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「可哀想なことをした」指揮官も懺悔、武豊も見誤ったジャンダルムの失われた3年

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 凱旋門賞(仏G1)の話題で一色だった先週末だが、国内では秋G1の開幕を告げるスプリンターズS(G1)が開催。絶対的な王者不在の混戦を制したのは、7歳にして初のG1タイトルを手にしたジャンダルム(牡7、栗東・池江泰寿厩舎)だ。

 好騎乗で勝利へと導いた荻野極騎手もパートナーと同じくこれがG1初勝利。遅咲きのスプリンターと若手の有望株の新旧コンビは、今後の短距離界を引っ張るニューヒーローとなれるだろうか。

 レースに騎乗した複数の騎手が「インが有利過ぎる」と振り返ったように、この日の中山は、内前の傾向が非常に目立つ馬場状態。外に進路を取った馬が伸びを欠く中、好位からロスなく抜け出した荻野極騎手の好判断も大きかった。

 とはいえ、かつてはクラシック候補の一角に名前の挙がったジャンダルムが、ようやく本領を発揮できた舞台だったともいえる。名スプリンターの母ビリーヴも制したレースで母仔によるG1優勝を遂げたのは、「適距離」に戻れたことと無関係ではない。

「元々スプリント能力は高いと思っていましたが、デイリー杯2歳Sを勝ってホープフルSも2着となり、これはクラシックを目指さなくてはいけないと考えました。距離が長かったようで、この馬には可哀想なことをしてしまったと思っています」

武豊騎手も見誤ったジャンダルムの失われた3年

 管理する池江師から「可哀想なことをした」という懺悔にも近いコメントが出されたように、ここまでのキャリアの大半を適性外の距離で使われてきた。2017年秋のデビュー当初にコンビを組んでいた武豊騎手さえも、「距離は持つ」と評していたほど、ポテンシャルの高さを評価されていた馬だった。

 事実、芝2000m戦のホープフルS(G1)や弥生賞(G2)を善戦したこともあって、皐月賞(G1)や日本ダービー(G1)に歩を進めたものの、それぞれ9着と17着に惨敗。その後は2年近く芝のマイル戦を使われて1勝を挙げたが、重賞を勝ち負けするには至らなかった。

 そんなジャンダルムに転機が訪れたのは、初の芝1400mとなった信越S(L)に出走した2020年10月だ。このとき出会った相手こそ、後にG1勝利の喜びを分かち合うことになる荻野極騎手である。初騎乗の信越Sでいきなり勝利すると、わずか半年の間で2勝。重賞の阪急杯(G3)でも3着に入る相性の良さを見せた。それまで他の騎手で1勝に留まっていたジャンダルムにとって最高のパートナーを得た瞬間でもあった。

 しかし、本来のスプリンターとしての適性に気付けた一方で、陣営はまたミスを犯してしまう。

 北九州記念(G3)で福永祐一騎手にスイッチすると、続くセントウルS(G2)、スプリンターズSでも浜中俊騎手を起用して連敗。手綱を取った両者からG1でも通用する評価を得られはしたが、思うような結果は残せなかった。

 名コンビの間を引き裂いた陣営が、反省したのかどうかは定かではないが、再び荻野極騎手の手に戻ってきたことは、ジャンダルムにとっても運命の分かれ道だったかもしれない。

 コンビ復活初戦のシルクロードS(G3)こそ、トップハンデタイの斤量も堪えて惨敗したが、2戦目のオーシャンS(G3)で5年ぶりの重賞勝ち。その後の2戦を立て続けに二桁着順に惨敗したこともあってか、今度は乗り替わりもなくコンビ続行。結果的にこれがG1制覇に繋がった。

 母から受け継いだスプリンターの血が開花するまでに失われた3年の月日は、あまりにも遠回りだったことは否めないが、G1タイトルを獲得したことで新たに種牡馬としての道も開けた。

 陣営も思うところは多々あるだろうが、ここまでの道のりはどうであれ、ジャンダルムをG1馬に育ててくれたことに敬意を表したい。

黒井零

黒井零

1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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