の3歳馬はまだキャリアも浅く、直接対決をしたことのない馬が多数いますから。
3戦無敗だったハピが前走で敗れたことで、ダートで無敗の馬はメンアットワークとギャラクシーナイトの2頭となっています。初コンビを組んだ田辺裕信騎手とは2戦2勝の好相性。完全に手の内に入れているようですし、面白いと思いますよ」(競馬記者)

また、福永祐一騎手が騎乗を予定している人気のホウオウルーレットは、田辺騎手が前走で手綱を取った馬でもある。田辺騎手がメンアットワークを選んだのか、乗り替わりでの降板だったのかは定かではないが、継続して騎乗するのは心強い。
配当的な妙味も期待できるだけに、思い切って単勝という手もありかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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